25. そして男は伝説の宝具『豆腐槌マルドゥク』となった
俺が物思いにふけっている間に、ドワーフ鍛冶師はさらに集中力を高め、魂を込めてハンマーを振るい続けていた。
そして、数えきれないほどの打撃の後、俺の体はついに完成した。
俺の姿は、もはや四角い豆腐ではなかった。
淡く光を放つ、美しいミスリル豆腐の槌となっていた。
柄は最高級のミスリルでできており、豆腐の形をした槌頭は、触れるものを癒やすような温かさを放っている。
ドワーフ鍛冶師は、その槌を誇らしげに掲げ、高らかに叫んだ。
「ついに完成したぞ!伝説の宝具豆腐槌マルドゥク!その一撃は大地を割り、山を砕く!今こそ、その威力を試す時だ!奴に、鉱山の主に、俺の力を見せつけてくれるわ!」
ドワーフ鍛冶師は、マルドゥクを片手に、鉱山の最深部へと向かった。
(おいおい、ドワーフの国にまで来たからまさかなとは思ってはいたけれど、やっぱり俺は戦いから逃れられないのかよ……! マッサージは気持ちよかったのに、武器の運命からは逃れられないのか……!)
トーフマンは諦めに似た悲痛な叫びを上げた。
そして、ドワーフ鍛冶師が、鉱山の奥底にいるという巨大な敵と対峙したとき、マルドゥクの真の力が解放されるのだろうか。
ドワーフ鍛冶師は、伝説の宝具『豆腐槌マルドゥク』を両手に携え、鉱山の最深部に足を踏み入れた。
その先に待ち構えていたのは、この鉱山の主にして、ドワーフたちが何世紀にもわたって恐れてきた存在、クリスタルジャイアントゴーレムだった。
ゴーレムの全身は、まるで夜空の星を閉じ込めたかのような、美しいがどこか禍々しい輝きを放つ巨大なクリスタルでできていた。
その巨体は坑道の天井に届くほどで、一歩踏み出すたびに大地が揺れる。
(うわ、デカい!こんなのと戦うのかよ!豆腐の俺が!というか俺、武器になってるんだよな!? まさか、この癒やしの力で、ゴーレムの肩こりを治せってことか!?)
トーフマンは恐怖に震え、思わず身をすくませた。
しかしその瞬間、体の奥底から、どうしようもないほどの力が湧き上がるのを感じた。
それは、まるでドワーフの鍛冶師の熱い魂と、ミスリル豆腐の槌の力が共鳴しているかのようだった。
「…行くぜ、マルドゥク!」
ドワーフ鍛冶師は叫び、ゴーレムへと駆け出した。
ゴーレムは、その巨大な腕を振り回し、岩盤を砕きながら攻撃してきた。
「くっ、避けろ!右だ!右に避けろ!」
俺は心の中で叫んだ。
すると不思議なことに、鍛冶師は俺の声を聞いたかのように、ゴーレムの攻撃を軽やかにかわしていく。
「うおおおおおお!!」
ドワーフ鍛冶師の気合の叫びと共に、俺の体が振り上げられる。
ゴーレムのクリスタルの拳が、俺めがけて迫ってきた。
「ふぬぬぬぬぬぬ!」
ドワーフ鍛冶師は渾身の力を込め、ゴーレムの拳を打ち払った。
ゴォンッッ!
硬いクリスタルと豆腐槌がぶつかり、甲高い音が坑道全体に響き渡る。
ゴーレムの拳にはひびが入り、ドワーフ鍛冶師は後退した。
『そこだ!いけ!やれ!ゴーゴー!』
その時、シアさんの声が聞こえた。
いつもの冷静な口調とは打って変わって、熱のこもった応援だ。
『おら、そこだ!ひび割れを狙え!あんたの打ったマルドゥクを信じて!』
(お、おいシアさん。口が悪くないか? まさか実況でもしてるつもりか!?)
トーフマンは、戦いの最中だというのに、そんなことを心の片隅で思っていた。
ゴーレムの動きが鈍くなったその隙を突き、ドワーフ鍛冶師は俺の体を振りかざしてゴーレムの後方へと回り込んだ。
「今だ!食らえぇぇぇ!!」
ドワーフ鍛冶師は、ゴーレムの唯一の弱点である後頭部に向かって、俺の体を全力で叩きつけた。
ガッシャアアアアアン!!
クリスタルが砕ける、耳をつんざくような激しい音が響く。
ゴーレムは動きを止め、その巨体から光を失った。
やがて、その全身が崩れ落ち、無数のクリスタルの破片となって床に散らばった。




