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八百八十九:泰子さんの話(786) ★大金を盗まれた話(6)

八百八十九:泰子さんの話(786) ★大金を盗まれた話(6)


 結局私達は、会社内の大部分の資金を定期預金へ移す事にして、手続きをすべて完了した。預金通帳(或いは証書)と印鑑を使う昭和時代の方式へ逆戻りした。まるで蒸気機関車の時代に逆戻りしたような気分だが、それが最も安全に思えた。当月の支払いの為に、ネットで動かせる資金は最大で一ケ月分だけに限定した。必要になれば私自身が銀行へ印鑑と通帳を持参して出向き、定期預金の一部を都度解約して支払い口座へ移動する仕組みにしたのだ。とても面倒だが、銀行を信じられない以上、仕方がない。


 それ以外に、今の処自衛手段がないようだ。リスクをゼロには出来ないが、そうすれば、仮に再度被害に遭っても、被害額を1ケ月分だけに抑えられる。


 やがて行く行くは、社内留保金を金や株式の投資に回して、自衛を強化せざるを得なくなった。高い授業料だったが、事件はウチに多くを教えた。盗まれた一千万円はウチにとって少くない額だ。が、そのものより、原因の不明である事実の方がよほど不気味に思われるのである。


 なお、先の盗まれた金額について、全額の補填を銀行側に求める積りにしている。銀行側のソフトの脆弱性を突かれた事件だと考えているからであって、警察の調べを待ちながら、損害賠償で銀行を訴える裁判も視野に入れている。幾つの歳になっても、私はぼけている暇はないようだ。


お仕舞い.

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