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砂上の狩人  作者: eight
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第75話 動向

ギルドを通してくる正式な狩猟の依頼は大きく分けて3つある。


1つ目は魔物の討伐自体が目的のもの。これは街道付近や町に被害を及ぼしたり、特定の個人が被害に遭った時に出される依頼で、この場合は対象の魔物の象徴となる素材を討伐の証として納品する。


2つ目は魔物の素材が目的のもの。文字通り特定の素材を納品するもので、生活の基盤となるものから、研究材料、加工道具、はたまた金持ちの道楽まで多岐に渡る。指定の素材さえ納品すれば、魔物自体の生死は問われない。


3つ目は魔物を生きたまま捕獲するもの。滅多にない依頼であり、基本的には国に属する機関から依頼か、物好きな金持ちから依頼になるが、捕獲という依頼の性質上、大人数でこなすか、小型の魔物が対象であることが多い。


前者2つの場合、対象となる素材以外は原則的に自由にしていいことになっている。そのため狩人たちはより金になる素材を、その場で判断して剥ぎとっていく。



「ねぇ。お肉でいいの?」

ミリオンは羽毛を取りながらライラに尋ねた。少なくとも皮や爪の方が値が張りそうに思えたからだ。

()()良いんだよ。」

「え?」

「魔物の素材の需要は加工屋の連中たちの状況次第なんだ。魔物によっては固定の需要もあるけどな。アポルドクスなら、連中がいらんと言えば金になんねぇんだよ。」

ライラは剥ぎ取った肉を見ながら言う。

「その点、肉なら無駄にならねぇ。加工屋、料理屋と当たって、残りゃあ行きつけの店に安めに売る。それでも残るなら自分で焼いて喰っちまえばいい。」

「なるほど。じゃあ私も肉を取った方が良いの?」

「いや、アポルドクスの一番の需要は羽毛だ。そいつはまず売れ残ることはない。だからお前は羽毛を優先すればいい。」

「アンタはいいの?」

「言っただろ?あくまでお裾分けだ。アタシは狩りに貢献してない。それに今は金に困ってるわけじゃないしな。こいつは酒の肴用だよ。」

「ふ~ん。」


「まぁ、どの素材がどれ程の価値で、どのくらい需要があるかを知るのも狩人の勉強だ。アタシのモウズの袋も貸してやるから手当たり次第剥いでいけばいいさ。」

「・・・ありがとう。」

再び剥ぎ取り作業を始めたミリオンを見ながら、ライラは砂の玉を作り出すと、上空に向かって放った。

空高く飛び、弾けると、寄ってきていたヴァルチャーたちが威嚇声を上げ、離れていった。





2日後。

ベールズにある酒場。ひと括りに酒場と言っても、メイリスやニグのそれとは様相が違う。

メイリスの酒場は大きいが、あくまで町人の憩いの場のような身内向けの装いであり、ニグの酒場はバーと呼ぶに相応しいシックな造りになっている。

そしてここ、ベールズの酒場はもっと商業的な店舗あり、客層も町人は勿論、行商人、マディオン共和国からの観光客、狩人、そして王都と違い軋轢はほぼ無いため、軍の関係者も普通に通っている。その為か店自体の規模も大きく、酒場と言うよりは大衆食堂のようにも見えた。

賑わいを見せる店の奥、テーブル席にライラ、ディケンズ、バアルの3人がいた。


店員の女が料理を持ってくる。

「はい!これは昨日お姉さんに頼まれた奴だよ!」

「おう。済まねぇな。」

店員は去り、ディケンズはテーブルに置かれた硬化した肉をつまみ上げた。

「おいおい。燻製にしたのかよ。」

「剥いだのが一昨日だからな。焼いて喰って余った分を頼んだのさ。」

「苦手なのか?」バアルが尋ねる。

「う~ん。苦手じゃねぇが固いからな。」

「固いって、おめぇの顎はアタシらより頑丈だろ。」

「いやそうじゃなくてな、折角の肉なのに肉肉しさが無くないか?なんか皮を食ってるみたいな・・・」

「アタシは好きだけどな。」

「まぁ、各々、好きな物を頼めばいいさ。」


一通り、食事し酒を煽った頃、燻製を噛みながらライラが切り出した。

「んで、ミリオンの事情聴取はどうなったんだ?」

「ああ。大方の予想通りではあったが、大きな内部情報というものはなかったな。一応、軍とギルドの双方で情報の精査はしている。」

「まぁ、下っぱだしな・・・」

「コズモンド・デル・エルサスからの刺客は、今のところ3名確認出来ている。私とミゼット、それとルルシカが始末した。」


「まだ来るのかねぇ。」

ライラは気怠そうに言った。

「ミリオンの話ではラステイル大陸には南西と北東に2つの支部があるらしい。」

「ってことは、こっちは南西の管轄ってことか。」

ディケンズが呟く。

「ああ。基本的に大陸に1つ、大きな大陸であれば2つ支部を置いているそうだ。それぞれの管轄は謂わば縄張りで、他の支部から送られてくることは無いらしい。」

「ひとつの支部にどんくらい抱えてるんだろうな。」

「分からん。だが、我々だけにそこまで力を割くとは思えんな。」

「つったって、奴らも商売としての面子があるだろ?このまま(しま)いってなるとは思えねぇけどな。」

「うむ。後は奴らの組織の中には支部の垣根を越えて動く、特別な殺し屋たちがいるらしい。」

「特別な殺し屋?また面倒くせぇな。」

「そいつらも注意しなきゃならねぇってことか?」

「分からんが、支部がお手上げとなれば、動き出す可能性もあるかもしれん。」

「ほ~ん。まぁ結局のところ、向こうさんが動いてくれねぇと何も出来ねぇってことに変わりねぇな。」

「まぁ、それはそうだな。」

「ミリオンのことがバレてるかは分からんが、内部情報を喋った以上は、奴らの標的になるだろう。宜しく頼むぞ。」

「ああ。軍の連中にも話はつけてある。」

ライラは残った酒を飲み干し、ジョッキをテーブルに置くと、ディケンズに尋ねた。

「んで?身体はどうなんだ?」

「ん?ああ。ある程度動けるが、大物狙いはまだ厳しいかもしれんな。」

ディケンズは塞がった傷口を触りながら答えた。

「なるほど。じゃあ慣らしがてら軽めの依頼をやるか。」

「だな。」






コズモンド・デル・エルサス、ラステイル西部支部。

「それで?ギルニアの件は何だったんだ?」

「どうやら魔王による侵攻があった模様です。」

「魔王?奴らは始末されたのか?」

「調査の結果、標的の狩人は全員無事だったようです。」

支部長のグライドは軽く舌打ちをして頭を掻いた。

「どうされますか?」

補佐官の女が尋ねる。

「ロコメダの者たちの為に、これ以上の労力を割く必要もないかと思われますが。」

「しかし、このままでは他の支部の連中に笑われる。」

「ですが・・・」

「ヒルドックを送れ。奴は良い意味でクズだ。自分の力に酔うタイプでもないし、目的の為には手段を選ばない。」

「・・・了解致しました。」

部屋から出ていく補佐官が脚を止め、振り向く。

「グライド様。」

「何だ?」

「本部の者からの話では、リネラ様が動き出すかもしれないと。」

補佐官は頭を下げて退出していった。

「玄冬のリネラ・・・」

グライドは呟くと、もう一度舌打ちをした。






ディケンズがギルド支部の扉を開けると受付にはミリオンがいた。

「おっ。さまになってるじゃねぇか。」

「あ!ディケンズさん。もう大丈夫なんですか?」

「何とかな。お前さんが早く助けを呼んでくれたお陰だよ。」

「いえいえ!」

「そういや聞いたぞ。狩猟依頼をこなしたらしいな。」

「あ、はい!えへへ。大変でしたけど、何とかなりました。」ミリオンは照れ臭そうに言った。

「大したもんだ。まぁ、まだ狩人って決めつける必要はないからな。色んなことをしてみて、自分の進むべき道を探せばいいさ。」

「はい。ありがとうございます。」


「んで、依頼書はどこにあんだよ?」後ろからライラが言う。

「え?ああ、そこにあるわよ。」

「どうする?あんまりショボいのでもあれだろ。」

ライラが依頼書の束を捲りながら言う。

「まぁ、そうだな。」

「そう言えば・・・」

ミリオンがライラに言う。

「バアルさんが、ここの狩人の人達には話をつけてあるから、2人がいる間は遠慮せずに依頼を受けてくれて良いって。」

「仁義を切らなくていいってことか?」

ディケンズが尋ねた。

「そうみたいです。」

「おい。」ライラがミリオンに言う。

「ん?」

「なんでさっきからディケンズには敬語で、アタシにはタメ口なんだよ?」

「だってアンタは何か違うんだもん。」

「何かって何だよ。」

「何と言うか威厳が感じられないのよね。」

「はぁ?威厳なんてディケンズにもねぇだろ!」

「おい。」

ディケンズのツッコミを無視してライラは続ける。

「だいたい初めからお前はな・・・」

「なによ!」

他愛ない口喧嘩を始めた2人を他所にディケンズは依頼を調べる。



「まぁ、この辺りの依頼が妥当か・・・」

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