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砂上の狩人  作者: eight
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第93話 影の民 ムロイス

漆黒の毛を持つ狼へと姿を変えたムロイスが咆哮を上げる。

「何がどうなってんだ?」

ライラが戸惑いながら疑問を呈した。

「分からん。が、身体が元に戻っちまってるのは確かだな。」

「兎に角、やるしかねぇかっ!」

ライラが走り出す。ムロイスも迎え撃つかのように動き出した。

飛び掛かり噛み付こうとするムロイスを横に躱しながら、逆手に持った剣で切り抜く。

刃がムロイスの身体を裂いたように見えたが、着地したムロイスは何事も無かったかの様に振り返り追撃する。


手応えが無かった事に違和感を感じ、気をとられていたライラが背後から覆い被さるように押し倒された。

「くそっ!」

脱出しようともがくライラの首にムロイスが噛み付こうした瞬間、ディケンズが横から体当たりを喰らわした。


吹っ飛んだムロイスは瞬時に立て直し、ディケンズへと飛び掛かる。

ディケンズは身体をぶつけるように腕で払い除けると、着地したムロイスへ狙い、斧を振り上げる。


次の瞬間、雷撃が走り、斧を直撃した。

「ぐぁ!」

ディケンズが思わず斧を手放して、フラついた。

ムロイスはすかさずそこへ、宙返りするように蹴りを入れ、ディケンズを吹っ飛ばした。


ムロイスが追撃の為に飛び掛かるが、ライラが手を翳し、ディケンズの前に砂の壁を作り出した。

ムロイスは、反撃を警戒したのか、砂の壁を蹴ると大きく後方へ飛び、距離を取った。


ライラがディケンズの斧を拾い、近づいた。

「大丈夫か?」

「ああ。ちょっと痺れるが問題ない。」

ディケンズは手を動かして、確認しながら斧を受け取る。

「それよりもさっきのは奴の仕業か?」

ライラはムロイスを見ながら言った。

「恐らくな。」


次の瞬間、オッドアイだったはずのムロイスの目が両目とも黄色く光る。

察した2人が素早く左右に跳んで躱すと、その場に再び雷撃が落ちる。

2人はそのまま挟み込む様に駆け出した。

「このうえ魔法とか、能力持ち過ぎじゃねぇか!」ライラが軽く毒づく。

「んで物理は効くのか?」ディケンズが叫ぶ。

「手応えは無かったが、とりあえずやってみるしかねぇ!」

「また適当な・・・」


両サイドからライラの剣とディケンズの斧がムロイスを襲う。

ムロイスは後ろの跳んで躱す。

ライラとディケンズがぶつかり合う形になったが、それは2人も読んでいた。

ディケンズは身体を反らしながら斧の腹を構える。ライラはそこへ飛び込むと、斧の腹を蹴って向きを変え、ムロイスに切り掛かった。


ムロイスは再び宙返りで蹴り上げ迎え撃つ、ライラは蹴り飛ばされるも、その脚に一撃入れた。

着地したムロイスに向けて、ディケンズが斧を振り下ろすも、顔に当たる瞬間、斧の刃が当たる部分だけ、顔が裂けるように変形し、斧が通過すると同時に元に戻った。


「なっ!」

驚くディケンズに向けて、ムロイスが口を開く。

両目が青くが光ると水球が放たれる。

近距離から喰らったディケンズは吹き飛び、地面を転がった。


ディケンズに向け、再度水球を放とうと口を開いたところへ、ライラが砂の玉を飛ばす。

ムロイスも標的をライラに変え、撃ち合いが始まった。


ムロイスは砂の玉を跳んで躱しながら、水球を放つ。ライラもそれを砂の玉で相殺していく。

威力で言えば、ムロイスの方が上であったが、口から放つムロイスに対して、周りから作り出せるライラの方が圧倒的に手数が多かった。

次第に圧されていったムロイスは攻撃を諦め、影となって地面に消える。


黒い影が地面は這って、ライラへ迫る。

「させるか!」

影が飛び出す瞬間を狙い、地面を棘状に隆起させる。

飛び出したムロイスだったが、瞬時に影に戻ると棘を回るように登っていき、そのまま上空へ跳び上がる。


上空で狼の姿へ戻ったムロイスの目が青く光り、地上のライラに向けて、口を開いた。

今度は水球ではなく、水流が放たれる。

「マジかよ!」

ライラは走り出す。水流が追走するように跡を追う。


「ライラ!潜れ!」

ディケンズが叫ぶと同時にソールオングルを構えた。

「この勢いじゃあ!無駄だろぉ!」

言いながらも蛇行して、潜るチャンスを伺う。

「行けっ!」

ディケンズの声に弾かれるように砂へ飛び込む。

同時にディケンズが光弾を撃つ。

放たれた光弾が水流に当たる。光弾の熱が水を蒸発させ、爆発を起こした。


周囲を舞う水蒸気と砂埃で隠された視界の奥で、2つの黄色い目が光った。


遺跡の残骸の上で、2人の戦いを何も言わず見ていたミゼットが舌打ちをして立ち上がる。

「・・・獣めっ!」

手を翳すと自身を包むように闇属性のシールドが展開される。


ムロイスから雷撃が放たれた瞬間、周囲の水蒸気に雷撃が走り渡り、閃光と共に一帯を巻き込む爆発が起きる。

ディケンズは吹き飛ばされ、地面を抉(えぐ)ることで、砂中にいたライラもまた、地上へと引き摺り出された。


ディケンズは気を失い、ライラは傷だらけで立ち上がる。

「なんて野郎だ・・・」

だが、ムロイス自身も無事ではなく、その身体からは煙が上がっている。

「ディケンズ!無事かっ!」

ライラが叫ぶも返事は無かった。

「くそっ!」


ライラは剣では無く、デザイルを抜く。

魔力を込めると刃の部分に砂が集まり、砂の剣身を作り出す。砂魔法の触媒となるデザイルの力が加わり、普段作り出す砂の玉よりも、より強固なものになっていた。


横に駆けながらデザイルを振り抜くと、砂の剣身がその形のまま、衝撃波の様に飛ぶ。

ムロイスは跳んで躱しながら水球を放って反撃する。

ライラは新たな剣身を作ると同時に砂の玉も作り、水球を相殺した。

ムロイスは先程と同じように砂の刃が当たる瞬間だけ、身体を変形させて、攻撃を透過させる。


互いに攻撃を避け、相殺し合う。ライラは砂に事欠かぬ砂漠と言う地の利を、ムロイスはその特殊な身体能力を活かし、一進一退の攻防を続ける。

しかし、ライラが次第に体力を失っていくのに対し、ムロイスの動きが衰えることは無かった。


「ちきしょう。このままじゃ時間の問題だな。」

悪態をついたライラが砂を巻き上げ、視界を隠す。そして、地面に手を付くと思い切り魔力を込めた。

するとライラの身体を覆えるほどの砂の柱のような塊が、ムロイスを中心に円を描くように乱立した。


ライラが一本の柱の中へ飛び込む。

砂が晴れ、ムロイスは周囲に出来た砂の柱をゆっくりと見渡す。そして、ライラが居た場所に近い柱に向かい、雷撃を放つ。

柱が雷撃で飛散すると同時に背後の柱から何かが飛び出す。それを読んでいたムロイスは素早く振り返りながら雷撃を飛ばした。

しかし、飛び出してきていたのは、ただの砂の塊であった。放たれた雷撃により、柱もろとも破壊される。

辺りは静まり、ムロイスは残った柱を警戒する。


その時、別の柱から音がした。

ムロイスが振り返った瞬間、背後の地面からライラが飛び出し、そのまま切り上げる。

ライラの刃は、反応の遅れたムロイスの二又に別れた尻尾の片方を切断した。


血のような黒い液体と共に切り離された尻尾が宙に飛び、霧状になって消えていった。

「へっ!ざまぁ見やがれ。」

呟いたライラの向こうでムロイスが震えだす。


尾を切られた痛みからでは無い。それは純然たる怒りであった。

ムロイスの身体から湯気のように黒い靄が上がり始める。


ライラは警戒しながらも、横目でディケンズを見た。

まだ倒れたまま、動く気配はなかった。


「・・・死んじゃあ、いねぇよな。」


ライラが呟きを遮るように、ムロイスが咆哮を上げる。

ムロイスの両目は赤く変わっていた。


「まだピンピンしてやがる・・・」

ライラは剣を強く握り直した。


えー、ご無沙汰しております。

更新再開するのですが、またすぐ止まるのもあれなんで、更新日を日曜日+余裕がある時は不定期に更新って形に変更させて頂きます。非常に申し訳無い。

あと、面倒なのと駄文過ぎて嫌になりそうなんで避けていた、1話からの見直し、手直しも少しずつ進めたいと思います。

何卒、宜しくお願い致します。


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