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九百四:泰子さんの話(801) ★お金の話(6)
九百四:泰子さんの話(801) ★お金の話(6)
住所が、あたかも寄宿舎のように思えた。学生の下宿でもあるまいし。未婚であると聞いていたが、住居が生まれ故郷からとても遠く、地理的に地の果てに近いと感じた。どうしてそんな処へ住んでいるのか、考えてみればおかしく、疑問を持った。
私の元彼女の離婚、結果として母子家庭、不幸な経済的困窮、その娘の未婚、娘の遠隔地の住居、私の手紙に対する頑なな沈黙。それらが一本の細い糸でつながっているように思えた。貧困の連鎖を私は感じた。
返事の無い娘さんは、私に対して母親のプライドをおもんばかった為ではない。自身に問題を抱えている為なのだろう。娘さんもまた、自分の暮らしや職業を他人に知られたくないのではないか。地元でやれない商売だ。知っている人の視線から静かに消えてしまいたい、そんな思いで生きているのではないか。
もちろん、これは私の勝手な推測にすぎない。けれども、そう考えると、手紙に対する返事のない沈黙は、一つの悲しい言葉のように思えてくる。
つづく




