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砂上の狩人  作者: eight
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第91話 賢者の石③

「賢者の石?そいつは価値があるのか?」

「はい。とても価値のある物です。」

その言葉にローゼルがチラりとエドゥリアを見た。

「やっぱりそうか。なら是が非でもスフィンクスとかいうのを倒さねぇとな。」

「しかし、どうすんだ?やっぱりコアみたいなもんがあるんだろ?」

「はい。頭か心臓の位置にある命眼石と言う核を壊さない限りは動き続けます。」ディケンズの問い掛けにエドゥリアが答える。

「問題はどうやって壊すかだな。」

「構造上、口から攻撃をしたのであれば、恐らく命眼石は心臓部にあると思います。」

「光弾を連発しても表面的にしか削れなかったんだ。心臓までとなるとな・・・」


「あの、私たちもついていって宜しいですか?」

「ああ?別に構わないが、何か手があるのか?」

「はい。ひとつ考えがあります。」

そうしてエドゥリアは作戦の説明を始めた。




「ふ~ん。こいつがねぇ。」ライラは言いながら小瓶を眺める。中には銀色の液体が揺れている。

「一時的ではありますが、身体を鋼鉄より固くします。」

「んで、それを飲んで、デカい弾になって奴さんの身体を貫くって寸法か・・・」

「はい。ディケンズさんが光弾で熱して柔らかくなったところを狙います。」

「でもよ。」ライラが疑問を口にした。

「いくら何でも、そんな事したらローゼルも無事じゃいられねぇだろ?」

「はい。」ローゼルは他人事のように答えた。

「はいってお前・・・やっぱディケンズが飲んだ方が良いんじゃねぇか?」

「何でだよ。」

「いや、お前の方が丈夫だろ?」

「好きだな、それ。だいたい俺は光弾を撃ち込まねぇといかないだろうが。」

「そうだけどよ。下手すりゃあ死なねぇか?」

「まぁ、その場合は私の方で直しますので。」

「治しますって、致命傷じゃなくて死んじまうかもしれねぇぞ。」

「ですから、素材は揃ってますので・・・」

「マスター・・・」ローゼルがエドゥリアの言葉を遮る。

「ん?」

「お二人はホムンクルスについて、正しく理解されておりません。」

「えっ!」

エドゥリアは驚くと、ライラたちを見て、ホムンクルスに関しての説明を始めた。





ライラとディケンズの驚愕の声が響いた。

「ほ、本当に人間じゃねぇのかよ・・・」

ライラはそう言いながら、確かめるようにローゼルの腕を触る。

「前にそんな話は聞いたが、てっきり冗談だと思ったぜ。」

「でもよ?それって生命体を作り出すってことだろ?こないだ言ってた錬金術師の規則違反にはならねぇのか?」

エドゥリアは少し戸惑いの表情を浮かべながら答える。

「それに関しては難しいところなんですが、ホムンクルスは錬金術の歴史上、一番大きな発明であり、それも初期の頃に技術が確立した為、制限が難しいのです。その代わりに、ホムンクルスは基本的に術師の助手として扱い、ホムンクルスに対しての非人道的行為や一兵士として戦争に加担させることは禁じられています。ですので、今回の行いはグレーゾーンになりますね。」

「なるほど。」

「目を付けられるってほどではないのか。」

「恐らく・・・」

「まぁ、兎に角、その作戦を信じてやってみるか。」

「だな。特に準備もねぇし、一杯引っ掛けに行くか。」

そう言うとライラたちはルプランデルを後にした。


2人を見送ったローゼルがエドゥリアに声を掛ける。

「宜しいのですか?」

「何が?」

「賢者の石に関して、本当の事を言わなくて。」

「あぁ。」

エドゥリアは少し考えるとニコっと笑いながら言った。

「一度見てみたくない?ガーランド卿の作った賢者の石を。」





翌日。

砂漠を進む一行。

「確か、もう少し向こうだったはずだ。」

ディケンズが指を指しながら言う。

「しかし、本当にあれも仕込んだのかよ・・・」

ライラが空を見上げながら言った。晴れ渡る空には大きな雲が広がっていた。

「はい。と言っても発生条件を整えただけで、後は自然が生み出したものです。」

「ほ~ん。あんな雲、見たことねぇけどな。」

「積乱雲と言います。砂漠では余り発生しないものですね。」

「あれが必要なのか?」

「はい。今作戦のキーポイントのひとつです。」



「見えた。」

ディケンズの言葉に全員が前を見る。そこには前と同じように台座の後ろに鎮座する翠色のスフィンクスがいる。

「凄い・・・本当にメトルダのスフィンクス。」エドゥリアは感嘆の声を漏らす。

「圧巻ですね・・・」ローゼルも続いた。

「おい。お前ら。」

ライラの声に、エドゥリアは慌てて雲の位置を確認すると指示を出した。

「ローゼルはそこへ。ディケンズさんはスフィンクスの胸を狙える位置で。」

「任せろ。」

「アタシは正面から引っ張ってこりゃあ良いんだな?」

「お願いします。」

「ほいよ!」

ライラが駆け出す。

「ディケンズさん!強風が吹きますので身体の固定をしっかりと!」

「了解だ。」


ライラが近づくとスフィンクスの目が光り、動き始めた。

「昨日振りだな、石っころ!今日の狙いはお前さん自身だぜ。」

他の者は離れている為、ライラに標的を絞ったスフィンクスが前脚を振りかぶる。

ライラはそれを軽々と躱し、スフィンクスの位置をコントロールしながら、何度もエドゥリアの方を見る。

雲がゆっくりと動き、エドゥリアに影が掛かる。

「ライラ様!」

その声を合図にローゼルのいる位置に向け、真っ直ぐに誘導していく。

「皆さん!準備を!!」

ディケンズは膝まで砂に埋めて身体を固定し、ソールオングルを構える。

ローゼルが小瓶に入った液体を飲み干す。すると全身が銀色に染まっていった。

それを確認したエドゥリアは銃の様な物を取り出し、上空の積乱雲に向けて、白い球体を撃ち出した。

球体が雲の中で弾ける。すると冷気が拡がり、冷まされた空気が一気に下降し始めた。


「おお。あれがそうかよ。」確認したライラは振り返り、スフィンクスに向けて手を翳す。

地面の砂が緩み、昨日を同じようにスフィンクスの身体が沈む。

「ディケンズ!!」

叫んで合図すると同時に砂の中へ潜った。

「行けっ!」

ディケンズが光弾を放った瞬間、下降した空気が地面に激突し、周りに向け凄まじい強風が吹き抜ける。

それに合わせて走り出したローゼルは、スフィンクスに向け、手足をピンと伸ばし一直線になるように跳んだ。

強風はエドゥリアとディケンズを吹き飛ばし、ローゼルを光弾によって柔らかくなったスフィンクスの胸へと飛ばす。

ローゼルの身体は鋭い針の如く、スフィンクスの身体を貫き、命眼石を砕いた。

力を失ったスフィンクスは、そのまま崩れ落ちる。突き抜けたローゼルもまた、ボロボロとなり、その機能を停止した。


地面からライラが飛び出す。

「終わったか?」

上空へ吹き上げられていたエドゥリアがパラシュートのようなものを広げて降りてくる。

「終わったみたいですね。」

大量の砂を受けて、砂の像のようになっていたディケンズが身体を揺すって砂を払う。

「すげぇ風だったな。これがダウンなんちゃらか。」

「ダウンバースト現象です。」

「兎に角これで、お宝はアタシたちのもんだな。」





数日後。

ライラたちは再びルプランデルに来ていた。

「本当に治ってやがる。」

恐る恐るローゼルを突ついた。

「記憶もそのままなのか?」

ディケンズが尋ねる。

「はい。」

「すげぇな。」

そこへ宝玉を抱えたエドゥリアがやって来て、テーブルの上に置いた。

「おっ!お宝ちゃんの登場かっ!」

ライラは一度、手を大きく叩き、そのまま擦り合わせると、嬉しそうに尋ねた。

「んで?いくらくらいの価値なんだ?」

「あーそれは・・・」

エドゥリアはバツの悪そうな表情を浮かべ、ローゼルは顔を伏せた。

「ん?」

「あの・・・金銭的価値は・・・ありません。」

「はぁ?」

ライラとディケンズの声が揃う。

「どういう意味だ?」

ディケンズが尋ねる。

「あの、賢者の石と言うのは、魔法の道具や錬金術の材料ではありません。厳密に言えば、未知の鉱石です。」

「なら用途さえ見つかれば、価値が出るんじゃないか?」

「それもダメなんです・・・」エドゥリアが申し訳なさそうに言う。

「ダメ?」


するとローゼルが助け船を出すように説明を始める。

「賢者の石と言うのは、錬金術師に取っての最終目標のひとつで、今現在にこの世界に存在していない、全く新しい鉱石を産み出すことなんです。そして、その材料、精製方法、加工方法は一切公表していけません。あくまで、この世界で賢者(じぶん)だけが産み出せる石と言うわけです。」

ポカンとしている2人を他所にエドゥリアが引き継ぐ。

「そして、他者の賢者の石を発見した錬金術師も、未知の鉱石であることの確認と報告だけをして、解析することは許されてません。」


「ちょ、ちょっと待て、てことは何にも使えないってことか?」

「はい・・・言うならば()()()()()()()()()()()です。」

「でも宝玉としての買い手はいるんじゃないか?」

「見た目を好んで買うコレクターはいるかもしれませんが、公的に名の付いていない物なので、他の宝石の様に高値になる可能性は低いかと・・・それに。」

「それに?」

「錬金術協会の規則として、発見した賢者の石は・・・破壊しないといけません。」

「破壊?」

「はい。未知の鉱石と言っても限りがありますので、賢者の石を作り上げたと言う実績だけを残して破壊しないと、後世の術師たちがいつか作れなくなってしまいますので。」

エドゥリアが言い終わる前にローゼルが隠していたハンマーで賢者の石を叩いた。

「あ!おい!」

ライラが止める間も無く、もう一打入り、賢者の石は崩れ落ちた。

「規則ですので。」

「マジかよ。」

ライラは頭を抱え、ディケンズは空を仰いだ。


そうして賢者の石は塵と化したのだった。

某動画サイトでダウンバースト現象の動画を見て、カッケェっと思ってネタにしたくて無理矢理作った感じのお話でした。

素人がネットでちょろっと調べただけなので科学的考証などは、随分ガバガバかと思います。恐らく本来のダウンバースト状況的に雨を伴うかと・・・

そんな訳なんで、全部ひっくるめてファンタジーとして暖かい目で見て頂ければ幸いです。

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