九百十一:泰子さんの話(808) ★野心のすすめ ― 「低め安定」の人生
九百十一:泰子さんの話(808) ★野心のすすめ ― 「低め安定」の人生
先般、林真理子の「野心のすすめ」(講談社現代新書)を読んだ。本の発行年から逆算すると、著者が五十九歳の頃に書いたものらしい。なぜこの本を買ったのか、その辺の事情は私の記憶からすっかり抜け落ちている。手元にあったので読んだ。
本の中で、著者は現代人の「低め安定」を嘆いている:
「いま「低め安定」が、いくら何でも多すぎるのではないでしょうか。なぜ野心が希薄な時代になってしまったのかーーー。自分の将来さえ真剣に考えようとしない人々ばかりーーー」、というわけである。
なかなか威勢のよい話だ。何しろ「もう少し頑張ってみようよ」程度の生ぬるい励ましではない。「みなさん、いったい何をしているのです!」と、襟首をつかまれて揺さぶられるようだ。
著者の林真理子自身、二十歳前後の若い頃から、さまざまな苦労と努力を重ね、時には策をめぐらせ、ほとんど無手勝流で人生を切り開いてきた人だ。マスコミで注目され、同時に人からそしられたり、妬まれたりしながら世に出て、やがて小説家として成功した。もともと勝気な性質もあったろうし、才能もあった。
だから、野心というものを口で説くだけでなく、自らの人生を使って実演して来た人だ。林真理子という一人の女性の出世物語でもあるが、同時に「皆さん、私のやり方を少し真似してみなさい」という人生指南書でもある。
つづく




