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八百八十:泰子さんの話(777) ★火と自由と働くこと(3)

八百八十:泰子さんの話(777) ★火と自由と働くこと(3)


 他方で、なに、女も負けてはいない:都内の貿易会社に勤務していた女性(36)は8000万円を貯め、退職し、夫も一緒に退職して10歳と7歳の子供を連れてタイのバンコクへ「移住」した。生活費が安いから、一億まで貯めなくても良かったようだ。彼女は言う:「今は子供が学校に居る間は、ドラマを見たり本を読んだりして自由に過ごす。今の方が「自分らしく」生きられる。今が今後どうするかのスタートラインだ」と。


 二つの事例を読みながら、胸のどこかに引っ掛かるものを覚えた。もちろん他人の生活をとやかく批評する気はない。会社勤めに縛られず、好きな時間に起き、好きな本を読み、好きな土地に住む。それは多くの人が一度は夢見る生活に違いない。けれども、果たしてそれだけで人は幸福になれるものだろうか。特に、先の女性は勤め人をやめて、昭和初期時代の専業主婦生活に戻っただけの事だ、という気がする。


 「自分らしく生きられる」と書いているが、「自分らしく」とは、最近の流行り言葉だが、実に曖昧だ。「自分らしい」とは、毎日ドラマを見ることか。本を読むことか。畑を耕すことか。サイクリングすることか。

 どれも悪いことではない。けれども、それだけで「自分らしさ」が完成するとは思えない。結局、あなた、一体全体何をやりたいの?と訊きたくなる。


つづく

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