↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
88/146

八十三話:土人形の導きその5

 

 コツン…コツンと靴と石がぶつかり、硬い音を響かせる。

 ほのかな明かりを頼りに、石の階段を下りている。

 外の乾いて暑く砂っぽい空気から一変し、湿り気を帯びて冷たい空気が肌を撫でる。

 おまけに何かと形容できない匂いが鼻を刺激する。

 あの屋敷の主の部屋に漂っていた匂いと同じ奴だ。

 しかも一歩ごとにそれは強くなっていく。

 湿り気も、冷たさも、嫌な匂いも…



 結局何が言いたいかというと、あまり長居したくないって事だ。

 そんな墓石の下を、松明とスコップをそれぞれ片手に持ちながら進んでいく。

 自分が移動するだけなら別に真っ暗闇でも問題はないんだけな。

 感知もあるし、目が見えない状況でも周囲を把握する方法があるし。

 ただ、今回は探索する為にここに来ているわけで…明かりはいるだろう。


 それはそうと松明、あってよかった。

 忘れていた訳ではないけど…そうそう使う必要がないからなぁ…

 夜だって大体雲が無いから…月明かりで何とかなるし!

 それに明かりだって魔物を寄せたりするから、使いどころには注意がいる代物だ。

 呑気に明かりを焚いて、襲われましたなんて間抜けだろ?


 そもそもこれ、この松明はメタリオルに来る時に貰った奴だ。

 なんやかんやいって結構夜も移動していた訳だがその間一切明かりは使ってない。

 最早、松明は俺の中で不要の代物となっていたのだ。

 だから明かりをどうしようか悩んでいて、土人形に指摘されるまで気付かなかったのもしょうがない事だ。




 とか何とか…内心で言い訳していたら階段が終わった。

 どうやらここが一番下のようだ。

 まぁ墓だし、そこまで下に深いってわけじゃないか。

 で、松明で周囲の様子を伺う。


 暖色の光に照らされて見えるのは…近くに石柩が幾つか並んでいる光景だ。

 それも丁寧に装飾や細工が施された奴。

 で、結構奥行があるのか部屋全体に明かりが行き渡らない。

 しかも土人形は更に、奥へ行けとクイクイと腕で示している。

 他の土人形も居ないし、まだ奥に何かあるんだろうな。

 とりあえず周囲を丁寧に照らして行きながら進んでいく。


 しかしこれ、本当に墓荒らしじゃないよな?

 最奥に一際煌びやかな柩があって、それを開ける様に…とかありそうだ。

 それで、開けたら一斉に柩が開いて中から死体が出てきたりとかだろう。

 …嫌だぞ、そんな風にアンデットと戦うのは!

 せめて単体で歩いてたりとか…していてくれないかな。


 なんて考えてたら、あっという間に最奥に着いた。

 そこまで広くはないし、当然か。

 それで、最奥には何が有ったかというと…



「うわ…深そう…」



 そこにあったのはポッカリと空いた大きな穴だった。

 底までは斜面状に掘られているみたいで、上手い事やれば滑り降りられそうだ。

 登るには苦労しそうだが…


 で、なんでそんな事を考えているかと言うと、当然だが進む方向として指さされているからだ。

 この先にも何かあるのか俺の肩に乗せている土人形が、急かすように髪をクイクイと引っ張ってくる。

 その様子は、何処か焦っているというか、急かしたい感じだ。

 さっきからそんな様子なんだよな。

 具体的に言うと、墓地に入るくらいからか?


 いや、変だと言うなら今日の探索が始まってからずっとだ。

 どこか親しくというか慣れてきたとばかり思っていたけど、この様子を見てるとどうにも急いでいるっていう方がしっくり来る。

 進む先に障害が多くて時間が掛かってるから、痺れを切らせているってのもあるだろうけど。

 どのみち、急がせたいのには変わらないだろう。



 …………………………



 と、ここで不意に穴の底から何か聞こえてきた。

 微かすぎて聞き取れなかったが、とにかく良く響いてきた。



「えっと…?」



 何か知ってるのでは無いか?と土人形の方を見てみる。

 表情は変わらないがひたすら穴の底へ進め、進めと指示してくる。

 その様子からはさっきよりも、こっちを急かしているのが見て取れた。



 …………………



 そして、また謎の音が聞こえてきた。

 本当に風の様に僅かな音だ…

 だが…今度は確かに聞き取れた。

 …何かの叫び声で間違いないだろう。


 こう、怒声というか遠吠えというか…そんな音なんだ。

 少なくとも悲鳴とか高音って感じの音ではない。

 これは…この声は一体何の声だ?

 それに微かにだが抑揚もあるし、何か意味のある言葉を喋っている様な気がする。

 ただ、何を理由に叫んでいるかが分からないんだよな。

 もしかしたらただの魔物の咆哮かも知れない。

 ここいら一帯でそんな魔物に見当は無いんだけどな。


 まぁ行って確かめるしかないよな…

 とにかく、用心する理由が出来たってだけだ。

 ここまで気になる事が出来て、引き返すっていうのは出来そうにない。

 行ける所まで行くしかないだろう。

 …戻ることも考えてな。




 さて意を決して、穴の奥へと下っていく。

 滑っていくって言った方が正しいか?

 角度的にはギリギリ踏みとどまれないって角度だ。

 帰りはひと工夫いるだろう。

 スコップか何かを杖がわりにすればいいか?



 カラッ…


「ん…?」



 それで、下の方まで降りてきたと思ったら何か蹴った。

 いや、足に当たっただけなんだけどさ。

 そのまま蹴った物は音を立てて下まで落ちていく。

 何を蹴ったんだ?

 その疑問は降りた時点で解決した。

 それにあんな所に大穴が空いていた理由もだ。


 最終的に穴から下っていくと、別の通路に落ちるように出た。

 落ちるっても膝上くらいのちょっとした段差だけどな。

 落ちてもそうそう怪我をするほどの高さじゃないし。


 それで穴の先の通路だが…さっきまで通ってきた穴がなんと狭いかを実感させてくれる広さだ。

 真ん中に立ったら松明の明かりが両端まで届かないし、普通に飛び上がっても天井に頭をぶつけないだろう。

 ただ梁なんかが無いから、人工の洞窟かは怪しいな。

 まぁそれは置いておいて…


 穴が有った場所の下には大量の骨が散らばっていた。

 これが恐らく蹴ったものの正体だろう。

 穴のすぐ下に大量に積もっている土砂に埋もれているものもあったが、大半は周囲に散らばっていた。

 どうやらあの穴だが…俺以外に先客が居たようだな。

 その先客は…放り込まれたっていう方が正しいんだろうけどさ。

 もう、これ以上は言わなくても分かるだろう。


 しかしあたり一面に骨が散らばっていて、気味が悪い。

 死体遺棄場の下だから当然なんだけどさ。

 それにどうやら死体っていうのも、人だけじゃないみたいだ。

 良く見ると、通路の隅には何かの甲殻が転がっている。

 それも見た感じサイズに違いがあるが、どれも結構デカい。

 これは…もしかして?



[ラージアント]

 地中に巣を作り生活する蟻の魔物。

 その名が示す通り非常に大きく、成長によって更に大きくなる。

 近接では拘束してからの噛み付きや蟻酸、遠くからは土を操る魔法が主な攻撃手段となる。

 ---------------

 ----------

 ----



 そう思いながら真理理解を発動させると、案の定予想していた蟻の魔物だった。

 これは…昔この地域に大量発生したって魔物だったはずだ。

 となると、この洞窟は蟻の巣って事だろう。


 さて、現在位置の詳細が分かった所で土人形に確認を取る。

 勿論、どちらに進めばいいか…だ。

 確認が遅れたけど、まずは状況の確認を優先させたかったからな。


 しかし、蟻の巣か…

 ひとえに村長の趣味から、呪いから、蟻の進行具合まで…この村、とにかく滅ぶ運命だったのは間違いないだろうな。

 それも誘導されてたと思えるレベルでだ。



 ………………



 そして考えをよそに土人形は穴を背に右と左…道が伸びている二つの方向にキョロキョロと視線を彷徨わせた後、左を指差した。

 ついでに言うと今また何か聞こえたが、恐らくそっちが声のする方向なんだろうな。

 今の所、ぶっちゃけると小さすぎて空気が震えてるってレベルだ。

 内容も、左右のどちらから聞こえているのかも分からない。

 もう少し近づかないとな。

 まぁ、とにかく…示された左に進んでいこうか。






 そろそろ導きの終着点かも

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。