21. そして男は謎かけをした
トーフマンは、酔いと絶望で、同じ言葉を繰り返す。シアさんは、そんなトーフマンの様子を、まるで珍しい生き物でも観察するかのように、じっと見つめていた。
『ふむ……これは、なかなか興味深いデータが取れそうですね。しかし、このままでは物語の進行に支障が出ます。よし、転生を早めましょう』
そこに、酩酊極まりないトーフマンの声が聞こえてくる。
「ひや! わきゃ、ういっ! らさ〜、し、にゃ〜、しゃん! なー、なぞかけ、しゅるでしゅ!」
『え? なぞかけ?急になに!?』
シアさんは予想外の展開に、わずかに警戒した。
「あるこーるにしゅけらえた とーふとかけぇまちて、しゅぎのてんしぇーしゃきととぅく!」
『その心は?』
シアさんは酔っ払い語に戸惑いながらも、翻訳処理を即座に行い、システム上のの定型応答を返した。
「どっちも『こーじ(凝固・麹)』がだいじでしゅ!」
『……は?』
シアさんは一瞬、その意味を処理できず、沈黙した。
「えっと、アルコール漬けされた豆腐と掛けまして次の転生先と解く、でしたよね? その心は、どちらもこーじ(凝固・麹)が大事って……ぷっ、どこがどうかかってるんですか?……ってそれより、しにゃ〜って誰ですか? しにゃ〜って私ですか? あは、あははは、はははは」
「凝固」と「麹」という、ロジック無視の呂律が回らないこじつけに、シアさんのシステム的な冷静さは一気に崩壊した。
『こーじは凝固と麹のこと? ぜんぜん整ってないじゃないですか!? ふふっ』
システム管理者として正確なツッコミを入れつつも、堪えきれない笑いが噴き出し、シアさんは呼吸をするのも大変なほどむせるように笑い始めた。
「しょれにゃら、どっちみょ『よーわい』でしゅ!」
『……おぉ!』
シアさんはトーフマンの核心をついた答えに感嘆のため息をついた。
「よーわい(弱い)」という言葉は、呂律の回らないトーフマンにとって発音しやすく、また彼自身の「豆腐縛り」という存在の不安定さ(豆腐は崩れやすい=弱い)や、酒に弱い体質(人間時代の特性)と現状を自虐的に表している。
シアさんは、まだ告げていない次の転生先―酒豪として知られる種族の国―を思い浮かべ、「酒に弱い者が酒の強い者の国へ」という運命の皮肉を悟った。
『自虐ネタとしてだいぶ整ってると思います。よくできました。拍手! ぱちぱちぱちぱちぱちぱち』
「しあしゃん……おぉぉれ……みょう……だみぇ……でしょ?……」
という、ろれつの回らない声が耳に入った。
この強烈な話し方を聞いた瞬間、シアさんの表情がくしゃりと崩れた。これまで見たこともないような、笑いを堪えきれない顔だ。
「なんですか、その、しょ?って? どうして疑問形なんですぅ? ぷっ、あは、あはははは。どっ、どっから、どう聞いても、酔いつぶれてますよ? おほ、ほほ、と、トーフマンさん。ぷくく、ふふ、あはははは」
堪えきれない笑いが噴き出し、シアさんは呼吸をするのも大変なほどむせるように笑い始めた。




