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同じ街にいた君

朝から空はよく晴れていた。


「……暑い。」


部屋のカーテンを開けた瞬間、結衣は思わずそう呟いた。


窓の外では、蝉が元気よく鳴いている。


夏が近づいているのを感じる朝だった。


今日は久しぶりに予定のない休日。


宿題も昨日のうちに終わらせたし、見たいアニメも夜までない。


ベッドの上でごろごろしながらスマホを眺めていると、通知が鳴った。


『おはようございます!』


みおりんからだった。


結衣の口元が自然と緩む。


『おはよう! 今日は休みだからゆっくり寝ると思ってた。』


『珍しく早起きしました!』


『えらい。』


『褒められた!』


『今日は何か予定あるの?』


送信すると、少しして返事が来る。


『まだ決めてないですー。家でゴロゴロするかも。』


『私もそんな感じ。』


『でも、グッズ見に行きたい気持ちもあるんですよね……。』


『分かる。急に行きたくなる時あるよね。』


『あります!!』


その一言に、思わず笑ってしまう。


本当に、趣味が合う。


結衣はベッドから起き上がり、時計を見る。


午前十時。


少し考えてから、スマホを打った。


『私、今日アニメイト行こうかな。』


送信。


『いいですね!!』


『新しいグッズも出てるらしいし。』


『私も行きたくなってきた……。』


『行っちゃえば?』


『うーん……悩む。』


そんな会話をしながら、結衣は制服ではなく、白いTシャツとデニムに着替え始めた。


休日の外出。


少しだけ気分が上がる。


「よし。」


鏡の前で髪を整え、スマホと財布を持って部屋を出た。


――――――


昼前。


結衣はアニメイトへとやって来ていた。


入口の前には、同じようにグッズを買いに来た人たちが何人もいる。


「やっぱり人多いなぁ。」


店内に入ると、見慣れた空気に少し安心する。


新刊コーナー。


アニメグッズコーナー。


そして、今月発売された『星空クロニクル』の新商品が並ぶ棚。


「……!」


結衣の目が輝いた。


アクリルスタンド。


缶バッジ。


キーホルダー。


新しいイラストのグッズがたくさん並んでいる。


「可愛い……。」


気づけば、かごを持って商品を眺めていた。


結局、予定より少し多めに買ってしまった。


レジを済ませた後、店内をもう一周する。


ふと、入口近くの展示コーナーに目が止まった。


大きなポスター。


限定のパネル。


とても綺麗に飾られている。


「これ、SNSに載せようかな。」


スマホを取り出し、一枚だけ写真を撮る。


パシャ。


うまく撮れた。


その場で投稿する。


『アニメイト来た! 星クロコーナー最高……!』


写真付きで投稿してから、満足そうにスマホをしまった。


それから少し買い物をして、帰路についた。


――――――


夜。


夕飯を食べ終わり、自分の部屋へ戻る。


スマホを開くと、みおりんから通知が来ていた。


『おかえりなさい!』


『ただいま。』


『アニメイトどうでした?』


『楽しかった! ちょっと買いすぎたかも。』


『いいなぁ……。』


『結局行かなかったの?』


『行かなかったです。』


『そっか。』


『でも、写真見てたら余計行きたくなりました。』


『今度行くといいよ。』


『ですねー。』


しばらく他愛のない話をする。


すると、数分後。


一枚の写真が送られてきた。


「……ん?」


結衣はその写真を開いた。


そして。


「え?」


思わず声が漏れた。


写っていたのは、アニメイトの展示コーナー。


大きなポスター。


限定のパネル。


見覚えのある景色。


いや——。


見覚えがあるどころではない。


さっき自分が撮った写真と、ほとんど同じ場所だった。


結衣は慌てて自分の投稿を開く。


写真を見比べる。


ポスターの位置。


パネル。


周りの棚。


全部、一緒。


『……これ。』


『はい?』


『今日撮った写真?』


送信すると、すぐ返事が来た。


『そうですよ!』


「……え?」


結衣は目を瞬かせた。


今日?


でも、さっき「行かなかった」って……。


すると、次のメッセージが届く。


『前に撮ったやつです! なんか見返してたら出てきました。』


「あ……。」


少しだけ安心する。


でも。


同じ景色。


同じ展示。


それって——。


『もしかして……。』


指が止まる。


少し迷ってから、送信した。


『そのアニメイトって、どこにあるの?』


送信した瞬間。


胸が少しだけ高鳴った。


もし違ったら、ただの偶然。


でも。


もし同じだったら——。


スマホの画面を、じっと見つめる。


数秒後。


『えっ。』


『……?』


『もしかして、先に言わない方がいいですか?』


『なんで?』


『いや、なんとなく……。』


その返事に、結衣は少し笑う。


『じゃあ、ヒントだけ。』


『ヒント?』


『住んでるところ、県じゃなくて市だけ言うとか。』


『なるほど……。』


数秒後。


『……星見市です。』


「……え?」


思わず画面を見つめる。


星見市。


それは、自分が住んでいる町の名前だった。


冗談かと思って、もう一度見返す。


でも、間違いない。


『……私も、星見市。』


送信した瞬間、すぐに返信が来た。


『えぇぇぇぇ!?』


『ほんとに!?』


『うん、本当に。』


『待ってください、じゃあ……今日投稿してたアニメイトって……。』


『もしかして、駅前のアニメイト?』


数秒後。


『えっ。』


『えっ。』


『同じです!?』


『……たぶん同じ。』


スマホを持つ手に少し力が入る。


同じ市。


そして、同じアニメイト。


偶然が重なりすぎている。


『すご……。』


『こんなことあるんですね……。』


しばらく二人とも驚いたまま、メッセージが止まった。


やがて。


『もしかしたら、今までどこかですれ違ってたかもしれませんね。』


その一言が送られてくる。


結衣は思わず画面を見つめた。


すれ違っていたかもしれない。


同じ店で。


同じ棚を見て。


同じグッズを手に取っていたかもしれない。


そう思うと、不思議な気持ちになる。


『そうかもね。』


『なんか急に近く感じます。』


『私も。』


送信すると、すぐに返事が返ってきた。


『……あの。』


『うん?』


『せっかくだし、今度アニメイトで会ってみませんか?』


その一文に、胸が小さく跳ねた。


ついに。


画面の向こうの「みおりん」と、本当に会う日が来るのかもしれない。

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