七十二話:元凶の村・後編
今回かなり残酷な表現やキツイ表現があります。
苦手な方、得意でない方はご視聴の際は十分に注意して下さい。
尚、お気分を悪くされても当方は一切責任は負いません。
後、今回は長めです。
どちらを優先するかにそう時間は掛からなかった。
と言うのもステータスを見た所、もうSPが回復していたからだ。
回復しているのなら、下手に遊ばせておく理由は無い。
それに使ったとしても屋敷の主の部屋の探索を後回しにすれば、その間に回復ができるだろう。
そういうわけで、行ってみようか。
そういう訳で屋敷にあった地図を片手に、近場の井戸までやってきた。
本当に近場も近場、徒歩一分ちょっとって距離だ。
で、見た感じ雨風に晒されている影響か井戸も相当に老朽化しており、既に水を汲み上げる為の桶や縄どころか囲いなんかも無い。
ロープや桶が無いことは見越して前もって屋敷の倉庫からかっぱらってきてるんだけどな。
数回使う分には持ってくれるだろう。
しっかし…井戸の囲いまで崩れ落ちてるから落とし穴みたいになってるな。
ちょっと覗き込んでみたけど…真っ暗闇だ。
どれだけ深いんだか…
もしここから落ちたら無事じゃすまないだろうな。
そんな事を考えながら、着々と井戸水を汲む準備をして桶を井戸に投げ込む。
準備とは言っても桶の取っ手にしっかり縄を縛ったくらいなんだけどさ。
後は落とさない様にしっかりと持って引き上げるだけだ。
しかし今更だけどここの井戸、枯れてないよな…?
駄目だったら他にも井戸はあるし、最悪井戸の底の土でも掬ってそれに霊力鑑定だ。
というか今ここで地面に霊力鑑定でも良いんだけど…お目当ての情報が得られる可能性が減りそうだ。
思いのほか消耗は激しいからな、あれ。
使ってみたいって誘惑は大いにあるけど、ここで乱用する気にはなれない。
気兼ねなく使う時はきっと…馬車組が合流した時だ。
そんな事を考えている間も下ろし続けているのだが、まだ底には着かないらしい。
どうやらここの井戸は相当に深いようだ。
いや、この場合は水脈が、か?
持ってきたロープも結構な長さだと思ったんだが、もう半分位下ろしている。
まぁ人も魔物も生きるためには水は不可欠だからな。
一応魔法で作った水も飲めない事はないらしいけど、出来るのはほぼ混じり物無しの純水が殆どだ。
とても飲めたものじゃないらしい。
しかも精製するのに使った魔力が体に作用して、どうにも体に良くないみたいだ。
何でも暫くの間魔力の操作に影響が出るとか…まぁ俺には関係無い事だな。
それに試してないけど霊力鑑定の為の操作を応用すれば、その副作用も無くせるんじゃないか?
なんて言ったって魔法印の魔力を吹き飛ばせたくらいだしな。
だがそれにしても…長いな!
まだ終わらないのかよ!
そういえば使用人Dの日記に、ここの水汲みは大変って書いてたっけか?
別の場所にすれば良かったと、ちょっと後悔する。
「つ…疲れた…」
結局、ほぼ最後まで下ろしてみてやっと手応えを感じた。
更にそれを今度は引き上げるのだから、そりゃあもう大変だった。
なにせあれだけ余計な事を考えている間ずっと下ろし続けていたんだから。
引き上げるのにはあれの倍近くの時間が掛かっている。
まぁそれだけ苦労した分の成果は…しっかりとこの桶に入っているが…
で、桶の中身だが…泥と浮いているゴミと…泥水だ。
そう、泥水だ。
これじゃあ飲用こそできないが…これもしっかりと水だ。
暫く放置したら、泥も沈むだろう。
使用人Dの日記によるならここの水は不味いみたいだ。
加えて結構前に聞いた話だけど、爺さんの話じゃここの人も魔物も全て死んでたって話だろ?
で、考えた訳だが…
水の汚染で滅んだんじゃないのか?ここ?
何かしらの毒になる物が水脈ないしは水を汚染したならありえる話だと思うんだが…
まぁそれも霊力鑑定の結果で分かるだろう。
[[ビビリウム]入り泥水]
主にビビリウムが溶けた泥水。
ビビリウムは水溶液中には本来は酸化力が強い物にごく僅かしか溶けない。
だがこれは本来ありえない、中性の水に多量に溶けている状態である。
---------------
-----------
------
これは…当たりか?
まぁ…このビビリウムっていう物質がどういう物かによるか。
って訳で更に…これだ!
[ビビリウム]
一般的に使われる事はないロスクの金属の一種。
固体は青色で非常に柔らかく、化合物も青色を呈する物が多い。
固体ではほぼ無害だが、水溶液では生物には非常に猛毒となる。
---------------
-----------
------
予想はしていたけどビンゴで間違いないみたいだな!
これでここいら一帯は全滅したって訳か…?
そんな事を真理理解の結果をみて考えながら、思わず手持ちの飲料水で触れた手を洗い流す。
別にもったいないとは思わない。
だって…猛毒なんだろ?
指先しか触れてないけど…これで何かあったらやだしな。
さて綺麗に流し終えた所で本題だが…
これで、呪いの本体に関して目処が立った訳だ。
だけど多くの疑問が残っている。
まず第一に、呪いはこれだけなのかって事だ。
これだけだと決めつけて後から問題が出るのは好ましくない。
まぁ引き続き候補が思い浮かんだらあたっていくべきだな。
第二に、何が理由でこんな事が起きたのかだ。
さっきの霊力鑑定でも、思いっきり『本来ありえない』って出てたしな。
少なくとも自然に起こったと考えるのは無理がある。
そうだったらそもそも最初から、この地域に人が住めてないだろう。
滅ぶ時期に何かしらの原因があって、こうなったと考えるべきだ。
だけど…他に思い当たる理由も無いんだよな…
まずビビリウムが金属だって事で魔法の線自体が一気に薄くなった。
ってかそれ以前にこれだけの規模に対しての魔法が使える人材が…この国に移民として来るか?
…まずないだろう。
有能なり危険な奴はまず野放しにしないだろうしな。
そんな事をする国は外から滅ぼされるか、テロででも滅ぶさ。
…と思考が逸れたな。
で、残るは集団でこんな事をしたって線だけど…ここに来てから見てきた限りだと地下水脈を金属で汚染し切るには…それこそ国一個分の人員がいるだろう。
ってか魔法的な物として捉えてた場合にありえない規模だから呪いなんて呼ばれているんだし…
結局の所、これも調査して地道に調べていくしかない。
狙ってやった事なのか、はたまた何かの実験の事故で起こってしまった事なのか…
そもそも誰かによって引き起こされた保証なんかない。
今の所分からずじまいだ。
だけど、その可能性の一端を検証することは出来る。
この村が呪いの中心となっているんだ。
何かしらの手がかりは、きっとあるだろう。
で、屋敷に戻ってきた訳だ。
それから日記に書かれている隠し場所から見事に鍵を手に入れ、開かなかった扉の前までやってきた。
しかし、その隠し場所が…まさかツボの下とはな…
ベタを地で行ってる気がする。
主にゾンビとか幽霊とか出てくる状況でのベタだ。
まぁ…そんな事はどうでもいいか、うん。
本当に…どうでもいいよな…?
とにかく!この先に何か手がかりがありそうだから探索しなければいけないのだ。
でも、よく考えたらこの先に死体があるんだよな。
この先がスプラッタな光景かと思うと…どうも気が滅入る。
…先に井戸の方に行きたくなってきた。
っていかんな、まだ探索前だというのになんだか弱気だ。
というか…緊張か?
なんだか落ち着かない。
…別にアンデットとかゾンビと戦う訳じゃないのにな。
「…よしっ!」
一度深呼吸して、心を落ち着かせる。
覚悟を決めたら、石札みたいな鍵を使って鍵を開けそのままゆっくりと扉を開けていく。
…ここまでは大丈夫だ。
そのまま開いた扉の隙間から、覗き込むような形で中を覗き込んでみる。
僅かに見える中の様子は…見える限りでは特に変わった所は無い。
だが、なんだか嫌な空気が肌に吹き付けてくる。
うまく表現は出来ないけど…それでも屋敷の他のどの場所とも匂いから雰囲気まで何もかも違っている。
少なくともここにあまり長居はしたくないな。
暫くこの状態で様子見はするんだけどさ…
だって…怖いじゃん?
それにさっき決めた覚悟の分はここまでだし…
次の覚悟をチャージするのだ。
---------------
-----------
------
…いつまでも開けっ放しにするのも焦れてきたので、意を決してそろそろ中に入ろうと思う。
それはつまり、覚悟のチャージが完了したとも言う。
で半開きになった扉を大きく開けて、そのまま中に入っていく。
半分は換気の為と、退路の確保だ。
それで部屋に入った感想だが、隙間から見えていた光景とそこまで差は無い。
思っていた様なショッキングな光景とか、スプラッタな光景はそこには無かった。
ベッドの近くを除いてな…
とは言ってもそのベッドに関してもただ、赤黒く染まった短剣と寝具があっただけだ。
まぁシーツには幾つもの刺し跡が残ってるんだけどな。
更に言うとメッタ刺しにされた存在はご丁寧にシーツが被せられており、そのままでは確認できない。
好奇心に駆られて確認する気も無いけどな。
どうせ白骨があるだけじゃないか?
さっさとお目当ての物を奪取したら脱出しようか。
という訳で幾つかある本棚から何かしら関係ありそうな本を適当に取っていく。
流石にここの村長なだけあって、呪い…この時点では流行り病って事になっているが、それに関しての調査書なんかもあった。
これも持っていこうか。
それ以外にも本棚には役立ちそうな物があった。
例えば魔物図鑑とか鉱脈の範囲予想図とか…
そういった物も持ち出せるだけ持っていくか。
他にも利権書なんかもあるけど…それは別に要らない…と思う。
どうせもう誰も住んでいない土地なんだから権利なんてないだろ。
で、頼りにしている日記なのだが…量が多い!
確認するだけで十数冊程書かれている。
これを全て読むのは骨が折れそうだ。
でも…使用人の日記を見る限り体調を崩し始めてから日記が絶えるまでは短い。
恐らく最後の方だけ確認すれば良いんじゃないか?
さて、日記を遡るように読んでいっている訳だが…
よくこんな人間が村長で、村の運営が出来ていたなぁと。
この内容…気が病みそうだ。
既に気分が悪い。
空気と相まって吐きそうだ。
なんとか二ヶ月とちょっと分は読んでいる訳だが…よく読めたなぁと自分でも感心する。
で、読んだ分の内容を要約するとだが…
まず日記を遡ることふた月くらい前までは…どうやら拉致監禁、拷問、殺害、埋葬のループだったみたいだ。
どこからか村の住民ではないよそ者を適当な名目で屋敷に招き地下室に監禁、そのまま拷問に掛けて苦しめた後に殺害、そして共犯者の使用人に埋葬を頼んでいた、と。
恐らくこの共犯者は、あの手記を残していたBさんだろう。
で、何も言わずに居なくなった使用人っていうのも恐らくこれの被害者だ。
これだけ聞けば相当にクレイジーな人物だと思えるだろう。
更に言うと監禁する為だけに、不眠に多少効果がある程度の睡眠魔法を改良した上で自ら一階に住んで上の部屋に泊めた人物に掛けていたようだ。
その執念は狂気じみているとしか言えない。
日記には監禁した相手をどうやって苦しめて心を折っていき、どのように生きる希望を奪い、どのような形で相手が死なせてくれと懇願してくるかまでの過程が事細かに書かれている。
…と言うのがおおよそふた月程前までの日記の内容だ。
そこから数日経過し、屋敷の主はまた新しい獲物を地下室に連れてきたと喜んでいた。
どうやら…子供らしい。
曰く、甚振りがいのある相手だとか。
曰く、成熟した者よりも心は長持ちするとか。
曰く、体は大人程に持ち、心は子供な存在は居ないのか…とか。
その日の日記の内容はより一層、狂気に満ち溢れていた。
その後もある日は鞭で打ち…
または爪を剥がして…
はたまた火でその身を焦がしていき…
逆に溺れない程度に息継ぎをさせながら冷水に浸からせたり…
その後何日にも渡り毎晩、狂気の宴が繰り広げられていたみたいだ。
そうしていく度にその子は痛みと苦しみに叫び、震え、泣き、次第に衰弱していったようだ。
だがそれと同時に、その瞳に宿る感情は高まっていったと書いてある…。
生きる事への意志と主への殺意を中心にその他諸々のドロドロとした感情を混ぜて完成した、鋭く輝きながら濁った色をしていた瞳がとても気に入っていたらしい。
でもそんな子供とも、あと少しでお別れだろうと…その時は悲しんでいた。
普通に考えれば、ここまでほぼ飲まず食わずで数日間過ごしている上に拷問だ。
そろそろ限界だっていうのは何も不思議じゃない。
で、コイツでもそれくらいは考えていたと。
でもその予想は大きく裏切られる事になっている。
日記の途絶える一ヶ月と少し前。
どうにもこのあたりから呪いの影響は出てきていたみたいだ。
死者こそまだ出ていないようだったが、多くの住民に症状が出始めていると書かれている。
この辺りで理由の調査の為に調査書の手配をしたようだ。
で、コイツと使用人の一人にだけには心当たりがあった。
そう、その子供だ。
日記で数えられる限りでもう三週間くらい、彼女は生き延びていた。
その間も碌に食事は無く、拷問は毎日欠かさずしっかりと行われていたのにだ。
彼女も相当に弱り力尽きる事が多くなってきているそうだが、それでも何故か死なないらしい。
流石にそんな彼女に二人共、恐怖があったようだ。
どんなに甚振っても死なずに、しかも毎日会いに来るたびに殺意の籠った瞳が光る。
それでいて、生命力を奪うかのように広がったこの症状。
狂人でも流石に見えない所から迫ってくる死は怖い、と。
最終的に、どうにかして彼女を殺す方向に向かったのはそれからかなり先の事だ。
具体的に言うとコイツに症状が出始めた辺り。
この辺りからこの日記の文章の猟奇的な所が更に目立つ様になっている。
付け加えてどうでもいい事だが、既に使用人の方は症状のせいで弱ってきていたみたいだ。
更に言うと死の恐怖からすっかり狂気に落ちて、骨が折れようが肉が裂けようが一晩中鞭を振るうこともあったらしい。
で、そんな中にコイツの狂気も加わったって訳だ。
その様子が割とはっきりと書かれていたが…思い出すだけでも気分が悪くなる。
そんな事をされていたって事だ。
だがそれでも、翌日には辛うじてか細い息を繋いで…生きていたそうだ。
どんなに苦痛を与えて死に近づいても一向に死が訪れる気配の無い…人の形をした何か。
病魔に侵されて動くのも少しずつ辛くなっていく自分。
このまま甚振り続けても先に力尽きるのは自分だと考えたコイツは、遂に強行策に出た。
まぁ、ひと思いに首を刎ねてそれから体を切り刻んだだけみたいなんだけど。
って感覚がマヒしてきてるな…これも十分に異常だよ。
で、それを使用人に命じて埋めさせたと。
さて、これで謎の呪いも収まり一件落着…とはならない。
それとこれとは別問題だったんだからな。
どうやら報告書によると倦怠感から始まり、高熱と寒気、全身に走る激痛に、果ては幻覚症状まで出る症状がでるようだが…これらは恐らく殆どビビリウムの影響だ。
人一人どうこうした所ですぐに収まるもんじゃない。
そうして段々と弱っていく、終わらない悪夢の中、何故か共犯者であった使用人に襲いかかられたそうだ。
ここに来ての裏切り展開である。
まぁ幻覚症状とかあるようだし…それだろうか?
で、襲いかかられた話だが…結果は返り討ちにして地下室に繋ぎ、逆に拷問にかけたと。
本当に最後までブレない野郎だ。
そして…ここからは日記の続きはない。
どうやらこの後、新入りの使用人に殺されたんだろう。
どうにも…誰も救われないお話である。
っていうかドロドロしすぎだ!
そんな殺して殺して殺されてって…バトル漫画じゃあるまいし…
昼ドラでももう少し大人しい展開だわ!
…なんて少しでもおどけてないとやってられない。
ただただ、このままでいたら…心が持たない。
今は少しでも…この内容を頭から遠ざけておきたい。
ぶっちゃけて…そんな感じだ。
後…真面目な話、確認した限りではその子供が怪しいってくらいか。
とりあえずいつまでもここに居るのが嫌になってきたので、一旦部屋から出たい。
…欲を言うなら、しばらくはもうここに来たくないな。
調査に必要そうな物はあらかた持っていこうか。
さっき仕分けはしていたので、それ以外は全て元あった場所に戻していく。
戻していくのだが…本棚を物色していたらふと違和感を覚えた。
と言うのも本棚から本を手に取っては戻してを繰り返しているのだが…
ゴト
ゴトン
ゴン
ゴトン……
「う~ん…ん?」
何だか本棚の一つだけ妙に音が響く。
他の本棚と特に作りが違っているわけでは無いのだが…
それでも響くって事は…どこかに反響する空間があるって事か?
その本棚の横を見ると丁度本棚一個分意味深なスペースがあったりするが…これではないだろう。
むしろズラすスペース…だな
「…まさか?」
そう、まさかだ。
思わず一人呟く。
この本棚をずらしたらまさか地下室への隠し通路なんて…あったりしないよな?
「うん、無いだろ」
悪いが今の俺は限界だ。
これ以上ここを探索する気分じゃない。
さっさと必要な物を運び出して外の空気を吸いたいのだ。
という訳で何も無い事にして、行こう。
前中と上げて来たんで残りは後の三編にしたかったんです…
残った部分を結構強引に詰め込んじゃいました。
苦情とかもう少しマイルドな表現が良いって意見が幾つか寄せられる事になったら多分書き直します。
具体的に、問題ありそうな部分を中心に。
そうなったら多分、分割もします。
私の中では既に昨日のバレンタイン成分が吹き飛びました。
切実にハートフル成分が欲しい。
あとギャグ成分も…




