表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/54

1. 現実主義(4)

 翌日ユキは予定通り、朝から愛馬のスノウのお世話をしていた。久々スノウの毛並みをリズム良くブラシしていると、悶々としていた心も少し晴れるような気がしていた。

 そこへ厩舎の木戸がガタンと開いた。

 トトが飼葉を持って来たのかと思ったら、アルスだった。


「あ……おはよう、アルス。こんなに朝早くから厩舎にまで来るなんて。……忙しいのにググンに怒られるよ」

 ユキは努めて明るく振る舞った。


「どうしたもこうしたも無いだろ? このままじゃ仕事も手に着かない」


 やはり昨日の事は誤魔化せなかったのだとユキは悟った。

 



「昨日はごめんね。怒ってるの?」

 厩舎の外の柵に手をかけて、ユキは隣に立っているアルスの顔を伺った。薄暗い厩舎では気付かなかったけれど、思った以上にアルスは仏頂面だった。


「どうして嫌なんだ? 俺に触られるのが嫌なのか?」

 アルスらしいストレートな質問だった。


「そんな事無いよ。アルスの事は好きだから。……たださ、私たち出会ってから4ヶ月しか経ってないんだよ? そんなに急がなくても、ゆっくりお互いの事を理解しあって行けば……」


「それは嫌だ。十分時間は過ぎた。側にいれば俺はこうせずにはいられない」

 アルスがユキの頬にそっと手を当てる。

「今すぐにでも俺の妃になれ」

 アルスの空色の瞳がまっすぐユキを見つめる。ユキの顔が一瞬で赤く染まる。


「そ……そんな急に答えなんて出せないよ。困る」

 

 ユキがフイとアルスから目を逸らし横を向いた。ユキの頬が手の平から離れてしまい、行き場を失った左手をアルスは仕方なく柵に乗せ、そのままもたれかかった。


「困らせたいわけじゃない。……俺はどうしたらいい? ユキはどうしたいんだ?」

「もう少し心の準備ができるまで、このままでいたいの。……ダメ?」

 

 アルスは大きくため息をついた。

「その答えは一つしかないじゃないか。俺は待つしかないんだ」

 

 アルスは柵に肘をつくとがっくりと横目でユキを見た。ユキはおずおずとアルスの横にくっつく。


「あのね、アルスの事本当に好きなんだよ」

 ユキが一応念を押しておく。

「こういうのを止めろよな」

 アルスが赤くなってユキのおでこを小突いた。


 ふわりと笑ったユキの顔を見つめる。


「……ああ、もう一つ答えがあったな。待ってなどやらない。無理矢理というのも悪くないな」

 アルスがユキの後ろから両手を柵に付きユキを逃がさない様に、囲い込んだ。


「やだ! 退いてよ」

 ユキが慌ててその手を外しにかかる。


「冗談だよ」 

 いたずらっぽく笑うと柵から手を離し、そのままユキをギュッと抱きしめた。


「これは別にいいだろ?」


「……うん」


 体を離すと少しかがみ込んでそっとキスをする。


「これも……?」


「……うん」


 アルスはそのままユキの瞳を見つめる。


 ――――これは、私の方がほだされちゃう!


「ユキ様-! 飼い葉お持ちしましたよー!」

厩舎の方からトトの声がする。

「今行く-!!」

 ユキはこれでもかと大声でトトに返す。

「じゃあ、アルス。またね!」

 そう言うやいなや、アルスの返答を待たずに厩舎へと走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーセント・ムーンの獣→「未完のレガシー」→彼方からの手紙・・・1作目「ルーセント・ムーンの獣」2作目「未完のレガシー」3作目「彼方からの手紙」になります。よければシリーズを通してご覧ください。 ドラゴン・ストーン~騎士と少女と失われた秘法~新作もよければご覧ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ