「異音」
《主人公視点》
「私がコション子爵家が息子、ロイフ=コションだ。家名がコションであることはあまり触れないでもらえると助かる」
「ふ...っ」
わざとやってる?
最後の部分にもう一個付け足されていたら吹き出していたかもしれない
だって家名が「豚」だったし
それを承知であんなことを言うだなんて
貴族って案外僕らと変わらないのかも?
「そこのお前」
ん?誰のことを言っているんだろう?
「おい、お前だ、お前」
なんか僕のことを指さしているような気がする
...一応僕ですか?という意味を込めて自分を指差す動きをしてみる
「そうだお前だ」
僕だったらしい
「後で私の部屋に来い。話がある」
うわぁ。めんどくさそう
逃げようかな?
「逃げたら鞭打ちの刑にするぞ?」
「絶対逃げませんハイ」
...見抜かれて釘さされちゃった
なんで分かるの?
〈〜〜〜〉
《貴族の嫡男視点》
「ふむ...」
エレス、か
従者が調べた有能な者リストには入っていなかったが、この村で最も“有能な”のはあの者だろう
私が名乗った家名“コション”の意味を理解しているからこそあそこで笑ったのだろう
あの者以外に笑った者を“ただの一人も”いなかったからな
あの者以外はだれも理解していなかったと見える
それはそうだろう
なにせコションが豚を意味するのは
「隣国の言葉でだからな」
いまからあの者を手に入れ、じっくりと手駒に仕立て上げながら隣国の言葉も教えれば私個人が所有する通訳として使えるだろう
「ああ、待ち遠しいな」
今に見ていろ王都の老害ども
いずれ私の元に跪かせてくれる...!
〈〜〜〜〉
《主人公視点》
「主がお呼びです。着いてきてください」
わあ、本でしか見たことないような燕尾服
これが執事かぁ
「分かりました。...今すぐですか?」
「ええ。しかしそのままは失礼にあたりましょう。早く着替えてきてください」
ああ、畑仕事の後の泥だらけの服を洗えずに貴族の坊ちゃんが来ちゃったから今乾いた泥まみれの服なんだった
「替えの服なんて奴隷村の子供にあるとお思いで?」
あ、カチンときて言い返しちゃった
不敬になるかなこれ?
「...洗ってきてください」
「かしこまりかした」
さて、さっさと洗っちゃおう
〈〜〜〜〉
《貴族の嫡男視点》
「ロイフ様、お連れいたしました」
やっと従者が戻ってきた
「遅い」
呼んでからどれだけ経ったと思っている!
「申し訳ありません」
「御託はいい、さっさと入れ」
ただでさえ貴重な時間を無駄にしているんだ
これ以上浪費してたまるか
「失礼致します」
従者と一緒に入ってきた子供を、正確にはその“髪を見て”気づいた
「お前、隣国の生まれか」
うっすらと赤いメッシュが入った髪をしている
それならば隣国の言葉が分かるのも当然と言えるだろう
「正確には隣国生まれの母とこの国生まれの父の間に生まれました」
発言を許した覚えはないが...
まぁ平民なのだ。少しは我慢に懐の広さを見せるのもまた貴族の責務
「ふむ...身の上を話してみろ」
「母は23、父は25、母は隣国の商人の娘でしたがこの国の貴族相手に商談を行っている時に大きな契約締結の条件として妾になることを強要され拒んだところ奴隷にさせられたそうです」
よくある話だな
「続けろ」
「父は乗合馬車の御者をしていましたが自身の馬車が故障しており、貴族を乗せた際に揺れが大きかったことで目的地に着いたところで馬車から降ろされ私兵からリンチを食ら...んんっ!私兵から体罰を受けさらに指輪を盗んだと冤罪をかけられ奴隷に落とされたそうです」
...隣の領のラジュール男爵とその子息が夜会で楽しそうに話していた話によく似ているな?
「そうか、では本題に入ろうエレス。私の下につく気はないか?」
平民にとっては垂涎物の話だろう?
泣いて喜べ
平民にはそれがお似合いだ
母を殺した平民など...!
「...お断りします」
〈〜〜〜〉
《主人公視点》
「お断りします」
やだしそんなめんどそうなこと
今の暮らしがなくなるなんて考えられない
カイラやアリス、エイドと離れ離れにもなりたくないし
「...なぜだ?奴隷という身分から解放される上、職にまでありつけるのだぞ?お前らには過ぎたる褒美だろう?」
悪い人じゃないかもと一瞬でも思ったのが間違いだったかな?
やっぱり父さん母さんの言う通り貴族なんてこんなものだ
「...断ったこと、後悔しないんだな?」
「ええ。そんなことありえません」
キッパリと断言する
これであきらめてくれるでしょ!
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