23. そして男は自虐ネタに悶絶した
それよりも、トーフマンは気がかりなことを聞いてみる。
「あのさ、俺、蜂蜜酒の樽の中で、変なこと言ってなかったかな? ろれつが回ってなかったのは覚えてるんだけど……まさか、自分の恥ずかしい秘密とか変なこと言ってなかったか?」
トーフマンは、最後の記憶が朦朧としていたため、自分の口からとんでもない暴露をしてしまったのではないかと、豆腐の全身で冷や汗をかくような羞恥心に襲われていた。
(しあしゃんとか、言ってた気がする……! 頼む、全部夢だったと言ってくれ!)
そのトーフマンの必死な声と、顔を真っ赤にして縮こまる姿(豆腐なので表情は出ていないが、システム的にそう認識できた)が、シアさんにはあまりにも可愛らしく見えた。
彼女の銀色の瞳が、再び笑いの感情で波打ち始めた。
『ふふ、あは……っ、ええと……』
シアさんは咄嗟に口元を抑え、喉の奥で「しにゃさ〜ん」という音が反響するのを必死に押し殺した。
システムコア内部で、彼女の感情データがオーバーヒート寸前の警告を鳴らしている。
(いけない!ここで全部話したら、彼の自尊心が完全に砕けてしまう!でも、あの「よーわい」というなぞかけは、システム上、記録すべき名言よ!)
シアさんは、システム管理者としての冷静な判断と、トーフマンをいじりたいという衝動の間で激しく葛藤した。
「おい!早く教えてくれよ!頼むから、笑うな!」
トーフマンの切羽詰まった声に、シアさんは深呼吸をして、どうにか平静を取り戻した。
『フフッ……心配はいりませんよ、トーフマンさん。あなたが言っていたのは……ええと、なぞかけですね。ただ、最初に言った「凝固と麹が大事」というものは、残念ながら論理的に成立していませんでした』
シアさんは、事実を曲げず、しかし最も致命的な部分をあえて隠した。
「だ、だよな!酔っぱらいの戯言だ! よかったぁ……」
トーフマンが心底ホッとした瞬間、シアさんは続けざまに、わずかな意地悪を込めて告げた。
『ですが、その後に「どっちも弱い」と答えを変えたなぞかけは、見事でしたよ。「豆腐の弱い体質」と、「次の転生先(ドワーフの国)の過酷さ」を見事に捉えていましたから。拍手!』
シアさんの声は、今度こそ完全に落ち着いていた。
「な、なんだよそれ……弱さの自虐ネタかよ……」
トーフマンは恥ずかしさで悶絶したが、自分のなぞかけが転生先の運命を暗示していたことに気づき、戦慄した。
俺の体は、前回までの心地よい花の香りや、清らかな水の感触はどこにもない、熱と錆びた鉄、そして石炭の焦げた匂いに包まれていた。
耳には、金属を叩く甲高く、狂騒的な音と、ドワーフたちの荒々しい怒号が響いている。
全身を包み込むのは、硬く、冷たい岩肌の感触。
俺は薄暗い坑道の中、粗削りな岩に穿たれた棚の一つに、包装されたままポツンと置かれていた。
「ドワーフの国か……。今度は食べるためじゃなくて、なんかすごい武具にでもなるのか? 俺が剣の材料になるのか?」
『おや、お気づきになりましたか? 流石ですね、トーフマンさん!』
シアさんが楽しそうに笑う。




