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砂上の狩人  作者: eight
81/85

第81話 砂海に沈む月 パルドランダ

パルドランダ。通称「砂海月」

キノコの傘のような胴体からは、無数の触手が伸びており、触手の先まで合わせると2m近くある。

胴体は通常のクラゲと違って透明では無く、砂色をしている。

宙に浮いてる訳ではなく、幾つかの触手で地面に立っている状態だった。

2本だけ太い触手があり、その触手からムルシラドズに向けて砂のブレスが放たれていた。

触手の1本が腹部に巻き付くような形でライラを捉えており、ライラはそれをナイフで切ろうと藻掻いている。


「ライラ!」

叫んだディケンズが即座に光弾を放ち、ライラを拘束している触手を蹴散らした。

解放されたライラは急いで距離をとる。

「クソッたれ!潜ったら目の前に居やがった!」


怯んだムルシラドスが再び水ブレスを放つ。

胴体に当たるが、水を吸収したのか胴体が少し膨らみ、身体の中に取り込んでいた砂が濡れ、体色が暗くなった。

パルドランダが横一線に薙ぎ払うように砂ブレスを放つ。

ディケンズは伏せて避け、ライラは砂中に退避する。

直撃を受けたムルシラドスが大きく後退し、勝てないと踏んだのか、逃げ去っていった。


ディケンズが再びソールオングルを構える。

放たれた光弾はパルドランダの傘を捉える。傘の一部を吹き飛ばし、水分と共に湿った砂が噴き出す。

衝撃によって怯み、すぐさま砂の中へと消えた。

入れ替わるようにライラが砂から飛び出し、周囲を確認しながら言った。

「奴は?」

「一発ブチ込んだら砂の中に逃げやがった。」

2人は地面に集中して警戒する。ライラは砂の玉を作り備えた。

「ダメージは入ったのか?」ライラが問い掛ける。

「多分な。だが顔が無いから表情が読めん。実際、どこまで効いてるのかも分からんな。」


地面が盛り上がり、再びパルドランダが現れる。しかし、その身体は元通りになっていた。

「なっ・・・」

「どうした?」

パルドランダが2本の触手をライラたちに向け、砂の玉を連射する。

「クソッ!」

ライラは咄嗟に砂壁を作り、2人はその裏に身を隠す。

「さっき確実に胴体を吹き飛ばしたはずなのに戻ってやがる。」

「あぁ?」ライラは壁から顔を覗かせて確認するが、砂の玉が飛び、すぐに顔を引っ込めた。

「別個体ってことか?」

「いや、分からん。もう一度やってみる。」

「了解。」

意図を理解したライラは壁から転がりながら飛び出し、自身の砂の玉でパルドランダのを相殺しながら横に走る。

パルドランダがライラを追尾し出したのを確認した、ディケンズは再度狙いをつけた。

「今度は頼むぞ。」

光弾が打ち出され、気付いたパルドランダは攻撃を中断して回避しよう宙に跳ぶ。

しかし間に合わず、触手に当たり、爆発で胴体の下部と一部の触手が吹き飛んだ。

すかさずライラが追撃に走るも、パルドランダは再び砂の中へ消える。

ライラも追うように砂に潜った。


暫くするとライラが砂から飛び出す。正確には、投げ飛ばされたようだった。

「野郎!再生してやがるっ!」

着地したライラがディケンズに言った。

這い出てきたパルドランダは元の姿になっている。

「再生だと?」

「ああ、よく分かんねぇけどな。」

再び始まった砂の玉の砲撃を2人は左右に別れて躱す。

「これ以上、撃っても無駄撃ちになるか。」

ディケンズはソールオングルを放り投げ、斧を抜いた。

ライラは直角にパルドランダの方へ曲がると縫うよう躱しながら、砂の玉を放って相殺し、玉を発射している太い触手を切り上げた。

触手は千切れ飛んだが、ライラもまた別の触手に殴り飛ばされる。


倒れたところへもう片方の触手を向け、追撃しようとした時、ディケンズが背後から胴体に斧を突き立てた。

ブヨブヨとした傘がへこみ、亀裂が入ると中から砂が吹き出した。

その砂はパルドランダの魔力により大きな塊になって、ディケンズを殴る飛ばす。その隙にパルドランダは三度(みたび)地面へと潜った。


「クソッ!またか・・・」ライラが毒づく。

「そういえば聞いたことがある。海に住むクラゲは身体の殆んど水で出来てるらしい。」

「そんなので生きられるのかよ?」

「まぁ実際生きてるしな。奴さんの身体は水の代わりに砂で出来てるのかもしれん。」

「身体が欠けても、潜って砂を吸収すれば再生出来るってことか?」

「恐らくな。」

「とんでもねぇ生きもんだな。」

「目的の心臓を打ち砕かない限りは再生を繰り返す可能性があるな。」


次の瞬間、パルドランダが飛び出す。

ライラに向け、触手を構えた時、ライラが呟いた。

「ん?待てよ。全身が砂って事は・・・」

ライラも手を翳して魔力を込める。


発射された玉がぐるりと回り、あらぬ方向へと飛ぶ。

「よし!」と呟いたライラが更に魔力を込める。

再び玉が軌道を変えるが、ライラの狙いはパルドランダそのものだった。

しかし、パルドランダ自体が動くことは無かった。

「ちっ!身体ごと操るのは流石に無理か。」

おかしな玉の軌道に気付いたパルドランダが、今度はブレスを放つ。

ライラも再度魔力を込める。

お互いが砂のブレスの主導権を握ろうと魔力がぶつかることで、ブレスはウネウネと蛇の様に軌道を変え、周囲の空を泳ぐかの様に動き回る。


両者の攻防を見ていたディケンズが回り込み、パルドランダを切りつける。

それと同時にパルドランダの魔力が途切れ、砂ブレスはライラの手中に収まった。

宙で大きく湾曲させたブレスをパルドランダに叩き込んだ。

胴体が貫かれ、身体が弾けると同時に何かが転がり落ちる。

そこには赤い色をした球体が落ちていた。


「あれかっ!」ディケンズが叫ぶ。

ライラが即座に走り、剣を突き立てようとしたが、すんでのところで砂に包まれ、地中へ消えた。

「クソッ!」

「あれが恐らく心臓の代わりだろう。あれがある限りは再生するはずだ。」

「面倒な野郎だ・・・」


暫く警戒する2人だったが、一向にパルドランダは現れない。

「もしかして逃げがやったか?」痺れを切らしてライラが言う。

「分からん。」

砂魔法使い同士の戦いは魔力の根競べに近かった。クラゲに感情が存在するのかは分からなかったが、ライラ自身、面倒に感じていた。

「あるいは・・・」

ディケンズは地面の砂を足で払うように動かした。

「さっきので死んでたのかもしれないな。」

「そういう事か・・・」

ライラが確認の為に地面に手を突っ込む。すると周囲の砂が流砂のように沈んでいく。

「あるか?」ライラが尋ねる。

「いや、見当たんねぇ。本当に逃げたのかもしれんな。」


次の瞬間、触手だけが姿を現し、砂の玉を放つとすぐさま地中へ消えた。

不意討ちを喰らったライラが吹き飛ぶ。

ディケンズはすぐにソールオングルを拾い、触手が消えた場所へ放つ。

光弾は地中に消え、数秒後、爆発とともに砂を巻き上げた。

しかし、既にパルドランダの姿はなかった。


起き上がり、砂を払いながらライラが言う。

「あの野郎、地上に出るのは部が悪いと見て、中で動くつもりか。」

「みたいだ。そもそも本来は地中に住んでるようだしな。」

ディケンズはソールオングルを確認する。

「精々、あと2発くらいだな・・・誘き出して、出てきたところを仕留めるしかないか・・・」


「いや・・・ここはアタシに任してくれ。」

「任せるってどうすんだ?」

ライラはポケットからサンドロスライトを取り出す。

「こいつのお陰で前より魔力が上がったからな。」

「お前まさか・・・」

「中でやり合うのさ。」

「いけるのか?」

ライラはゆっくりと深呼吸する。


「さぁな。」

そう言って砂の中へ飛び込んだ。



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