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私をスキーに連れてって ~狂乱の時代の素晴らしい映画~

翌朝、マリコ先生の話、面白かったなと思いつつ祖父の書斎の本棚を探してみる。

おお、こんなところに『私をスキーに連れってって』のDVDが!

などということもなく、どうするかうんうん唸る。


そういえば、数学の課題が出ていた。

クロームブック?を開いて課題を確認する。

練習問題で解き方を確認しながら課題を解き、ノートに計算式と答えを記入していく。


……数学は苦手なんだよ……。

あとは、これを写真で撮って送ればいいのかな?

よし、いいだろ。送り方間違えてたら先生から連絡が来るだろ。たぶん。


数学の課題、あまり難しくなくてよかった。

ほっとしていると、小さなイマジナリーマリコ先生が現れた。

スーツ姿で決めて、なんかかっこいい。


『さあ、始めましょうか。』

「先生、実は先生との会話が楽しくて、映画をあまり見ていませんでした。富田先輩にDVD借りて観かえしますので、少し待ってもらってもいいですか?」


『何言ってるのよ。私との会話でレビューは作れるわよ。思い出してごらんなさい。』

「…華やかな時代、明日はもっと豊かになる、努力すれば報われる、エネルギー、狂乱、人生を楽しむ、ユーミン?」

『そうね。それを使ってレビューは作れると思うわよ。』


言葉を組み合わせて、文脈を考える。

レポート用紙に文章を書いては修正する。

あ、文字がかすれてきた。インク、切れちゃったな。


インクを入れようと思いインク瓶をみると、マリコ先生がインク瓶を椅子代わりにして、本を読みながら足を組んで座っている。

その姿が、まさにキャリアウーマンとでもいうのだろうか、すごく様になっている。


「先生、すみません。インクが切れちゃって……。」

『ん?ああ、ごめんごめん。』

先生がインク瓶から立って、笑いながら聞いてくる。


『どう?できそう?』

「はい、なんとか。当時、バブルをけん引した人たちの思いを文章にするところで悩んでいますが。何とかなりそうです。」

マリコ先生はニッコリ笑ってエールを送ってくれる。

『そう。頑張ってね。』


万年筆にインクを補充していると、マリコ先生が聞いてきた。

『高校生なのに万年筆なんて使うのね。ふふ、悪い意味じゃないわよ。若いうちから、そういう形から入るのってすごく大切。お洒落じゃない。』

「ありがとうございます。高校の入学祝に、叔父に買ってもらったものなんです。」


『そう、素敵なおじ様ね。なら、とにかく使い倒しなさい。ノートが何冊も真っ黒になるくらい。ペン先があなたの手の癖に合わせてすり減ってきたら、もうそのペンはあなたの体の一部よ。それでいつか、素敵な女の子に手紙でも書きなさいね。』


「そんな機会が来るんでしょうか。」

『がんばりなさいよ~。おとこのこでしょ~。』

マリコ先生はニコニコ笑っている。


骨組みができた。これをつなげていって、文章にして……。

よし!できた!

読み返して、不自然な個所が無いか確認する。


「先生、できました。あの映画の時代背景を書き込んで、僕ら世代へのメッセージを書き込めたと思います。」

『見せてみて?』



とても華やかな時代。

だれもが明日はもっと豊かになる、努力すれば報われると信じていた時代。

自分の人生をどれだけどん欲に楽しむかを言うことに、ものすごい努力とエネルギーを注いでいた狂乱の時代。


日本が一番豊かで、皆が笑顔だった、そんな時代の映画です。


LIMEの既読がついても返信が無い、SNSで悪口を言われた。

そんな悩みも吹き飛ばすほど明るい映画です。

気持ちが落ち込んだ時に見ると、気持ちも晴れやかになる、観る価値のある一本です。



『いいじゃない。時代背景も書かれているし。ただね、少し綺麗にまとまり過ぎよ!』

「どういうことですか?」

『あなた、この映画を観て本当に気持ちが晴れやかになっただけ?』

「え?というと?」


『もっと、こう、メラメラしたものはないの?原田知世ちゃんがめちゃくちゃ可愛い、こんなお姉さんと付き合いたい!とか、4WDの車で雪山を爆走するのカッコよすぎる、僕も免許取ったら絶対やりたい!とか。』


『あなたたち若い世代が、この映画の狂乱を観て、ただ綺麗だな、明るいなって指をくわえて眺めてるだけじゃつまらないわよ。悔しい、羨ましい、僕らもこれくらいハチャメチャにやってやりたい!っていう、万年筆の先から火が出るようなエネルギーを1行、最後に叩き込みなさい。そうすれば、同世代の友達の胸にブスッと刺さる、最高のレビューになるわよ。』


「……万年筆の先から火が出るような文章ですか。ちょっと考えてみます。」

『がんばりなさいよ。熱い手紙や文章が書けない男なんて、もてないんだから。』


う~ん、と唸りながら絞り出す。

……難しいな。熱い思い。……熱情とか激情、執念とかかな。

さらに唸りながら、頭を両手で抱える。

……なんか出てきそう。


「先生、最後に僕の本音を1行、足してみました。」



とても華やかな時代。

だれもが明日はもっと豊かになる、努力すれば報われると信じていた時代。

自分の人生をどれだけどん欲に楽しむかを言うことに、ものすごい努力とエネルギーを注いでいた狂乱の時代。


日本が一番豊かで、皆が笑顔だった、そんな時代の映画です。


LIMEの既読がついても返信が無い、SNSで悪口を言われた。

そんな悩みも吹き飛ばすほど明るい映画です。

気持ちが落ち込んだ時に見ると、気持ちも晴れやかになる、観る価値のある一本です。

私もこんな素敵で、キラキラとした青春を送りたい!



『……あら、いいじゃない!急に生々しくなって、あなたの顔が見える文章になったわ。』

マリコ先生は笑顔で言ってくれた。

「ちょっと恥ずかしいですけど、本当に羨ましいと思ったんです。僕らの日常ってどこか冷めてて、空気を読み合ってばかりだから。」


『その羨ましいって気持ち、すごく大切よ。時代がどうとか言い訳しないで、あなたもその万年筆で、いくらでもキラキラした青春を自分で作り出しなさい。まずは、さっき言った手紙を出す相手を見つけることからね。ふふ。』


『さて、そろそろ私は戻るわ。お疲れ様、またね。』

マリコ先生は颯爽と去っていった。


つづく



作中に登場する「マリコ先生」は、林真理子先生の素晴らしいエッセイの数々と、当時のバブルカルチャーへの最大のリスペクトを込めて、本作オリジナルのフィクションキャラクターとして登場させていただいております。実在の人物の思想や名誉を毀損する意図は一切ございません。一読者としての愛を込めたパロディとして、温かい目でお楽しみいただけますと幸いです。

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