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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第二章 勇者と金属と大地と
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六十一話:憎めないタイプ?

 

 走れば十分程で町にはつくのだが、そのままトレントを引き連れて行くのには問題がある。

 という訳で街から多少離れた方向に逃げ、撒いた頃合を見計らい町に戻っている訳なのだが…



「ぜぇ…ぜぇ…」



 そのせいですっかり疲労困憊だ。

 …丸太を持ちながら逃げるんじゃなかった。

 しかもこれを持って行っても対して報酬も無いし。

 そもそも捨てて逃げても後から取りに行けばいい訳で…



「はぁ~…」



 疲労とやるせなさが混じったため息を深くつく。

 今なら少しばかり、欲を出して破滅する人の気持ちが分かる気がする。

 やはり人間、安全が一番である。

 そんな事を考えながらやや重い足取りで街まで歩いて行った。






 さて町に帰り、ギルドに着くと丁度爺さんがカウンターに座っていた。

 なので、ギルドに帰ってきて即刻で納品|(押し付け)を終えて、訓練所に行こうと爺さんに一言…



「という訳で爺さん、訓練所を借りるから!」


「いやどういう訳じゃい!説明せんか!」



 伝えて止められた次第である。



「いやぁ実は…かくかくしかじか、で。」



 手短に説明出来る便利なセリフだよな、これ。

 さてそう言って爺さんに説明を…



「きちんと説明せい!」



 まぁ出来ないよな。

 普通にかくかくしかじかなんて言っても理解出来るわけがない。

 正確には言語的にかくかくしかじかにあたる言葉なのだが…って別にどうでもいいか。



「爺さんなら分かると思ったんだけどな。」


「分かる訳ないじゃろ!」


「予想くらいしてもいいじゃん?」


「嫌じゃよ、めんどい。」



 昨日からやりたい放題なくせに…こういう事は面倒だと言うんだな。



「つーかトレントは狩ってきたから、仕事(クエスト)は終わったって事でいいじゃん。」


「そうじゃなそうじゃな。」



 ケロッとした顔で即答する辺り、予想はしてたんだろうな。

 …それを考えるとなんかイラっとする!

 爺さんのペースに飲まれたらメンドくさくなるのは目に見えてるから言わないけど!



「別にもう一回行ってきても良いんじゃよ?」


「トレントは暫くお断りだ!」



 トレント一匹を解体するだけで持ち運べる量の限界がくるし、そもそも自分一人で解体するのは相当手間が掛かるんだぞ!

 俺は武器強化(エンチャント)なんて出来ないし、只の石斧をひたすら振るうのも手が痛いし、その間も周囲に気を使わなきゃいけない。

 気を使っていても今日はあんな結果になった訳だしな。



「なんじゃ?実力不足でも感じたか?」


「それもあるし、そもそも単体で居ること無いでしょ?あれ。」


「な~にを分かりきった事を。」


「…分かってるなら一人で行かせるなよ。」


「しょうがないじゃろ?儂も斧を持った孫に追い回されたく無いからの。」



 そりゃ殆ど爺さんのせいだろうに。

 まぁジーニャさんもよくやるなぁとは思うけどさ…



「つーかそのせいで俺がトレントに追い回されたんだけど?」


「ドンマイ!」



 クソ!イラッとする!

 いい歳した爺さんからにやけ顔でサムズアップされながらドンマイなんて言われると無性に腹が立つ!



「まぁいい時間に戻って来れたんじゃからええじゃろ?」


「…あぁ、爺さんは親方の所に行くんだったっけ?」


「その様子だとお主は行かんか。」


「まぁね。」



 とりあえずヒールジェルは渡したし、すぐに傷も治るだろうからなぁ…

 それに毎日行く程深刻でもないだろ。

 

 と、ここで良い事を思い出したのでおもむろにリュックを下ろして中身を漁る。

 爺さんは俺が唐突に何をしだしたのかと不思議そうな顔をしていたが、すぐに取り出したものを見て顔をしかめる。

 取り出したのは勿論、魔力回復…液だ。



「という事でさ、はい!」


「いらん!いらんぞ!」



 手渡そうと持ったまま近づこうとすると、その分後退る。

 そういえば今朝はこれを置いていったけど、置いていった分はどうなったんだ?



「なんだよ?これ大好物なんだろ?」


「今日はもう飲んだからいらん!

 好物は一日一個までと決めておるんじゃ!」



 なんだそのおやつみたいなルールは。

 というか既に飲んだのね。

 流石ジーニャさんだ、仕事が早いな。

 いや、仕事じゃなくて…日課か?

 まぁそれは置いておいて…



「実はまだ物足りないんじゃないか?」


「いや!じゅーぶんじゃ!

 というか時間じゃし儂はそろそろ行くからの!」



 とかなんとか爺さんをおちょくっていたら逃げ出すようにしてギルドから出て行ってしまった。

 …俺が持ってきたトレントの素材をそのまま置きっぱなしにして。



「おい!爺さん!」


「あぁ、その素材は適当に倉庫にでも入れておいてくれ!

 急がんと時間に遅れそうなんでの!」



 そう言って昨日、逃げ出した時くらいの速さで走り去っていく。

 ちなみに時間的には昨日より断然早い時刻だ。

 つまり、時間を理由に逃げられた訳だ…



「はぁ…全く。」



 ため息を一つついてからここまで持ってきた素材類をギルドの倉庫の方に持っていく。

 まぁこんな風にため息を付けるのも、あの爺さんが憎めないタイプだからなんだろうな。

 いつの間にかこうやって軽口を叩けるような間柄になってるし。

 俺もあの爺さんに遠慮なんてしないで済んでるしな。


 きっとああやって普段はふざけまくってるけど、要所要所で真面目になるタイプだ

 …ったんだろうな。

 思い返してみたけどあの爺さん、真面目になってた所なんてあっただろうか?

 俺の記憶が正しければ…あれ?真面目か?なんて思うことはあったが、結局は爺さんの悪企みの始まりにすり替わってるような気がする。

 きっと膝の軟骨みたいに歳を取りすぎて真面目成分が磨り減ってるのかもしれないな。

 ジーニャさんが爺さんの真面目成分を取り戻してくれることを祈ろう。

 そんな事を考えてる内に素材を運び終わったのでこれから戦闘訓練をする為に誰もいない訓練所に向かう事にした。







 

 ご視聴ありがとうございます。

 ご指摘や感想などお待ちしています。

 ブクマ、評価も(ry

 


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