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砂上の狩人  作者: eight
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第77話 顔の無い天使②

天使は前傾姿勢になると、一蹴りで飛び込む。

標的は一番前にいたブロウだった。

凄まじい速度でブロウへと進むが、同時に飛び出していたルルが遮るように間に入る。

すぐに標的を切り替えた天使が、手にした棒でルルの顔に向け、三連突きを繰り出す。

ルルは頭を振り、一撃目二撃目を左右に躱して、三撃目をガントレットを着けた左手で弾くと、そのまま右手でカウンターを放つ。

しかし、振り抜いた先にはもう姿は無く、背後に回っていた天使の一撃で、ルルは吹き飛ばされた。


「ルルっ!」

叫んだブロウの声に反応し、標的をブロウに戻した天使が走り出す。

ブロウは咄嗟に水の珠を放つ。だが水の珠は天使の前で弾け消えた。

「しまった!魔法は効か・・・」

言い切る前に飛んできた突きを大剣の腹で受ける。

瞬時に横に動いた棒が大剣をズラし、ブロウの胸を捉えた。

「がはぁ!」

怯んだブロウの大剣の腹に両足で蹴りを入れて吹き飛ばしながら、その反動を利用して、今度はエドゥリアへと向かう。


エドゥリアは左腕に装着した固定式のスリングショットで黄色い玉のような物を2発、射ち出した。

天使はそれを掻い潜りながら近付く。

「速いっ!」

エドゥリアは3発目を手前の地面に向けて放ち、右腕に着けたフックショットから近くの岩に鎖を飛ばして、その場を離れた。


天使はすぐに方向転換しようとしたが、地面に落ちた玉の上を通過した瞬間に周囲に電撃が走り、被弾した。

鎖に引かれて離れながら、それを確認したエドゥリアが「よし。」と呟いたのもつかの間、天使は即座に態勢を立て直し、エドゥリアへと向かう。

「え?」

再び玉を射とうとするも、もう目の前まで来ていた。

「くっ!」エドゥリアが身構える。

天使が突きを放った。

エドゥリアに当たるより先に、横から跳んできたローゼルが棒を弾く。

天使は弾かれた棒をそのまま反転させ、反対側をローゼル目掛け、振り抜いた。

ローゼルは手にしたナイフの腹で受け、そのまま後方へ飛ばされるも、ナイフを投げて反撃する。

天使は棒で地面を突いて勢いをつけると、大きく跳躍して躱す。そのままローゼルに向け、空中から突きを繰り出した。


ローゼルは後ろに跳んで躱す。天使はローゼルに居た場所に突き刺した棒をローゼルの方へ弾き、砂を飛ばした。

咄嗟に目を腕で守る。ほんの一瞬だけ視界が塞がった次の瞬間、天使は既に目の前に来ていた。

ローゼルは間近で天使の顔を見る。

顔の真ん中にある大きな穴。まるで水面に出来た渦のようなそれは、顔の奥行きを無視して、どこまでも続く深淵の様に見えた。

普段冷静沈着なローゼルさえ、得も知れぬ異様さに、胸が大きく脈動した。

その直後には横から来た天使の棒がローゼルを捉えていた。


吹き飛ばしたローゼルに追撃を仕掛けようとした天使を、跳んできたルルが背後から殴り付ける。

弾き飛ばされた天使だったが、受け身を取り、即座に反撃に転じた。

繰り出される棒術を回避しながら、ルルもカウンターを入れる。だがどちらの攻撃も当たらず、攻防が続く。


そこへローゼルもやって来る。2対1の構図となり、凄まじい連撃を繰り出すも、天使は棒を巧み使い、2人の攻撃を捌いている。


離れたところでエドゥリアがブロウに近づく。

「ブロウさん。大丈夫ですか?」

「ああ。」

2人はルルたちの攻防を見守る。

「確かにあの速さじゃあ、俺には対応出来ねぇな。おまけに魔法が効かねぇとなるとお手上げだな。」

「外魔法以外を無効化するそうです・・・天使・・・不思議な生き物ですね。」

「あの2人なら何とかなるか・・・」

「分かりません。あの顔・・・表情が読めない以上、奴がどれほどの力を出してるかの、見当が付かないので。」

「確かにな。まだ本気を出してない可能性もあるわけか。」




交互に繰り出すルルとローゼルの攻撃を躱している天使は反撃に転じることは無かった。だが、戦いながらローゼルは違和感を感じ始めた。

徐々にではあるが、天使の速度が上がっていく。

少しずつ動きの中に余裕が現れてくる。

「この速度に・・・慣れ始めた?」

言った瞬間、天使がカウンターで棒を大きく振り、2人は下がって距離を取った。

ルルが呟く。

「こちらに合わせて、速度を上げている。」


暫く戦いが続くも、ルルの言葉通り、天使の速度は徐々に2人を凌駕していく。形勢は逆転し、2人は防戦を強いられる。

天使の突きがローゼルを捉え、ガード越しに後方へ押し下げられる。それと同時にルルが殴り、天使も後方へと吹き飛んだ。

立ち上がった天使が前に手を翳す。

すると、紫色のモヤのようなものが2つ浮かび上がる。それは炎ではなく、人魂のようにユラユラとしていた。


「魔法・・・?」

2人に向かってモヤが飛ぶ。

左右に別れて回避した瞬間、天使が駆け出す。

その標的はルルでもローゼルでも無かった。

2人が動いて開けたその先、エドゥリアとブロウに向けて駆け抜けていく。

「しまった!」

「マスターっ!」


エドゥリアがスリングショットを放つも、棒で弾きながら、勢いを緩めず進む。

天使は両手で棒を握りしめ、エドゥリアに向け、渾身の力で突きを放つ。

「どけっ!」

咄嗟の判断でブロウが体当たりするようにエドゥリアを押し出した。

速度により威力が増した一撃が胸に当たる。貫くことは無かったものの、凄まじい衝撃が走る。

「っ!」

ブロウは目を見開き、一瞬にして気を失った。

天使はそのまま棒でブロウの身体を持ち上げ、投げ捨てる。

その巨体はゴロりと転がり、動かなくなった。



「ブロウ!」思わずルルが叫ぶ。

「ローゼル!」エドゥリアはローゼルに指示を飛ばす。

ローゼルは天使へと飛び掛かる。

天使の棒術が飛び、ローゼルは敢えて被弾を厭わず、纏わりついた。

「ルルさん!ブロウさんを!」

エドゥリアの声に頷いたルルがブロウを抱え、モウズに乗せた。

エドゥリアはポケットから丸い形の小さな笛を取り出し、吹き鳴らした。

すると何処からともなく、小さな羽の生えたモグラのような生き物が何匹も飛んでくる。

次の瞬間、天使の棒がローゼルの腕を捉える。

鈍い音と共にローゼルの腕が有らぬ方へと曲がった。

「ローゼル!退きなさい!」

エドゥリアは叫ぶと、もう一度笛を吹き、スリングショットにセットして天使へと放つ。


天使の元へ何十というモグラのような生き物が飛んでいく。

天使が暴れるも次から次へと纏わりつき、動きを鈍らせ、視界を塞ぐ。


「撤退しましょう。今はブロウさんの治療が優先です。」

その言葉にモウズを王都へと走らせる。

エドゥリアは双眼鏡を取り出し、天使を見た。

纏わりついていた獣が全て息絶えた時、標的の消えたと判断した天使の上空に、現れた時と同じ球体が出現し、その中へと消えていった。


それを見てエドゥリアは息を付いた。

「ローゼル。腕は?」

「問題ありません。アトリエに戻れば、すぐに戻せるかと。」

「あのまま続けても、多分勝てない。」

ルルが呟いた。

「そうですね。まだ力を残していたように思います。」

ローゼルが同調した。

「兎に角、ブロウさんを病院に届けたら、考えましょう。」





エドゥリアのアトリエ、ルプランデル。

ルルが扉を開けて入る。入口には休業の文字があった。

「ルルさん。ブロウさんはどうでしたか?」

接合し直したローゼルの腕の可動域を確認しながら、エドゥリアが尋ねた。

「命に別状は無い。でも、暫くは動けない。」

「そうですか。無事で何よりです。」


「それで・・・どうしますか?」

ローゼルが本題へと入った。

皆が黙る。相手は未知の生き物、作戦など容易に出てくるわけではない。

ルルは何かを決意し小さく息をして、静かに言った。


「私にひとつ、考えがある。」


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