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八百八十五:泰子さんの話(782) ★大金を盗まれた話(2)

八百八十五:泰子さんの話(782) ★大金を盗まれた話(2)

①第一に、先の払い出しと送金の手続きを行う為は、ウチの社内の専用のパソコン一台を使う。このパソコンはA銀行に認証(=登録)を受けた特定のたった一台だ。つまり、他のパソコン機器やスマホでは出金操作が出来ない仕組みになっている。


②この一台は、会社の事務所の最も奥まった場所に置かれている。私の机から二メートルほどしか離れていない。つまり目の前だ。しかも操作できる者は実質二人だけで、配偶者と息子である。


③事務所内に、社員は何名かいるが、誰かが勝手にその席へ座ることはまず不可能だ。昼休みの終わりには大きな就業開始のチャイムが鳴る。午後一時二十五分頃に経理用パソコンの前へ無断で座れば、周囲の誰もが気付く。まして私の目の前である。だから社員犯行説は最初から成り立たない。また当日昼休みの時間も含めて外部から不審者の侵入もない。


 ところが、仮に空から天狗でも舞い降りてきてそのパソコンを操作したとしても、なお問題は残る。送金には三重の認証が必要なのである。まずID。次にパスワード。さらにワンタイムパスワード。最後のワンタイムパスワードは小さな電子カードから発行される。その都度数字が変わり、数分しか有効でない。予測もできない。そのカードは鍵付きの引き出しに保管されている。


 現在の処そんな兆候は観察されていないが、万万が一にもパソコン内へ外部の犯人がネット経由で巧妙に侵入し、100%乗っ取ったと仮定したとしてもーーーだ。乗っ取ってパソコン内を隅々まで眺めまわして自動操作したとしてもだ、ワンタイムパスワードは、そこには存在しない。


 机の中の物理的な電子カードキーを取り出して、人の目で読み出さない限り、預金口座のロックは開かない。犯行は不可能なのである。事件は起きようが無い。


つづく

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