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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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四方山話:俺は別に飴でもいいんだ・・・べっこう飴でもさ。だから・・・

 

 本日二度目の投稿です。

 それに加えてこの話自体がサイドストーリーでもない、本当の番外編です。

 本編に一切関係が無いいわゆるIFのお話です。

 七十一話を見ていない方は先にそちらを見ることを見ることをおすすめしますし、バレンタイン関連のネタ回に拒絶反応のある方は読み飛ばして下さい。


























 …警告はしましたよ?

 


「さて、じゃあ作りますか。」


「そうですわね!」


「気合入るわね!」



 目の前に居る三人の女性達は突然立ち上がり、エプロンをそれぞれ身につけてあらかじめ用意されていたキッチンの前に立ち、調理用の機材を取り出し始める…



「さて、今回はボウル二つにヘラに後は成形用の型くらいしか使うものが無いからね~

 後は何も出さなくて良いわよ~」


「分かりましたわ!」


「で、これからどうするのよ?」


「え~とねぇ…レシピレシピ…っと」



 その中の一人がそう言って、何もない中空から一冊の本を取り出す。

 普通ならとても驚くことだが…別段その事に驚いている様子の者は誰一人として居ない。

 そして、彼女は自身がどこからともなく取り出した本をパラパラとめくり、ある部分を開いてキッチンに置く。



「作り方はここね。

 字は読めないと思うけど私が教えるし、図も載ってるから安心してよね!」


「「は~い!」」


「で、材料だけど…」



 彼女がそう言って指をパチリとすると、今度はキッチンの上にボウルに山盛りにされたチョコレートが出現した。



「さて、これを使ってテッシンに美味しいチョコレート、作りましょう!お~!」


「「お~!」」


「おい!待て待てまてぇい!」



 掛け声に負けない程度の声を上げる。

 それで、三人の視線が一斉にこっちを向く。



「どうしたのよ一体」


「何かあったんですの?」


「おとなしく待ってなさいよ!」


「で、出来るかぁ!」




 今現在、俺の目の前で行われているこの茶番についてもだが…まずは自身の置かれている現状を説明しよう。


 つい先ほど、気がついたらあの空間で椅子に座っていた。

 で、テーブルを挟んで向かいには女神…

 この時点でどうやら呼び出されたみたいだ、という事は悟った。

 そう、女神の居るあの空間だ。

 更に横を見ると…何故かラルとアンナが両隣に座っていた。

 で、なんで?と思う間もなく三人は立ち上がり…で冒頭になるって訳だ。


 ここまで聞いたなら…まぁチョコを作るんだろう、くらいに思うんだ。

 でも…でもだ!

 そこにある情報が加わる事によって自体は大きく変わるんだ。

 俺は、椅子から立ち上がれない。っていう情報をな!



「これを何とかしてくれ!これを!」



 今も必死に動こうとしているけど、立ち上がるどころか口以外動かす事が出来ない。

 見ればどうにも縄でぐるぐると、腕や足ごと椅子に縛り付けられているみたいなんだが…

 どうにも縄の影響じゃない違和感がある。

 と言うのも、せめてもの情けか首には縄は掛かって無いけどその首も動かせない。

 これは…あれだな。

 どう見ても金縛りです。

 本当にありがとうございます。

 って悠長にしてる場合じゃないな!



「鉄ちゃん、あれよ?縄抜けのアビリティもあった方がいいんじゃない?」


「「てっちゃん!?」」


「そっちに食いつくのか!?」


「テツって呼ぶよりも可愛いと思わない?」


「いいですわね!鉄ちゃん!」


「鉄ちゃん…プフッ、鉄ちゃんはそこで待ってなさい!」


「アンナ!ちょっと笑ったな!?」


「笑ってないわよ!鉄ちゃん…ふふ!」


「笑ってんじゃねぇか!」


「そんな事はどうでも良いのよ、ここってパラレルワールドってかIF世界だし。」


「良くねぇよ!?」



 ってかサラッととんでもない事を言わなかったか?



「ここでの出来事は全て無かった事になるのよ。

 話した事も会った事も、そもそも来た事さえね!」


「え?じゃあ…?」


「そう、だからここで何を言おうと記憶に残らないみたいですわよ?」


「別に気に入らなくて不満に思うのも今だけだし、私達も何でも出来るってわけ!」


「そ・れ・よ・り・も!

 こんな日に私達美少女からチョコを貰える事を光栄に思いなさい!」


「なる程なぁ」



 世界の神様でも美少女なのか。

 永遠の~歳とかそういう奴?



「何か失礼な事考えてない?」


「それで俺が縛られてる理由は何だろうな~って思って。」


「さて、時間も惜しいから作りましょうか」


「はぐらかし方雑すぎだろ!」


「「「テツ、うるさい!」」」



 三人共、声をハモらせて言う事じゃないだろ!

 ってかこれ、絶対に止められないからって暴走するパターンだ!

 もう…嫌な予感しかしないぞ!



「というかテツがもう少し静かにしてくれないと、こう女の子三人でワイワイ盛り上がる感じの回にならないじゃない。」


「だったら後から呼べば良かっただろ!」


「それだとツッコミ役が…」


「誰がツッコミ役だ!」


「「「テツ(あんた)でしょ?」」」



 くそ!女性陣の息が段々と合ってきてる!

 と言うかラルとアンナ、妙に仲が良いな。

 ラルって暴走姫だかって呼ばれてたからあまり良い印象を持たれてないとばかり思ってたけど…



「ってかお前ら、仲良いな」


「ここで少しお話をしましたら、妙に息が合いまして」


「お互い話せば分かる事もあるのよ。」


「それに作者の、もっとヒロイン勢を活躍させたいって気持ちも理解してあげなさいよ!

 まさか険悪な仲でこんな事させられないじゃない!」


「いきなりメタい事言うんじゃない!」


「ってか話数にして半分より前から登場しなくなった私達の事も考えなさいよ!」


「私なんて九話以降本編に登場してないんですわよ!」


「二人共番外編で出てきてるだろ?」


「それでも!登場話数にしてまだ十話も行ってないのは納得いきませんわ!」


「ちょい役で出てきたEランク冒険者と同じくらいだしねぇ…」


「という訳で少しでもここらへんで少しばかり活躍しておきたいんですの!」


「お、おう…」



 色々と言いたい事はあるけど、俺が縛られてる時点で…お察しだよなぁ。

 しかし、全部無かった事になるとは言っても…大丈夫だろうか?

 こう、世界を超えての衝撃とか後遺症とか…ありそうだ。

 何せメシマズ…いやギャグは油断ならない。

 ってちょくちょくメタくなってきてるな。

 毒されてるな、気を付けないと。

 この空間で今、健常なのは俺だけだ…多分。



「そんなラルちゃんに活躍の機会を増やすために…ど~ん!」



 で、女神が調子よくそんな事を言うとまたどこからかキッチンの上に主にお菓子のトッピングに使えそうなものが出てきた。



「これで更にチョコを可愛く出来るわ!」


「いいですわね!」


「これは…ハマりそうね!」



 ここでハマっても忘れるだろうに、アンナは何を言ってるんだか…



「だけど、中にはハズレもあるから気を付けるのよ~」


「ハズレ…?」



 そう言われて確認してみる…

 チョコビーズとか普通のシュガーに紛れて塩とか、ペンシルにはホワイトチョコから生クリーム、果てはわさびまで数多く取り揃えている。

 本当にハズレ、混ぜてるんだな…

 しかしまぁ、食えるもので良かった。

 …とか思っていたら一個だけヤバイもんが紛れてるぞ!?

 いやキッチンと一緒に最初からあったものだけど、どさくさに紛れてボトル系の物に紛れ込んでしまってる。



「っておい!待て待て!せムグッ!」


「はい、ヒントを言うのは禁止よ~」



 そう言って女神が手をこちらにかざすと、口が開かなくなった。

 え、なにその能力…そんな事も出来るのかよ!

 それに女神…洗剤が紛れてる事に気づいてないし…



「さて、鉄ちゃんの視線をみて何がデコレーションに良いか、当てて行きましょ!

 あ、味見は禁止ね!」


「分っかりましたわ!」


「腕が鳴るわね!」


「ン~!」



 間違ってもあれが使われなきゃ…良いんだけど…

 俺に洗剤を食う勇気は無い。

 だけど洗剤が入っているとは言え目の前で頑張って作った物を無下にもしづらい。

 と言うか気づいたら女神、止めてくれないかな?

 なんて淡い期待をしてみる。



「さて、まずはこの刻んだチョコレートを湯煎で溶かす前に、好みの型を決めなきゃダメね」


「じゃあ私はこれにしてみますわ」


「私はこれがいいかな?」


「そう、じゃあ私は…これでいってみるわ」



 そう言って選んだのはそれぞれハート、星、丸型だ。



「さて、これにチョコを流し込む為に湯煎って方法で溶かしていくんだけど」


「隠し味に何か混ぜてもいいかしら?」



 と言ってアンナが持ってきたのは…塩だ。



「ン!ンンンググ!」



 おい!やめろ馬鹿!

 早速レシピを無視してアレンジに走るんじゃない!

 本人の目の前で隠し味も何もないだろ!

 ってか冒険者になる為に簡単な料理は出来るだろお前は!



「液体を入れると柔らかくなるから大量にはダメだけど、それならいいんじゃない?」


「じゃ、遠慮なく!」



 声を上げたこっちをちらりと見た後、そう言ってかなりの量をチョコにぶち込んだ。

 愉快そうなその顔は…確実に確信犯だ。



「え~っと…少量でしたらいいのですわよね?」


「ン!?」


「多分そうだけど…あっ…」



 アンナに気を取られていて、こっちの注意が疎かになっていた。

 いつの間にか刻まれたチョコの中には液状のものが入れられていた。

 わりかし大量に、な。

 チョコが固まる量ギリギリかもしれない。

 で、その液体が入っていた容器には見覚えがある…



「…えっとぉ?ラルちゃん?」



 流石の女神も困惑してるな。

 まさにいつの間にって感じだろうな。

 …さっきキッチンにこれらを出した時だよ。

 言えないけど…凄く言いたい。



「食材を出した時に鉄ちゃんがこれをまじまじと見つめていたので、好きそうかなぁ…と思いまして」



 それを聞いて、ギギギ…と動きの悪い人形の様な動きで女神がこっちを見る。

 で、その視線で「知っていたのか?」と問いかけて来る。

 辛うじて目は動かせるので必死に、伝えようとしていた事を目線でアピールする。

 その結果…



「そうねぇ…良いんじゃない?」


「やはりそうですわよね!」


「でもそれ以上混ぜたら隠し味でも何でも無くなるわよ?」


「うっ…そうですわね。」


「それに好きな物をこれ以上使うのもどうかと思うからこれは預かっておくわね。」



 そう言って、ラルから洗剤を取り返す。

 いや、奪ったと言った方が良いか?



「さて、それじゃ次の工程へ行きましょ!」


「「は~い」」



 そう言って二人を誘導し、次の工程に移っていく。

 で、二人が作業に夢中になっている隙にこっちを向いて手を合わせて謝ってきた。

 まぁ…あれだ、つまりさ…あれだろ?


 女神は言っているんだ。ここで死ね、と…






「さて、じゃあそろそろ二人共出来てるかしら?」


「えぇ、丁度終わりました」


「こっちも大丈夫ですわ!」



 唐突の死刑宣告から数十分、遂に絞首台に上る時が来た。

 間違えた、洗剤が出来たんだ。

 いや間違えた…お菓子だっけか?

 正解にたどり着いた気がするが、どうにも自信が無い。

 というか何だか、どうでもいいや…

 既に心の中には…諦めの精神が生まれつつある。



「じゃあそろそろ、実食タイムよ?鉄ちゃん?」



 女神がパチリと指を弾くと、さっきまで接着されていたかのように開かなかった口が開く様になる。



「気分はどうかしら?」


「まさに何でもアリだな…」


「ここはIFの世界だからね、私が念じれば何でもありなのよ」


「そうかい…」


「そんな投げやりにならないでほら、あ~ん」


「あ~」


 そう言って女神がチョコを突き出すと、俺の口がひとりでに開く。

 これは…逃がさないって事か?

 よく見ればチョコに「ごめんね!」って書いてある。

 謝るくらいなら是非とも作り直させて欲しかった。

 で、チョコ放り込まれるとこれまたひとりでに咀嚼し、飲み込む。

 うん、普通にチョコだ。

 デコレーションで使ったお菓子がサクサクといい食感を引き出して、尚且つチョコの甘味が生きてる。

 普通に美味しい。



「お味は如何?」


「普通に美味しい。」


「そう!良かったわぁ!」


「じゃあ次は私ね」



 お次はどうやらアンナのようだ。

 アンナのチョコは…デコレーションに関しては凄く真面目に作ってたと思う。

 白い粒状のチョコで丁寧に星の縁取りとかしてるしな。

 塩を大量投入した以外は多分安全ではあるとも思うし…



「あ~んって言いながら口元に持っていくと、ちゃんと食べてくれるわよ。」


「分かりました…はい、あ~ん」


「あ~…ん」



 さて、チョコが口に入ってきた訳だが…思わず吐き出してしまいそうになった。

 まぁ自動的に食わされるからそんな事は出来ないんだけどさ。

 デコレーションで使ったお菓子がサクサクカリカリといい食感を引き出して、尚且つチョコの甘味が死んでる。

 思ったよりしょっぱいっていうか…塩がチョコの形で固まったって感じだ。

 普通に塩…食ってる。



「味はどうかしら?」


「…しょっぱい」


「あら、じゃあ良かったわぁ!」


「良くねぇよ!」


「アハハ、じゃあ次はラルちゃんね!」


「は!はい!」



 さて、次は事実上の死刑宣告だ。

 こちらに近づいてくる足音は死神の足音だろうか…?

 いや、ラルの足音だ。

 その手にはまるで凶悪な見た目の鎌の様に一つのチョコレートが携えられている。


 チョコレートには隠し味に洗剤がふんだんに用られていて。

 コーンフレークの代わりにガーリックスライスがハートには散りばめられ。

 止めにペンシルの代わりにマスタードで模様が描かれている。

 おまけに何故だか分からないがチョコが白い。

 ホワイトチョコではないはずなのに、だ。




「頑張って作りましたのよ、テツ?」


「なぁ…ラル?一ついいか?」


「なんですの?」


「俺さ…こういうプレゼントってさ、例え砂糖を溶かして作ったべっこう飴でも嬉しいんだ。」


「そうなんですの?」


「こう、誰かが一生懸命食べられる物を作ってくれるってさ…どれだけありがたくて嬉しいか事かって気づいたんだ。」


「…テツ?」


「だから、礼を言いたくて…ありがとな。」


「分かりましたわ。

 はい、あ~ん。」


「あ、あ~…ん…」



 そうして開けた口にチョコが放り込まれる。

 そこには…決して優しさなどは無かった。

 ただ一欠片の厳しさと、地獄がそこには有った。

 その地獄に居てこみ上げてくる激情の中、ただただこう思う。

 今度ラルに何か作って貰うなら…せめて食べられる物なら何でもでいいや、と。

 そう、べっこう飴みたいな…

 

 ご視聴ありがとうございます。

 誤字脱字などあれば報告いただけると幸いです。


 数日かけた本編より七時間くらいネタを詰め込んで書いたこっちの方が長くなるとは…

 バレンタイン…恐るべし…

 まぁこれから本編は暫くネタ回が無さそうな展開になるかもしれないのでこんな話を挟みたいっていうのもありましたけど…

 前書きにも書きましたが本当に番外編なので、本編と印象が違う人もいると思いますが気にしないで下さい。

 ちなみに四方山話はよもやまばなしって読みます。

 世間話とかそういう意味ですがここでは番外編の意味で使いました。

 他にいい表現が有ったら変えるかもしれないです…

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