私をスキーに連れてって ~ポストクレジットシーン~
レビューも送ったし、書斎と自分の部屋の掃除も終わったので、暇になった。
本でも読もうかと思っていると、祖父から声がかかった。
「キャンプ場が空いてるよ、って電話があったんだ。あした、山登りがてら温泉に行って、キャンプでもしないか?たまには本を置いて、外に出よう。」
「そうだね…。うん、いいよ。どこに登るの?」
「蛾ヶ岳に登ろう。そのあと温泉にいってキャンプだ。」
「無線機、持っていく?」
「そうだね、もしものことがあるし、蛾ヶ岳の山頂で少し電波を出してみよう。幸雄もやるか?」
「せっかく免許持ってるし。たまには電波出すよ。」
祖父は笑顔で書斎を出る。
翌日、車に無線機やらキャンプ道具やらを載せてキャンプ場に向かう。山の上にある湖のほとりのキャンプ場だ。
テントを張ったら登山開始だ。
「熊すずは付けたかい?」
「うん、熊撃退スプレーもすぐ取り出せるところに着けたよ。」
「じゃあ、行こうか。」
幾つかの馬の背を抜けると山頂だ。
山頂からは富士山がよく見える。
祖母が用意してくれたお昼ご飯を食べた後、祖父がアマチュア無線のアンテナを張る。
バックパックから無線機を取り出し、電源をONにする。
北は北海道、南は沖縄、あ、南大東島の局や波照間島の局が聞こえるな。
不確実な無線で、見も知らぬ誰かと話をする。
ひとしきり無線を楽しんだ後、下山をする。
そのあと車で温泉でのんびりした後、キャンプ場に戻る。
私がカレーを作り、祖父が米を炊く。
夜になり、焚火を祖父とかこみ、バブルの話を聞いてみた。
マリコ先生と同じような答えが返ってきた。
祖父の青春時代の、規制とかが緩やかで大らかな時代の、すごく楽しそうな話だった。
ゴールデンウィークが終わり、学校が再開した。
美幸さんも無事にレビューを書き終わり、大関先生に提出していた。
内容は…。うん、僕と同じような内容だな。
大関先生は、前のレビューと同じような、尖った内容を期待していたみたいだ。
「さて、次の映画の話をしたいところだが、再来週から中間試験が始まる。」
大関先生が部活が休みなる事を話し始める。
「次は22日から再開したいと思う。その週の週末に映画を鑑賞したい。自分とご家族の都合を確認しておいてくれ。」
「ないとは思うが、赤点を取った場合は補習になる。その場合は延期になるからな。」
数学、大丈夫かな……。
中間試験が終わった。
数学も心配するほどではなく、クラス平均、学年平均以上を取れた。
……よかった。
美幸さんと視聴覚準備室に向かいながら、試験の話をする。
彼女も平均以上取れたみたいだが、数学はクラストップだったらしい。
その数学脳を少し分けてほしい。
「こんにちはー。」
「こんにちは。」
視聴覚準備室のドアを開けると、大関先生が疲れ切った表情で迎えてくれる。
「…おお、きたか。美幸、コーヒー淹れて。」
よく見ると目の下にクマみたいのがあるね…。
「先生、疲れ切っていますね…。」
「デジタル採点ではあるが、問題を作ることや、採点するのは大変なのだよ。」
美幸さんがコーヒーを淹れてくれる。フーフーした後に私に渡してくれる。
弟さんがいるみたいだから、弟さんに熱い飲み物を渡すときの癖が出てるんだな、きっと。
富田先輩が本から顔をあげ、はなし始める。
「みんな揃ったようなので、次の映画の話を始めたいと思います。」
「週末の土曜日、サマータイムマシン・ブルースを視聴したいと思います。」
なんかすごい題名だな。題名からSFなのかな?
でもブルースって。ブルースの音楽のジャンルだよね。音楽映画なのかな?
でもタイムマシーンだからSFだよね?
美幸さんが手を挙げる。
「その映画、どんな映画?」
「観てからのお楽しみよ。そうねぇ、頭がスカッとする、とても面白い映画でB級コメディとも言われているけど配信もされているしなんて言ってもその伏線の回収が素晴らしくって……。」
「とみたー、その辺にしておけー。」
大関先生からストップがかかる。
「……すみませんでした。とにかく面白い映画よ。とっても楽しめるわよ。」
…何の映画かわからなかったな。
つづく
作中に登場する「マリコ先生」は、林真理子先生の素晴らしいエッセイの数々と、当時のバブルカルチャーへの最大のリスペクトを込めて、本作オリジナルのフィクションキャラクターとして登場させていただいております。実在の人物の思想や名誉を毀損する意図は一切ございません。一読者としての愛を込めたパロディとして、温かい目でお楽しみいただけますと幸いです。




