九百十五:泰子さんの話(812) ★野心のすすめ ― 「低め安定」の人生(5)
九百十五:泰子さんの話(812) ★野心のすすめ ― 「低め安定」の人生(5)
ただ、会社の中で長年見ていると、「目の前の仕事を好きになった人、あるいは仕事を人生とする人」の方が、概して良い成績を上げている。仕事に夢中になれば、猶更その傾向が強い。
もっとも、これは卵と鶏の話でもある。仕事が好きだから成績が上がったのか、成績が上がったから仕事が好きになったのか、判然としない。けれども、両者が互いに影響し合って、ぐるぐる回り始めて上昇志向となることは確かだ: 仕事が好きになる。努力する。成績が上がる。面白くなる。さらに努力する。また成績が上がる。
これが上昇気流というものだろう。望まなくても、勝手に出世が付いてくる。
他方で、「生きる為に働く」タイプは、仕事を一種の苦役と考えている。命令されればやる。しかし、命令されないことまで自分からやる気はない。給料は上げてほしい。しかし、給料を上げてもらうために努力するのは嫌なのだ: 「もっと給料を下さい。しかし、そのために私が何かをするのは御免です」
会社も「はい、分かりました」と言って札束を渡すほど親切ではない。当然出世はしない。もし出世させたとしたら、何かおかしかろう。
仕事を苦役と考える人は、実に損な生き方だと思う。労働時間は大抵、昼間のゴールデンアワーだ。人生全体で考えても、生涯で最も長い手持ち時間になる。その大切な時間を苦役とみなして楽しめないとすれば、どう考えても、もったいなくて人生の大損だ。
つづく




