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八百九十四:泰子さんの話(791) ★宇宙語と音楽

八百九十四:泰子さんの話(791) ★宇宙語と音楽


 日経で「AI(=人工知能)が音楽の世界に急速に浸透している」との記事が目に留まった。


 近頃は何を読んでもAIという二文字に出会うが、作曲や演奏で、人間が担ってきた領域までAIが迫り、生身のアーテイストは今後生き残って行けるのか、という記事であった。既に米音楽チャート「ビルボード」のジャンル別でAIが創作した楽曲が上位を占め、チャートを席巻しているらしい。静かに、しかも確実にAIが人間の居場所を書き換えてゆくようで、そんな感慨を覚えた。


 話し変わって、最近分厚い小説を一冊を読んだ:「プロジェクト・ヘイルメアリー」(米国人作家:

Andy Weir)。壮大な話で、物語は、主人公が長い冬眠から目覚める場面で始まる。目を開けると、そこは大きな宇宙船「ヘイルメアリー」の中である。自分が誰で、なぜそこにいるのかさえ最初は思い出せない。しかし記憶が少しずつ戻るにつれ、自分が地球を救うため、片道切符で宇宙へ送り出された科学者であることが明らかになってゆく。


宇宙船は光速に近い速度で飛行しているため、数年の航海が地球時間では数十年にも相当する。これはアインシュタインの相対性理論による時間の遅れで説明される。


 主人公の任務は、宇宙で未知の現象を調査し、その成果を小型探査機に載せて地球へ送り返すことであった。結果さえ届ければ地球は救われる。しかし彼自身には帰還する燃料が用意されていない。使命を果たしたあとは、誰にも知られぬ宇宙の果てで、静かに朽ち果てるだけである。その冷酷さが、この物語に不思議な透明感を与えている。それは宇宙空間に似ている。


つづく


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