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1932/1934

九百二十:泰子さんの話(817) ★定期預金とAIの話(2)

九百二十:泰子さんの話(817) ★定期預金とAIの話(2)


 以前、前任の事務員がちょっとした不祥事を起こして退職したので、私は後任を一人雇おうと思った。会社の電話窓口なのだから、出来れば声の綺麗な女性がよい。さらに欲を言えば美人がよい。けれどもAIの能力を知ってしまった私は、「電話の受け答えもAIにやらせたらどうだろう」と考え始めた。


 ところが、これは簡単にはいかない。

 会社には時々、何かを売り込む電話がかかってくる。平日は私が電話に出ることはないが、休日の土曜日などにたまたま電話を取ることがある。すると、その電話の向こうにAIがいる場合がある。


 話し方が一方的で、声に人間らしい抑揚がない。ほんの数秒聞けば、「コイツは、人間でない」と分かる。私はたちまち受話器を置く。なぜかというと、味気ないのだ。便利であることは分かる。しかし、こちらが人間である以上、相手にも多少は人間であってほしい。


 「お忙しいところ恐れ入ります」と言いながら、本当は「少しも恐れていない声」を聞かされると、馬鹿にされた嫌悪感さえする。かと言って、逆に人間らしく「やあ、Aさん、お久しぶり! 元気にしてますか? ウッフ~ン」なんてAIからやられると、相手はドギマギするだろうよ。


 そう考えると、電話での会話と言うのは、ビジネスで案外ともっとも人間らしい部分で、AIに代替が出来ないかもしれない。そう考えると、自社の電話をAIに任せることには、どうも踏み切れない。


つづく

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