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九百五:泰子さんの話(802) ★お金の話(7)

九百五:泰子さんの話(802) ★お金の話(7)


 中学時代の同級生のS君も、元恋人も、逢った事は無いがその娘もまた、私の前から姿を消した。

不運ばかりではなかったと思う。彼らそれぞれに長い人生だった筈で、みんなやりようはあった筈と思う。が、正直すぎて世渡りが上手ではなかったみたいだ。理由はみな違うようでいて、根は一つかもしれない。


 歳が入ってお金が無いというのは、単にお腹が減るだけではないし、贅沢が出来ないだけではない。人の心を静かに閉ざしてしまい、恋した逢いたい人にさえ会えなくなる。三人を眺めて、お金が無い事の残酷さを、目の当たりに見る思いがする。


 生き方が不器用でも、みな美点がある。だからこそ、私の好きだった人たちだ。少しでも力になれればと思った。だが、相手が私だからこそ、何もしてほしくなかったのだ。情けを受けるくらいなら、忘れられた人でいたい。そういう誇りもまた、人にはある。お金では買えない人の尊厳である。


 私は今でも、お金は人生で最も大切なものではないと思っている。けれども、尊厳を守るためには、ある程度のお金が必要なのだ。人は愛や友情だけでは生きられない。お金だけでも、生きることはできない。その二つの間で揺れながら、人はそれぞれの人生を静かに歩いていく。離れて行く三人の丸めたような背中へ、私は深い悲しみを感じる。


お仕舞い

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