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亡霊に取り憑かれた王女  作者: 曉月 栞


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リアが海岸へ辿り着いた時

 リアが海岸へ辿り着いた時、ジョナサン号は丁度ゆるやかに地を離れたところだった。それでもリアは、何とか追いつこうとざぶざぶと海へ入って行く。


 「待て――っ!!」


 突然後ろから現れた美少女に、船を見送っていた二人の男はポカンと口を開けた。リアは船を追い駆けながら、顔を見合わせている二人を振り返った。


 「あの船を止めろ!!仲間が殺されるぞ!!」


 「…………は?」


 男二人は呆けたように目を白黒させている。しかし、突然はっと何かに気付いたように無我夢中で海へ飛び込んだ。二人とも小柄な初老の男だが、抜き手を切って泳いで行く。そしてついに、ジョナサン号が回収しているロープの先端を掴み取った。


 「でかした!!」


 リアも彼らに追いつきロープをぐっと手繰り寄せた。


 「しっかり持っててくれよ!仲間を助けて来るからな!」


 二人の男にそう言い捨てて、リアはぐいぐいとロープを伝って行った。






     ★★★






 ジョナサン号もこちらの動きに気付いたようで、もうそれ以上船を漕ぎ出そうとはしなかった。リアが船に近付くにつれて、ざわざわとした船内のざわめきが聞こえてくる。


 ……王女か?王女だ?まさか?どうする……?


 リアが船に噛り付き、えいやっと甲板に踊り出ると、驚愕した面々が彼女を注視していた。睨み合う彼等をよそに、ギコギコと船が上下する音だけが続いている。


 「まさか……王女か?」


 体格のいい男の一人が口を開いた。


 「それもう聞き飽きた。」


 リアは冷たく言い放った。


 「他に誰がいるってんだ?一つ聞きたい。ボウリ様とは何者だ?それに答えたら命だけは助けてやる。」


 そう言いながらリアは静かに抜刀した。対する男達も次々と剣を抜く。


 「知らねえよ。俺達の世界はそんなに野暮じゃねえ。」


 最初に口を利いた男がそう答えた。


 「なるほどな。では改めて提案だ。私に対して全面降伏するなら命だけは助けてやる。これに関しては?因みにお前らの仲間二人は、既に私が倒している。」


 男達の間に動揺が広がった。見た目は剣の持ち方もなっていないような美しい少女。だが……この少女に関しては妙な噂が有り過ぎるのだ。それに、エクリスタ船を襲撃した時に三人の仲間を失ったのは、この少女の逆襲があったからだということを何人かが目撃している。

 しかし、それを振り払うかのように、一人の男がブンっと剣を一振りした。


 「たかが小娘一人じゃねえか!!お前ら頭おかしいのか!?」


 「待て。」


 「待ってもだってもクソもねえ!!この女を殺すことが今回の任務なんだろ!!」


 「あ……まあ。」


 「だったら何をグダグダ言ってんだ!?」


 「グダグダ!?」


 「お前らの決断は遅過ぎる!!」


 「はあ!?てめえが今までどんな働きをしたって言うんだ!?いつも足を引っ張りやがって!!」


 「俺の臨機応変でお前らは助かってるんだ!!」


 「ふざけんな!!」


 「ふざけてねえ!!俺は俺の任務を遂行する!!坊ちゃんどもは下がってろ!!言っておくが手柄は全部俺のもんだからな!!」


 「冗談じゃねえ!!」


 啖呵を切った男は、雄叫びを上げながらリアに向かって突進して来た。それに負けじと、荒くれた男達はリアに向かって一斉に飛び掛かって来る。

  

 リアは最初に突進して来た男を低く避けながら、その突進力を利用して男の腹を突いた。剣を引き抜く際に、こちらに振り被っている男に彼をぶつけ、よろけた隙に首を斬る。返す刀で三番目の男を叩き付けるように袈裟に斬り、雄叫びを挙げながら向かって来た四人目の男の咽を突こうとしたところで、リアは慌てて飛び下がった。

 男は急に対象物を見失い、その勢いのままゴロゴロと甲板に転がり込んだ。


 「おー、危ない、危ない。全員殺しちゃうところだった。」


 リアはそう言いながら、甲板に倒れている男の咽にピタリと剣を当てた。


 「お前にはもう一度選択の機会を与えてやる。私に全面降伏するなら命だけは助けてやる。どうだ?」


 じっとりと滲む気持ち悪い汗を感じながら、男は二つ返事で承諾した。


 「はい、はい、はい、私が悪うございました。全面降伏いたします。」


 「ったく。最初からそうしてれば世話なかったのに。」


 リアは男の咽に剣を当てたまま、漕ぎ場の方へ視線をやった。


 「誰かロープか何か持って来て。」


 漕ぎ場にいたマーシューブの男達は、まるで亡霊を見るような、或いは神を見るような表情でリアを見つめ、呆然としていた。やがて言われた言葉の意味に気が付き、ぞろりぞろりと動き始めた。

 





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