九百十八:泰子さんの話(815) ★野心のすすめ ― 「低め安定」の人生(8)
九百十八:泰子さんの話(815) ★野心のすすめ ― 「低め安定」の人生(8)
世の中には、上へ上へと登りたがる人もいれば、縁側で猫と一緒に昼寝をしたい人もいる。全員が野心を持って社長を目指したら、会社には社長ばかりがいて、誰も仕事をしなくなる。これはこれで、困った社会だ。
出世する人は出世しない人を使い、出世しない人は出世する人の作った会社で働く。こうして世の中は、案外うまく回っているじゃないのか、と思う。蜜蜂の社会でも女王蜂と働き蜂がいて、役割分担がされている。
ただ、自分の人生を「こんなもの」と最初から決めてしまうことだけは、少々もったいないと思う。人生は一度しかない。しかも、思っているほど長くない。
そう考えれば、「低め安定」も悪くはないが、その安定が「自分にはこれ以上できない」という諦めから来ているのなら、少し寂しい。
林真理子と私は、人生をただ与えられたものとして受け取るのではなく、自分で少しでも面白くしようとした点では、案外似ている。結局、野心とは大それたものではない。「もう少しやってみよう」と思う気持ちではないだろうか。そして人生というものは、その「もう少し」を何度重ねるかによって、随分違ったものになるようだ。そう考えると、「でなければならない」というものではなく、野心というものも、案外悪くない生き方だと思う。
お仕舞い




