八百十二:泰子さんの話(709) ★中小企業か零細企業か
八百十二:泰子さんの話(709) ★中小企業か零細企業か
人はなぜ大企業に憧れるのか。答えは簡単で、「安心」と「見栄」と「給料」の三点セットが良いからだ。
細かい経緯は省くが私の人生は運よく(あるいは運悪く)、社員千人以上の大企業から、三百人規模の中企業、果ては八人の零細企業まで、会社のサイズをフルコースで経験することになった。ついでに一人きりの駐在員事務所責任者などという、会社ごっこを一人でやるような役もやり、さらには喫茶店のマスターにまで変身した。掛け値無しに多種多様で、人生というのは、履歴書を埋めるためにあるのではないかと錯覚するほどのバリエーションであった。
この多様さを決して誇っている訳でなく、ただ「偶然とは考え難い」から、どんなメカニズムによるのか目下分析中だ。読者には荒唐無稽な理由と思われるかもしれないが、自分の「脈拍が低い」せいではないかと疑っている。
安静時の私の心拍数は一分間に約50前後だ。だから50を切る事もある。健診で毎回指摘される: 若い時にマラソンをやっていましたか、と。私はマラソンなんてやった事はない。海外で研究や報告をされている犯罪心理学によれば、生まれつき心拍数の少ない人は概して:
①強い刺激・興奮・リスクを求め勝ち。
②これが故に、危険行動・スリル志向・退屈さに耐えにくい、という傾向が有る。危険さを危険と感じにくいから、例えば戦場に立てば命知らずな勇敢な兵士になるという訳だろうか。
③反社会的行動に走るリスクがやや高い。
つまり、人の性格や行動は身体の基礎状態(=心拍数など)が脳に影響を与え、これが人格にも影響する。言い換えれば、身体反応(=低心拍数)を脳が読み取って、それが感情になる(ジェームス・ランゲ説)という説がある。私は学者ではないから分析はこの程度にとどめるが、思うのに、心拍数が少ない人は正常な心拍数に「戻そう」として、言い換えれば「ドキドキを求めて」先の①~③の傾向になる自律反応を採るのかと思う。
私の話は先のように決して根拠のないものではなく、生来の自然な傾向として「強い刺激とリクスを求めて」私は転職を繰り返したのかもしれない。私は直ぐに退屈するのだ。自制心はそこそこにあったから、幸いにして③の反社会的な犯罪者にはならなかったけれども。
序に言い添えれば:心拍数が高めの人は「不安傾向・神経質傾向・ストレスへの感受性が高い(=ストレスに弱い)」傾向が高いという研究報告もある。心拍数の低い人の場合の真逆だ。因みに私の配偶者はこれに属する。この面で、私達夫婦は互いに逆さまである。
脱線したがそれはさておき、そして今、私は二十人ほどの小企業を経営している。こうして振り返ると、ずいぶんと無駄に器用な人生だったなと思う。けれども、この「無駄」が案外と、味わい深い。
というのも、もし生まれ変わることができるなら、自分はどの規模の会社を選ぶかと考える時がある。これは意外と即答できる。大企業も中企業も、丁重にお断りしたい。給料が良くても、どうも私の性には合わないのだ。中企業ですら、私には「ちょっと広すぎる体育館」のように感じる。
つづく




