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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
75/146

七十一話:元凶の村・中編

 

 今回少しドロドロとした人間関係の描写があります。

 苦手な方はご視聴の際はお気を付けて下さい。



 

 さて、目が覚めた。

 ベッドから出て窓から外を確認するが、まだまだ外は暗い。

 夜が明けるまではもう少しかかりそうだ。

 でも…さっきまで寝ていたとは思えない程、何故だか目が冴えている。

 する気はないけど…二度寝は出来そうにないな。

 というか、目に見えては何も起こってなくて良かった。


 で、前日の疲れも何処へやら、体調はすこぶる快調だ。

 というかなんであんなに疲れてたんだか…

 なんて思いながらステータスを確認してみる。

 寝ている間に呪われていたりしないかの確認だ。

 

 

Nameテッシン・ニジ(男)

Lv2

EXP547/5790



HP941/944

MP0/0

SP980/980



STR:159

VIT:188

AGI:164

DEX:138

SEN:181

WIL:233






アビリティ

・異世界人の成長ⅩⅩ

・文字言語理解

・真理理解Ⅱ

・女神の加護

・ステータス霊法(霊力鑑定)

・根性Ⅱ

・狂化耐性Ⅰ






 特にステータス低下とか、そういう事があったわけじゃない。

 呪いの影響があった訳じゃないし、大丈夫そうだな!


 って待て待て!

 何だかアビリティがおかしな事になってるって!

 思わずノリツッコミみたいになってしまったじゃないか!

 狂化耐性は…まぁ分かる。

 昨日は散々同じ風景を見せられて、発狂しそうに…はなってないけどかなりの負担になってたからな。

 だけど、ステータス霊法の所の…霊法鑑定って何だよ!?

 おまけに見たことの無い表記方法だぞ?これ?


 後、さらっと真理理解がⅡに上がってるし。

 もしかして疲れてた理由ってこれなんじゃないのか?

 とりあえず確認してみる為に、アビリティで変化のあった部分を指で弾いていく。




・真理理解Ⅱ

<ロスクにおける現象や自然物について対象を意識すればその本質を知識として吸収、理解することが出来る。

 Ⅰより理解出来る対象、内容が増えた。

 また対象に魔力を通して、その対象の持っている固有の情報を得られる鑑定が行える。>



・ステータス霊法(霊力鑑定)

<ステータスウインドウを霊力を使って開くことが出来るようになる。

 また、魔力による鑑定技能を霊力を用いて行うことが出来るようになる。>



・狂化耐性Ⅰ

<精神負担を伴う攻撃や環境からの影響を僅かに抑えられる。

 また程度の低い幻覚を看破出来る。>




 真理理解の説明を見てげんなりし、霊力鑑定の説明を見てほっこりし、狂化耐性の説明をみて納得した。

 まぁ…あれだ。

 真理理解で使えるようになった魔力鑑定をステータス霊法が霊力鑑定に変換したって訳だ。

 ステータス霊法の所に括弧付きで表記されてるのはステータス関連の技能だからか?


 しっかし、鑑定で分かるのは固有の情報か…

 普通に真理理解での情報と何が違うんだろうな?

 効果によってはこれからの調査にも使えそうな雰囲気なんだよな。

 そんな事を考えていたら、おもむろに近くにあった木剣に視線がいく。

 …試してみるか?


[堅焼樫製の木剣]

 堅焼樫の木の一部を剣の形に加工したもの。

 堅焼樫は強度が高くしなやかで良質な武具によく使われる。

 ---------------




 まずは普通に、真理理解を使った時はこうなる。

 Ⅱになった影響か少しばかり得られている情報が増えているが、やはり概略というか大雑把な事しか分からないな…

 で、次は霊力鑑定をしてみたいのだが…


「霊力を通す…かぁ?」


 忘れていたけど、前にこんな事をやった時は出来なかった様な…?

 まぁ、物は試しだ。

 もしかしたら出来るようになっているかもしれないしな。

 という訳で霊力を手から木剣に伝えるように放出してみる。


 以前と変わらずに霊力を内部に伝えるのには抵抗がある感じだが、前と比べて抵抗が下がっている様な感じだ。

 撥水加工が剥がれた衣服に染み込む水みたいな…

 …何だか表現が悪いな。

 まぁ良い表現が思いつかないからなんだけどさ。

 何はともあれ…これ頑張ったら伝え切れるんじゃないだろうか?




 なんていう淡い期待にそそのかされて四苦八苦すること暫く…

 ようやく霊力を内部に伝えることが出来た!

 強く密度を込めて送るんじゃなくてあえて弱く、僅かずつ送る事がコツだったんだな。


 オークファイターと戦った時を思い出して、何度も強く霊力を送ってたけど上手くはいかなかった。

 浸透するっちゃするけど長続きしないし、そもそも無理やり送り込んだら何か弾かれる感覚がある。

 多分この弾かれてる感覚っていうのは…魔力が関係してるんだろうな。

 魔法印の効果を消したのは、恐らくこれだ。


 まぁそれは置いておいて…

 霊力を送りこむのに時間を掛けていいなら、弱く僅かづつでいいみたいだ。

 そう、本当に弱く、僅かだ。

 普段のコントロールが手で物を自由に動かす感覚なら…指先で触れるか触れないかくらいの力加減だ。

 で、それ以上の力だと強い抵抗が働いてしまうって感じ。

 普段はより放出する方を考えていたから何だか難しい。


 で、霊力で満たした木剣を手に入れたのだが…何の為だっけ?



[赤橙樫の木剣]

 赤橙樫の枝から作り出した木剣。

 質のいい赤橙樫から丁寧に作られており、強度も切れ味も良い。

 持ち主の霊力に反応して少しずつ馴染んてきている。

 ---------------

 -----------

 -----




 そうそう!霊力鑑定の為だよ!

 目的を思い出しつつ出てきたウインドウにはこんな感じで霊力鑑定の結果が出てきた。

 どうやら…霊力鑑定を使った対象そのものの状態が分かるみたいだな。

 なる程…これは使えるぞ!

 まさに、この場に一番欲しいアビリティがここで身に付いたな。

 これが女神のおかげなら…今度会ったら、礼くらいはしとこう。

 いや、像を作っておくのも悪くないな…



 ぐぅ~…



 なんて本題から脱線して、やりもしない事を考えている内に腹の虫がなる。

 そういえば…昨日は何も食べずに寝たんだっけ?

 そりゃあ腹もなるか。

 ついでに夢中になりすぎてもう朝だよ…

 おまけにSPもごっそり減ってるし…


「はぁ…」


 ため息を一つつきながらリュックから携帯食と水を取り出す。

 キリがいいので朝食を取ろう。

 まぁ…飯を食って動き出す頃には最中に程々に回復するだろうしな。

 そんな事を考えながら硬くて丸っこい保存食と水を一緒に口に流し込む。 

 う~ん…微妙だ。

 シュルツ村で食べたあの堅パンよりはましだけどさ…




 そんなこんなで食事も終わり、準備も終わったのでそろそろ動き出そうと思う。

 手始めに…まずはこの屋敷の調査だな。

 いきなり外に出て霊力鑑定を使ってもいいけど、まだ全快してない。

 無駄に減らしっぱなしはいざって時に困るしな。

 それにこれだけ劣化が抑えられてる場所なら何かしらの手がかりがあってもおかしくないしな。

 日記あたりを探ってみるのがいいだろうか?

 プライバシーとか気になるところだけど、死人に口なしだ。




 という訳でほぼ全ての部屋と通路を巡って役に立ちそうな物を物色してみた。

 ほぼ全てなのは一箇所だけ、一階で入れなかった部屋があったからだ。

 恐らくそこがこの屋敷の主の部屋だと思うのだが…鍵が掛かっているのか、建て付けが悪くなっているのか…扉が開かなかった。

 今集めた物で何も得られなかったら、扉をぶち破って入ろうと思う。


 で、だが…

 めぼしい物を集めた結果、眼前のテーブルには使用人の手帳やら日記等に加えて、廊下に飾ってあったこの屋敷の見取り図と村の地図が並んでいる。

 地図はこれから村を見て回るのに必要だからな。

 しかし…成果は芳しくないな。

 だってこれくらいしか無かったし…

 主の部屋のドアが壊されるのは時間の問題になりそうだ。


 それで早速だが、手帳や日記から呪いに関する情報を探していこうと思うのだが…どうするか。

 まず、幾つか数こそあるけど…必要なのは村が滅ぶ最後の方だけだ。

 何かしら呪いの影響が出始めた辺りから読んでいけばいいしな。

 そうなると…どれも書きかけだからかあっという間に読み終わりそうだ。

 で、それぞれの日記や手帳を読んだ感想を順番にざっと並べると、こんな感じになった。




・使用人Aの日記

 いい年したオバさん?

 割と長年居るベテランでここの主については良く知っていた…みたいだ。

 で、頻繁に誰だか素性の知れない女を屋敷に連れ込む主の事を女癖が悪いとか書いてる。

 それでいて自分が生き遅れているのは屋敷の主のせいだとか… 

 新しく来た使用人が味覚音痴だとか、彼は仕事しないとか彼女は協調性が無いとか…日記というか大半は他の使用人の悪口が書かれている。

 それを除けば…最近来た使用人に教育という名目で嫌がらせをしてはメシウマといった感じだ。

 このオバさんが知っている限り、どうやら何十人もの使用人が何も言わずに突然姿を消すから、どうせその子のすぐに居なくなるだろう位の認識みたいだ。

 で、それからある日を境に日に日に体がだるくなっていき、その後に痛みを感じるようになりある所から空白。

 多分…そこで死亡か?

 余談だがどうやらその頃は呪いは只の流行病だと思われていたみたいだ。




・使用人Bの手帳

 日記が無く手帳なせいか、素性はよく分からなかった。

 で、手帳らしく最初の方にこの家での注意事項とかが事細かく書きこまれている。

 更に細かくスケジュールとか書き込んでいたり、掃除の手順とか来客への部屋の手配とか書いてる辺りマメな人だったのかもしれない。

 おまけに屋敷の主と何かの関係があったっぽい。

 所々によく分からない謎の指示が書き込まれている。

 そして最後の方にAさん、他一名の埋葬の手配記録がある。

 何やら怪我をしたという記述以降、何の記述もない。




・使用人Cのポエム帳(日記)

 ポエマーという名の中二病。

 あまり真面目でないのか、毎日は書いていないが日記を書いた日は最後に必ず詩が書かれている。

 更に事ある毎に吟遊詩人になりたいって書いてある。

 芸術を知っている人が屋敷に招かれた時は良く師事を仰いでいたみたいだ。

 最後の方では主が屋敷に招いた子供にダサいって言われてキレてる。

 Aさんと同じで倦怠感を感じ始めてから二、三回ポエムを書いて以降は空白。

 恐らくBさんに埋葬されたんだろう。

 余談だが俺から見ても、あれは無いと思う出来だった。




・使用人Dの日記

 一番の下っ端でドジっぽい。

 そして、日記が書かれている期間がひと月も無い。

 どうやら蟻の被害で廃村になった村から来た人物で色々と雑用をさせられていたみたいだ。

 ちなみにAさんに味覚音痴にと言われた人みたいだ。

 本人曰く、ここの水が不味いから料理に合わなかっただとか何とか。

 Aさんのいびりも厳しかったみたいで連日、日記の文字が水滴で滲んでいる。

 Bさんからは暴力を振るわれていたみたいだ。

 掃除中に親切でBさんの手伝いを行ったら殴られたとか…Bさん普通じゃないな。

 で、Cさんからは『何日で消えるかな…』なんて意味深なセリフを言われたと。

 そんな事もあって人間不信やら欝やらになったっぽい。

 その後周りが次々と倒れていくのをチャンスと感じ、屋敷からの逃亡計画を画策。

 ただ最終的に屋敷にいる人物への復讐を挟む形へとシフトしたみたいだ。

 で、それ以降は空白となっている。

 更に言うとこの人だけ最後まで体調不良に関する事が書かれていなかった。




 とまぁこんな感じだ。

 一言で言うと…ここの屋敷、問題だらけじゃねぇか!

 火曜日の昼下がりに良く見られる光景だろ?これ?

 それに他にも事件の香りがプンプンするぞ。


 まぁそれは後々、余裕が有ったら経緯は追うとして…

 何かと重要そうな事がDさんを中心に書かれてるな。

 というかDさん以外に重要な所がなさすぎるんだけどさ。

 で、よそから来たDさん曰く、水が不味い…か。

 更に言うと他の人との味覚の違いがこの人にはある。

 どうにもその辺、関係があると見ていい…だろうな。


 という訳で今から井戸に向かって見てもいいのだが、一つ問題がある。

 Dさんの犯行計画の中に、鍵の隠し場所が出てきていたのだ。

 まぁこの日記を見る人が居る頃にはすっかり影も形も無くなってるだろうしな。

 別に一階だし窓を割って入っても戸を壊して入っても良かった訳だが、どうやら鍵は手に入りそうだ。


 さて、井戸から行ってみるか屋敷の主の部屋にでも行ってみるか…





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