八百七十八:泰子さんの話(775) ★火と自由と働くこと
八百七十八:泰子さんの話(775) ★火と自由と働くこと
英語は、時として悪戯をする。たとえば Fire という言葉だ。辞書を引けば「火」であり、「燃やす」であり、また「解雇する」ともある。燃えることと首になることとが、どういう縁で一つの語に同居するようになったのか、知識不足の私は知らない。
火の中へ放り込むほど憎い相手だから職を奪うのか、それとも職を失った人の胸中が焼けるようだからか。言葉というものは、時に由来を尋ねたくなるほど謎がある。
先般、日本経済新聞を読んでいて、「FIRE達成者の資産額は?」という見出しが目に留まった。私は反射的に、「解雇された人は、首になった時に幾ら手元に貯金を持っているか」という話題だと思った。英語の Fire を知っている人なら、まずそう考えても不思議ではない。
ところが記事を読み進めると、「若年層の早期リタイア」という言葉が現れた。そこで私は、「なるほど、会社から首になるのでなく、自分で自分を首にするという話か」と考えた。つまり自主退職である。ブラック企業とか、近頃は会社も世知辛いから、そういう選択をする若者が増えているのかと思ったのだ。
さらに読み進めて、ようやく真相が分かった: FIREとは Financial Independence, Retire Early の頭文字を並べた造語で、「経済的自立と早期退職」という意味だという。
つづく




