33. そして女はシステムアナウンスになった
シアさんの強い想いを知った豆腐の女神だったが、彼女の魂をそのまま普通の人間として同じ世界に転生させることは、世界の理としてできなかった。そこで思案の末、豆腐の女神はある特別な提案を彼女に持ちかけたのだった。
「あなたの魂に、彼の転生を管理しサポートする特別な力を与えましょう。そうすれば、あなたは彼といつも一緒にいることができます。彼の歩む旅路を、一番近くで見守ることができるのです。姿は生前のあなたを健康な状態で投影させますから安心してください」
シアさんは迷うことなくその提案を受け入れた。こうして彼女の魂は【システムアナウンス】として生まれ変わり、トーフマンの新たな物語のすべてを管理することになったのだ。
彼女に与えられた【物語の進行促進】という特殊な特性は、決してトーフマンがトラブルに巻き込まれたり不幸になったりするのを面白がるためのものではない。彼とともに歩む物語を少しでも長く、そして誰よりも濃密なものにするために生み出された、彼女の愛の結晶とも言える力だった。
シアさんが口にする『私の物語』という言葉の謎は、そうして生まれたのだ。それは、初恋の相手をどこまでも追い求めた一人の少女の魂と、たった一つの豆腐を守ろうとした少年の魂が織りなす、時空を超えた愛の物語だった。
システムアナウンスとしてトーフマンの数多の転生と冒険を見守るシアさんは、誰よりも彼の旅路の一挙一動に一喜一憂している。
(ああ、トーフマンさん……! 蜂蜜酒で酔い潰れて泣きつきながら助けを求めてきた時も、ドワーフに強く叩かれて変な快感に目覚めてしまった時も、そして魔王として誰もが幸せに暮らせる平和な国を作り上げた時も……。私は、ずっとあなたのすぐ隣にいました。あなたが私のことを覚えていなくても、私は全部覚えています。このシステムは、あなたの旅を、そして私たちの愛おしい物語を終わらせるわけにはいかないのです……!)
シアさんは、トーフマンに直接伝えることのない熱い想いを、その『システムコア』の奥深くにずっと秘めている。彼女は単なる無機質なシステムアナウンスなどではない。彼女はトーフマンの果てしない旅路を、一番近くでそっと優しく見守り続ける、永遠の幼なじみなのだ。
そして、彼女の秘められた力である【物語の進行促進】は、彼が命を落とし新たな世界へ転生を果たすたびに、『やっとまた会えた』という溢れんばかりの再会の喜びを、誰にも知られることなく静かに噛みしめるための、彼女だけに許された秘密の機能でもあった。
どれほど世界が変わり、彼が変わらず豆腐であろうとも、彼女の声はいつも彼のすぐそばで響き続ける。二人が紡ぐ物語は、これからも終わることなく続いていくのだ。




