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まあだだよ ~君、あまり変な事を書くのではないよ。よい文章にするのだよ~

遊び、つまり、文章に面白みを加えるということだよね。

……思いつかないな。

それにだ、思いついて文章にしたとしても、ぱっと見て理解できなければ本末転倒だよね。

どうしよう。


まずは、この映画がどういう映画なのか整理して、面白かったところ、素晴らしいと感じたところを箇条書きにしてみよう。

それから、本文を考えて、そこに遊びを入れ込む。これで行こう。

遊びは、無理に入れる必要はない。そう割り切る。


白いレポート用紙にペリカンで書いていく。

カリカリ、カリカリ。

部屋に、ペリカンのペン先が奏でる音が心地よい。


よし!感想文のようなものができた。ここから要点をピックアップしていくぞ。


静かだな、と思い目線をあげると、夏目漱石先生と内田百閒先生が、レポート用紙を覗き込んでいる。

内田百閒先生の顔が、心なしか赤いような気がする。

怒っているのかな。


「あの……。内田先生? 怒ってます?」

『お、お、怒ってなどいない! いないがね君!……なんだねこれは!家賃は払わないけどお酒は飲むというクズっぷりとは!私は映画の中で、もっとこう、健気に、かつ風流に生きとる!』


『いや内田、実に見事な感想ではないか。』

夏目漱石先生が、珈琲をすすりながら笑う。


『先生までそんな! 私は先生の前だから畏まっているのであって、映画の中の私は、もっと教え子たちに慕われる偉大な教授なのであります!』


「でも内田先生。慕われてるシーンの直後に、大酒飲んでどんちゃん騒ぎして奥さんに、また借金ですかって呆れられてましたよね?」


『うっ……。そ、それは、その、映画の演出というやつで……。』


『ははは! 演出なものか、内田の日常そのままだろう。うん、この文章はこのままでいい。直す必要はないよ。これこそが等身大の感想というやつだ。

綺麗に飾った言葉より、内田のこの人間臭いダメさが伝わる方が、現代の中高生にも絶対に受ける』


漱石先生にそう太鼓判を押され、百閒先生はぐうの音も出ずに俯いた。


しばらくすると、レビューの骨子のようなものができた。

これに肉を付ければ完成だ。もう少しだ。

でも、遊びが無いな。


内田百閒先生の面白みのある文章は、なかなか書けないもんだなぁ。

すこし、いや、かなりおちこむ。


「よし、できた。こんなもんだろ。」

先生方がのぞき込む。



あなたには、本当に頼れる先生や友人がいますか?

これは内田百閒とその教え子たちの、心温まる絆の物語です。


太平洋戦争直前から終戦直後の暗い時代、そして高度経済成長期を、優秀な教え子たちに助けられながら健気に生きていく百閒先生。

自らの生徒を愛し、時には厳しく指導し、家賃は払わないけどお酒は飲む!という独自の優先順位で生きながらも、愛猫の失踪に涙し、教え子たちが企画してくれた『摩阿陀会』では嬉しくて破顔する。


この映画は、情に厚く、懐の深い百閒先生とその教え子たちの物語です。

タイパやコスパを重視する現代の中高生にこそ、ぜひ観ていただきたい一本です。



内田百閒先生が、顔を真っ赤にして叫ぶ。

『き、君! 家賃は払わないけどお酒は飲む!のところは削除したまえと言ったであろう!』


すると横で、夏目漱石先生が笑いながら珈琲をすする。

『いや、内田。実に見事な批評じゃないか。事実、お前は私のところへ来ては家賃の言い訳ばかりして、酒の話になると目を輝かせていた。彼は、お前の本質をよく見抜いているよ』


『せ、先生までそんな……! ぐぬぬ、しかし……。情に厚く、懐の深いという後半の褒め言葉は、実に素晴らしい。うむ、そこだけ文字を大きく太くして強調してくれたまえ!』



『さて、もう夜も遅い。われわれはお暇するとしよう。』

『そうですね先生。私も家に帰るとします。』

『内田はお酒を飲みに行くのだろう?』

『いや…!……まあ、そうなんですが……。』


「今日はありがとうございました。楽しい話も聞けましたし。」

『ははは。楽しめたのなら幸いだ。同じように執筆も楽しみたまえ。もしも苦しくなったら、珈琲を飲んで少し休むといい。しからば、面白い文章が生まれてくるかもしれないよ。』

夏目漱石先生は、笑顔で言ってくれる。


『そうだよ。私のような面白い文章は、なかなか書けるものではない。まずは自分の思いを実直に紙の上に書く。これが一番だ。』

内田百閒先生もそう続ける。


『では、またな。』

夏目漱石先生と内田百閒先生は、暗がりの中に消えて行った。


つづく


作中に登場する文豪の先生方、映画監督は、最大のリスペクトを込めて、本作オリジナルのフィクションキャラクターとして登場させていただいております。実在の人物の思想や名誉を毀損する意図は一切ございません。一読者としての愛を込めたパロディとして、温かい目でお楽しみいただけますと幸いです。

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