第71話 黒衣の鳥獣
突進を繰り出したグリフォンを2人は左右に跳んで避ける。
ライラは即座に追い掛け、背後から攻撃を狙うも、グリフォンはそのまま飛び立ち、攻撃は外れた。
体を反転させたグリフォンが大きく羽ばたき、風により怯んだライラに向け、爪を振り下ろす。
その時、横から飛んできた光弾が当たり、爆発の反動でグリフォンの腕を横に弾いた。
ライラは反撃に乗り出したが、爆風の中から鋭い嘴が現れ、ライラを狙う。
すんでのところで下がって躱したライラだったが、直後に横から現れた翼がその身体を捉えた。
「がはぁ!」
そのまま側方へ吹き飛ばされ、岩に激突する。
後ろに回り込んだディケンズがグリフォンの後脚に目掛けて斧を振りかぶる。
気付いたグリフォンが両脚を後方へ蹴り上げる。
ディケンズは斧の腹で咄嗟にガードするも、そのまま後ろへ飛ばされた。
ディケンズは飛ばされながらも、思い切り斧を投げつける。
しかし、グリフォンが風を纏い、斧は弾き飛ばされた。そのままグリフォンは宙へ飛び上がる。
倒れながらもソールオングルを構え、倒れると同時に重心を安定させたディケンズが光弾を放つ。
放たれた光弾は飛び始めたグリフォンの翼に当たって爆発し、バランスを崩して落下する。しかし、地面に落ちる前に態勢を整えて、ディケンズの方を向いて着地した。
光弾によって翼に火が着いたが、再び風を纏い、火を掻き消した。
立ち上がるのが遅れたディケンズの向け、グリフォンが風ブレスを放とうとした時、横から走り込んできたライラが顔面にドロップキックを喰らわした。
一瞬怯んだグリフォンだったが、すぐに爪でライラを鷲掴みにして、飛び立つと同時にディケンズに向けて投げつけた。
ディケンズは踏ん張り、ライラを受け止めた。
「大丈夫か?」
「ああ、済まねぇ。」
「厄介な野郎だな・・・」
グリフォンが空中で翼を広げ、雄叫びを上げると竜巻が発生し、二人に向かっていく。
「くそっ!」
ライラは街道沿いに生える木に駆け登ると枝にしがみついた。ディケンズは走りながら飛ばされていた斧を拾うと木を切りつけ、刺さった斧を握り、尻尾を木に巻き付けて備えた。
竜巻が直撃するも2人は必死にしがみつき、何とか耐えた。
しかし、そこへグリフォンが空から強襲する。
グリフォンの体当たりはディケンズを吹き飛ばし、木をへし折った。
ライラはグリフォンがぶつかる前に手を放し、竜巻に巻き上げられるも、そのまま上空からグリフォン目掛けて剣を構えた。
グリフォンの背中に剣が突き刺さり、一瞬怯むも大きく暴れ出した。ライラは剣から手が離れ、再び吹き飛ばされる。
転がるも受け身を取り、すぐに立ち上がったライラは手を翳す。
竜巻で巻き上がった微量の砂を搔き集めて玉を作りだし、グリフォンの顔目掛けて放った。
顔に直撃し、目潰しを喰らってグリフォンは更に怯む。
「ディケンズ!」
「任せろ。」
既にソールオングルを構えていたディケンズは頭部を狙って光弾を放った。
グリフォン目掛けて光弾が飛んでいくが、音や気配で察したのか、後方に跳んで下がる。
咆哮を上げながら、大きく翼を羽ばたかせると、グリフォンの身体を一際激しい風が包み、光弾を弾き返した。
「マジかよ!」
ライラ達は左右に分かれて逃げ、光弾は2人の間に着弾し爆発を起こした。
「ライラ!」
ディケンズの呼び掛けにライラが見ると、目で近くの岩を指していた。
次の瞬間、ディケンズは地面に向けて光弾を放ち、爆発の砂煙で視界を塞ぐ。
その隙に急いで岩の裏へと隠れた。
「どうする?」ディケンズが言う。
「砂漠の方まで逃げれねぇか?ここじゃあ、まともに魔法が使えねえ。」
街道沿いの地面は硬い土である。多少は砂も混じっているが、砂漠に比べると、砂魔法使いにとっては良い環境ではない。
「駄目だ。砂漠に出ちまったら救援の連中が見つけられねぇ。」
ライラが岩影から顔を覗かせ、グリフォンの様子を見る。
「なら宿泊所の辺りまで退くか?ここよりは遮蔽物がある。」
「それもありか・・・」
「いや、駄目だな。」ライラは自分の意見を否定した。
「あぁ?」
「見ろ。」
ディケンズが覗くと同時にライラは岩影から飛び出し、グリフォンへ向かい走り出した。
ディケンズの視線の先、2人を見失ったグリフォンは、
脚を負傷し動けないモウズに狙いを定めていた。
「ちぃ!」
ディケンズは舌打ちしながら、モウズとグリフォンの間を狙い、光弾を放つ。
グリフォンが動きを止めた所へライラが切りかかるも、スッと飛び上がり、これを躱した。
「アタシが引き付ける!モウズを運べるかぁ?」
「やってみる。」
ライラが攻撃を仕掛け、注意を引く間にソールオングルから鎖を引き出しモウズの体に巻き付けた。
「済まねぇが、少し耐えてくれ。」
そう声を掛けたディケンズは鎖を引っ張り、先程の岩影までモウズを移動させた。
カモフラージュにローブを被せ、ディケンズもグリフォンの元へ向かう。
「大丈夫か!」
「いや、だいぶヤベェなっ!」
グリフォンを攻撃をギリギリ避けたライラが言う。
「兎に角、救援が来るまでは回避に徹するしかねぇな。」
2人は攻撃を捨て、攻撃を躱し続ける。しかし、攻防が続くにつれ、それすらも難しくなっていった。
グリフォンは強靭な翼と風魔法の力により、その巨体と裏腹に素早く、回避に徹していた2人さえ、徐々に追い詰めていく。
「し、しまった!」
一瞬の隙を突かれたライラが上空に吹き飛ばされる。
ライラは手を翳すも、舞い上がった砂だけでは落下のダメージを防ぐのは無理だった。
「くそっ!」
「ライラっ!掴まれっ!」
ディケンズは叫ぶと、ライラの下方に向けて鎖を放つ。
鎖が岩壁に突き刺さり、ライラの下に綱渡りのように一本の鎖が通る。
ライラが両手で鎖を掴む。衝撃で鎖が弛み、ディケンズが踏ん張った。
地上とはまだ多少、距離があったが、着地に問題がある距離ではなかった。
グリフォンはちらりとライラを見た。
着地のタイミングを狙うのか思われたが、踏ん張って動きを止めるディケンズに狙いを変えて、口から風のブレスを吐いた。
ディケンズが風に煽られ、バランスを崩す。
「くそぉ!駄目だ!」
吹き飛ばされて、ソールオングルから手が離れ、鎖が暴れた。
「おわぁ!」
ライラは投げ出され、地面に落下するも何とか受け身を取った。すぐに立ち上がり、グリフォンを向く。
その時、ディケンズがうめき声が聞こえてきた。
吹き飛ばされて倒れるディケンズの脇腹には、先程折られた木の枝が突き刺さっていた。
「ぐっ・・・がはぁ!」
「ディケンズ!」
助けに走るライラの前にグリフォンが立ち塞がる。
「てめぇ・・・」
「放てっ!」
声と共に後方から数本の火矢が飛ぶ。
グリフォンは翼で払い退けるも何本かが刺さり、火が着いた。
ライラが振り返ると、そこにはバアル率いるベールズの狩人と兵士たちがいた。
「無事か?」
「いや、ディケ」
その言葉を遮るようにグリフォンが雄叫びを上げ、風で火を消した。
「バアル。」
「ああ。」
バアルが手を翳し、兵士たちも再び火矢を構えた。
バアルの前に火球が現れる。
グリフォンは動きを止め、全員を睨み付けるようにゆっくりと見渡した。
兵士たちも動きを止め、その場に緊張が走る。
その時、後方からミリオンが赤い小さな玉を投げつける。
地面に落ちた玉は弾けて、小さな炎が上がった。
それを切っ掛けに全員が放つも、後方に下がりながら飛んだグリフォンは強風を放ち、全てを弾き返した。
しかし、そのままグリフォンは空高く飛ぶと、海の方へと飛び去っていった。
「分は悪いと踏んで退いたか・・・賢いな。」
グリフォンが飛び去った方を見ながらバアルが言う。
「また来るでしょうか?」
「恐らく無いだろうが、警戒はしておいた方がいいかもんしれんな。」
「救護兵はいるか?ディケンズを診てやってくれ。」
バアルたちの会話をライラが遮る。
「まずいのか?」
「あんまり良くは無さそうだ。」
「応急処置だけして、街へ急ごう。」
「ああ、そうしてくれ。」
そうして一行はグリフォン調査の一部の兵を残し、国境の街ベールズへと移動した。




