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砂上の狩人  作者: eight
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第72話 国境の街 ベールズ

「で?結局どうなんだ?」

ベールズにある病院の一室。ライラは椅子に逆に座り、背もたれに肘を付きながら尋ねた。


「異物は取り除き、傷は塞いだ。もう問題はないだろうが、無論しばらく狩りは出来んぞ。」

初老の医者が返す。隣のベッドでは腹部に包帯を巻いたディケンズが眠っている。

「しばらくってどんくらいだよ。」

「さぁのう。人間なら2週間くらいだろうが、リザードマンの自然治癒力がどんなもんかは分からん。」

「なるほど・・・当分は足止めか。」

医者に礼を言って、病院を出たライラはギルド支部へ向かう。



ベールズはハーラル王国最北の街にして、マディオン共和国との国境の街。

その位置関係上、砂漠からは少し離れており、他国の素材や技術が入りやすい事から、街並みもニグやメイリスとは大きく離れている。


ざわざわと賑わっている大通りを抜けるとハーラル王国の入口である門が見えてくる。その近くには憲兵たちの詰所である砦と、隣接して作られたギルド支部がある。


ライラはギルド支部の扉を開けた。

中には依頼の受注をするカウンターと簡素な机と椅子が幾つからあり、カウンターではバアルとギルド支部長のアグトが何かを話し合っていた。


バアル・ロブレイン。ベールズに於ける狩人の代表格である彼は、狩人と兼任して国境警備部隊の副隊長も務めている。

ベールズは王都から一番離れた街である為、王都近辺のように軍を嫌う狩人は少なく、街を守る為に連携を取ることが多い。バアルはその中核を担う存在であり、その端正な容姿も相まり、ベールズの多くの者から慕われてる。


気付いたバアルが近寄ってくる。

「ディケンズはどうだった?」

「ああ、とりあえず大丈夫みてぇだ。安静にしとけとさ。」

「そうか、それは良かった。」

「そっちは?」

「黒いグリフォンの情報は無かった。恐らくだが、魔王の一件の生き残りだろうということだ。」

「なるほど。そんで、また戻ってきそうなのか?」

「いや、奴がギルニアに執着する理由はない。元々砂漠はグリフォン向きの環境じゃないしな。恐らく海を渡るだろう。一応、周辺国への注意喚起は飛ばしてある。」


「そうか・・・んじゃあ、アタシは一杯呑んでくるよ。」

「おい、待て。」

「ん?何だよ。バアルも行くのか?」

「違う。あの娘は何なんだ?」

バアルの示す先には、椅子に座りお茶を飲みながら、受付嬢とお喋りをしているミリオンがいた。

「ああ。忘れてた。ちょっと待ってろ。」

ライラはミリオンの方へと向かっていく。


ミリオンも気付き、目が合った。

「結論は出たか?」

ミリオンは真剣な面持ちで頷いた。

「・・・組織を抜けようと思う。」

「そうか。なら丁度いいや。」




「そう言う訳だから、仕事を斡旋してやってくれ。」

ライラは事情を説明した。隣にはミリオンが座り、机を挟んで向かいにはバアルとアグトが座っている。


「そう言う訳だからってねぇ。まぁ、仕事は無くはないけど・・・」アグトは少し困惑気味に言う。

その困惑の理由をバアルが引き継ぐ。

「コズモンドの目的は我々狩人だったんだろ?いきなり組織を抜けたなんて言われてもな、そんな話信用出来ないだろ。」

ミリオンの過去やコズモンドに入った理由は伏せてあった。

「それに関してはまぁ、そうだな。」

「信用出来るまで、一日中監視をつけてもらってもいいです。」

2人は顔を見合わせる。

「しかしなぁ、若い娘にそれは・・・」

「アタシとディケンズに顔に免じて、信じてもらえねぇか。」

渋る2人を見て、ライラは更に続けた。

「そもそも、アタシとディケンズも奴らの対象だったんだ。もし裏切る気なら、グリフォンの時にお前らを呼ばずに逃げちまうだろ。」

「まぁ、確かに・・・」

少し考えてからバアルが言った。

「相談しても構わないか?」

「ああ。」

バアルとアグトは立ち上がり、カウンターの奥で密談をする。


ライラはミリオンに話し掛けた。

「何かしたい仕事とかあるのか?」

「そんなの望んでる余裕なんか無いわよ。」

「それもそうか・・・」

ライラは天井を見ながら言う。

「お前、狩人になる気はねぇか?」

「狩人?」

「ああ。魔王の時は魔物と戦ってたんだろ?それに組織を勝手に抜けるなら、お前も狙われる側になる。ここで狩人になれば、いざと言う時、助けてもらえるかも知れねぇぞ。」

「・・・」

ミリオンは考え込んでいた。

「まぁ、思うようにすればいいけどな。」



そこへバアルたちが戻ってくる。

「とりあえずは信することにする。ただし当面は、ここの受付嬢としてアグトの監視下で働いてもらう。それで構わないか?」

「はい。」

「それとコズモンドがまだ動いてる以上、知ってる範囲で奴らの情報を提供してもらうことになる。」

「分かりました。」

「じゃあ、仕事に関しての詳しい事はアグトに聞いてくれ。」

「あのっ!」

立ち上がりかけていたバアルが止まる。

「なんだい?」

「狩人としての仕事もしていいですか?」

「狩人に?別に構わないが・・・」

バアルはライラを見て、目で問い掛ける。

「動きを見たことはある。普通の依頼なら、まぁ問題ないだろうな。」 

「そうか。なら構わないが、さっきも言ったように君は監視対象だ。単独での狩りは止めてくれ。」

「はい。」

「それじゃあ、これでいいか?」

そう言ってバアルは席を立つ。

「私は軍の方に話をしてくる。後日、コズモンドの件について呼び出すことになるだろう。」

「分かりました。」

「では失礼する。」

バアルがギルドから出ていく。



アグトかミリオンを向き直る。

「それでは早速、仕事の説明をするかね?明日でも構わないが。」

「今からで大丈夫です。」

「んじゃ、アタシは行くぜ。」

ライラは立ち上がり、出ていこうとしたが、振り返って言った。

「働き出すのは少し先でも良いか?」

「え?」

「まぁ、我々としては構わないが。」

「何でよ。」

「ディケンズのケガの件もあって、滞在が長引きそうだからな。ちょっと身銭を稼ぎたいんだよ。そっちもすぐに金がいるだろ?」

「まぁ、そうだけど。」

「バアルの奴も独りでやるなって言ってたから、アタシがついでに狩人の手続きも教えてやろうってことだよ。」

「そういうことなら・・・」

「んじゃ、その辺をフラついてるから、そっちの話が終わったら呼びに来てくれ。」





数十分後、店で物色中のライラは、突然声を掛けられた。

「おっ、砂魔法じゃないか。」

「あ?」

ライラが振り返るとそこには眼鏡を掛けた男が立っていた。

「こんなところで奇遇だね。」

「エリックか。何でベールズにいるんだよ。」

王立魔法研究所、主任研究員のエリック・ボルデンだった。

「いや実はねぇ、魔王の一件で調べなきゃならない物が一気に増えちゃってね。必要な素材が不足したから買い出しがてら、こっちの連中とも情報の擦り合わせをね。」

「なるほどな。アンタらも大変だな。」

「そっちはどうしてベールズへ?」

「ああ。ちょっと狙ってる奴がいてな。」


「やっと見つけた・・・どこに行くかぐらい、言っときなさいよ。」

ミリオンが眉間に皺を寄せながら言う。

「ああ、済まねえ。特に決めてなかったからな。」

「こちらさんは?」エリックが尋ねた。

「ああ。コイツはミリオンだ。」

ライラが今度はミリオンに言う。

「コイツはエリックだ。王立魔法研究所の奴さ。」

「えっ、あ、初めまして。」

ミリオンが丁寧に挨拶した。

「こちらこそ、初めまして。」


「リザードマンから女の子に乗り替えたのかい?」

「いや、コイツはただの元殺し屋だ。」

「ほぅ、それは中々に物騒だね。」エリックは特に驚くことなく答えた。


「そう言えば・・・」

商品を棚に戻したライラがミリオンを見る。

「ミリオン、お前魔法使えるのか?」

「え・・・分からない。今まで使えるかなんて考えた事無かったわ。」

「そういうもんって簡単に調べられるもんなのか?」

今度はエリックに尋ねた。

「ああ、出来るよ。調べてみるかい?」

「今後の事を考えると知っといた方が良いんじゃないか?」

「じゃ、じゃあ、お願いします。」

「了解。じゃあ準備しとくから、買い物が終わったら研究所においで。」

そう言ってエリックは去っていった。


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