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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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八十四話:導かれた先には

 

 蟻の巣って、思ったより複雑なんだな。

 探索しながらふとそんな事を考える。

 というのも進み始めてすぐに分かれ道があるからだ。

 早い時だと曲がってすぐに目の前が分岐点だ。

 その度に右へ左へ…もしくは上へ下へなど指示された方向にクネクネと進んでいる。


 それほど複雑だから道なんて…既に覚えていない。

 一応曲がる時にスコップで目印を掘っているけど、完全に気休めだ。

 そもそもこの松明一本が燃え尽きたら真っ暗闇だ…

 既に帰れるか不安だが…帰りは土人形が道案内してくれる事を祈ろう。


 ドォ…ン…


 さて…それはそうと移動し始めてから度々、謎の音の代わりに何か揺れる様になった。

 空気が、何より地面が揺れているから間違いない。

 しかも段々と大きくなってきているし…

 で、その度に土人形がびくりと身を震わせる。

 …大丈夫だろうか?



「大丈夫?」



 さっきの地響きにも震えていたので、何となく声を掛けてみる。

 まぁちょっとした気遣いだ。

 それで人形は重々しい動きでこちらを見た後コクリと首を縦に振り、奥へ進めと促してくる。

 で、それはやはり急いでいるって感じだ。

 少なくとも余裕のある感じじゃない。

 この地響きもきっと関係してるんだろう。




 それからまた更に奥へ進んでいくと、今度は大きな分岐点に出た。

 いや、広間と言った方がいいか。

 入ってすぐだが視線の先には、無数に枝分かれした行き先が存在している。

 とは言っても…決してそこが狭いわけではない。

 だが松明の明かり一つで全体が照らされる、不思議な空間だ。

 この空間が平たければ、ギリギリ野球が出来なさそうな程度には広い。

 サッカーやバスケは出来そうなんだがな。

 そんなすり鉢状のドームが松明の明かり一個で照らされているのだ。


 というのもこの空間…あたり一面青白く光っている。

 松明の光を当てると一際強く光る何かが、主にすり鉢状になっている床に存在しているのだ。

 そんな青く光る空間はどこか綺麗で、ふとここに来た目的を忘れて立ち止まってしまいそうになる。

 まぁ立ち止まってても土人形に急かされるだけだけど…

 そんな事を考えながら土人形の方に視線を向けると、彼の視線は下に向いていた。

 青白く光る、綺麗な地面にだ。

 …見とれているんだろうか?



 ドォォン…



 突如、轟音が響いて更にそれと共に地面と空気がビリビリッと震える。

 結構近いんじゃないか?これ?

 人形もビクッとしているが、俺も思わず上を確認してしまった。

 ここに来て、何となく土人形がビクビクしてる理由を悟ってしまった。

 なにせ地下でこんな揺れがあるのだ、崩落の心配をしない訳がない。

 それをさっきから心配していたんだろう。

 つーか気付くのが遅いよな。



 パラッ…



 そしてこの音である。

 このだだっ広い空間の何処かに、何か小さいものが落ちてきたのだ。

 絶賛、崩落の危機だ。

 潰されないうちにさっさと出たい。

 つーか何だってこんなに揺れたりなんかするんだか…



 パラ…ラ…



 うーん…引き返したいな!

 でも、行き先はこの先なんだ…

 土人形も真向かいを、突っ切れみたいな感じで指し示しているし。



「はぁ…」



 …しょうがない、行くか。

 と、決心を固めて一歩、二歩…と広間の、すり鉢状に窪んでいる場所に足を踏み入れて行く。

 そこの地面は若干硬いようだ。

 普通に歩いているのだがコツン、コツン…と音が鳴る。

 そして10歩くらい歩いたのだが…


 ドゴォォォン!


 突然、爆発が起こったような音と衝撃が体に伝わる。

 更に前方で何かが落ちてくる音と、凄まじい土煙が舞い上がる。

 何だ!?何が起こったんだ!?

 そう思うが、突如起こった事に対しての行動を体が行ってくれない。

 次に何が起こるのかを、ただ待っているだけしか出来なかった。

 こう、身が竦んだって言えば良いのか?


 それからひと呼吸するくらいの間を置いて、土煙から何か出てくる。

 ぼんやりとした青白い光に照らされた姿は…人の形をしていた。

 それからキョロキョロ辺りを見回し、こっちに気が付いたみたいだ。

 そのまま暫らく、互いに動かない。

 まぁ俺はスコップを握る手の力を強くしているんだが…



「オイ…テメェ!」



 この声…何処かで聞いた事があるような…

 声色的には男だ、それは間違いない。

 しかし随分と挑発的な物言いだな…



「チィ!暗ぇな!」



 声と共にそいつは右掌を上に向けて、魔力の塊を放つ。

 打ち上げられたそれは頭上、天井にほど近い所に留まったかと思ったら光を放ち始めた。

 それによってさっきまで薄暗かったこの広間の光量が一気に引き上げられる。

 …それでも十分に文句なく明るいとは言えないんだけどな。


 蛍光色の明かりで照らされていたのに、ミラーボールの明かりが加わったくらい?

 というか打ち上げられたの、何だかミラーボールっぽい。

 白い光を放っているけどかなりムラがあるし、そのムラもクルクルと回っているし…

 それでも、目の前の男の顔を見るには十分な明かりだった。

 恐らく、こっちの顔も向こうにはっきりと見えているだろう。



「よぉ!」



 白色の明かりに照らされる、明るめの橙色の髪。

 見るからに鍛え抜かれた筋肉と、それを強調するようなラフな服装。

 微妙に見えづらいが、両腕には限りなく透明な小手が嵌っている。

 そんな男、そうそう他にいるもんじゃない…




 コイツは…サヴァトと一緒に居たあの男だ。


 


 次回、あの男の正体が明らかに!


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