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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第一章 冒険者になる勇者
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四十三話:撤退完了

9/12 サブタイちょっと変更しましたが他に変更はないです。

 

「ケント君!レナさんにレイモンさん!撤退しましょう!」


 俺がローランさんを担いで走る横でヴァニラが周囲に、凛と響く声で向こうで戦っているテリア隊の面々に叫ぶ。

 ちょっと距離のあるレナは最後に何かするつもりか準備に入り、更に遠方のレイモンは防御主体のスタイルから一転して攻勢に出ている。

 ケントはさっき渡したオークとの交戦を早々と切り上げ、頃合いをみてかこっちに合流するが、こっちを見た瞬間…何とも言えない顔をする。

 まぁヴァニラの仕事を奪ってる訳だし、そうなるか。


「お前…それ……」


「非常事態だからな、しょうがないだろ。」


「お、おう…」


「よし、準備完了…束縛火鞭バインドウィップ・フレイム!」


 前方でレナが俺たちを追ってきていたオーク達目掛けて燃え盛る火炎を放つ。

 レナの手から火炎は次第に細長い形に代わり、後方にいるオーク達に着弾すると肉をチリチリと焼きながら身体に巻き付いていく。

 見る機会がないと思ったけど、これが言ってた鞭に形を変える魔法か。

 これだけ見ると縄って言った方がいいんじゃないか?なんて思うけど。


火炎鞭(ブレイズウィップ)


 更にレナは後方にいるレイモンの方へ二本の火の鞭を飛ばし、地面に着弾させる。

 地面に打ち付けるいい音と共に火炎は燃え盛り、周囲のゴブリンを寄せ付けない低めの防壁を作り出す。

 …中々万能だな。


「…さぁ!逃げるわよ!」


 魔力を大量に使った影響かよく見るとあまり顔色が良くないが、それでも走って逃げる分には問題がないみたいだ。

 こちらと合流した後、退路を確保しているレイモンの方へ向かう。

 しかし、ケント同様に合流したらレナからも言われるかと思ったが特に何も言われる事は無かった。

 何だか妙に不気味だが、まぁなるようにはなるだろ。

 向こうで戦っているレイモンはさっきの火の柵の内側にいるゴブリンの排除を終わらせた所だった。


「退路は確保出来た…ってお前ら早いな。」


「まぁな。」


「後は森を抜けるだけだ、さぁ行こう!。」


 そうしてみんなでゴブリンの包囲網を突破する。

 ゴブリン達も隙を突こうと仕掛けては来ようとするが、地面を走る火を怖がっているのか近づいてこない。

 ちなみにレイモンもこっちを見てきたとき何か言いたげだったが、冷たい視線を送ってくるだけで特に何も言うことは無かった。


「このまま真っ直ぐ抜ければ町側の方に出られるはずよ!」


 このままいけば恐らく振り切れるだろう。

 なにせ数が数だった、この森にいるほぼ全ての数の魔物が集まってたんじゃないか?

 追われている原因は気になるっちゃ気になるけど…それは馬車にでも戻ったらでいいだろ。

 あまり視界の良くない状況だから下手によそ見してると危ないしな。

 とは言っても心なしか行きよりもちょっと視界が広くなっている気がしないでもない。

 きっと目が慣れてきたんだろう。

 何はともあれ、しばらくそのまま森を突っ切ろうと走っていたのだが…


「…さっきからどうしたんだ?」


 しかし、何故か妙に皆の視線が気になる。

 最初は担いでいるローランさんを見ているだけかと思ったけど、気のせいじゃない。

 俺がローランさんを担いでいる都合で、自分を中心にテリア隊が周囲を索敵を(見渡)している…のだが、そのついでにこっちをチラチラと見てくる感じだ。


「だって、なぁ?」


 そう言ってケントは自分の目線より若干上の方に視線を移す。

 ついでに他の三人の視線も集まったのだが…ふとそこで嫌な予感がよぎる。

 全員が俺をさっきから見ている事。

 どうにもさっきから視界が広かったなぁって思ってた事。

 …そして今まで気にしてなかったけど、俺の首の後ろくらいで何かが風で揺れている事。

 こう、全身の血が冷た~くなっていくような感覚を感じる。


「そんなに真っ黒な髪なんて、村でも町でも見たことないからな。」


 周りを見るとケントに賛同するような感じで他の三人も首を振っている。


「というか、気づいてなかったのか?」


「うん…いつから?」


「えっと、オークを体当たりで突き飛ばした辺りから…」


「マジかぁ…」


 確かにあの時から頭が何か軽いなぁとか思ってたけど…なんで気づかないんだよ!俺!

 と心で自分に突っ込みつつ、空いている片手でフードを被りつつ、真剣にへこむ。

 せめてこの町にいる間は隠したかったんだけどなぁ…。


「今回は()()お前みたいな奴でも役にたったみたいだし、何も言わんさ。」


「えぇ、そうねぇ。」


 しっかし、さっきから喋って来なかったレイモンとレナは露骨に態度を変えてきたな。

 ちょっと悲しいが、これくらいが普通の反応だってシュルツ村にいた時に聞いたしそれについては別に凹むことじゃない。

 ケントとヴァニラみたいに珍しい生き物を見る目で見られるってのは中々奇妙な感覚だし、そっちの方が何となく辛いけど。

 まぁ、次はバレないようにすればいいさ。

 とまぁそんな事を考えながら会話をしている内に森の終わりが見えてきた。

 …追撃もなく逃げられてなによりだ。


「皆さん、森を出ます!」


 森の外に出るとここに来る前は日がまだ高かったのに今では日が町の向こうの山に落ちかけていた。

 たまに休んでいたとはいえ体感的にはまだそんなに経ってないって感覚だったんだが…時間って経つのが早いんだな。


「合図は任せなさい。」


 レナがそう言って空に火球を打ち上げる。

 これで迎えが来るはずだが、その間にも少しでも森から離れる為に歩く。

 そして十分に森から距離を取った頃に、ちょうどいいタイミングで迎えの馬車が見えて来た。

 で、馬車が俺達の前で止まり、凄い勢いでヒューズさんが出て来た。


「ローラン!ローランは無事か!」


 言葉を返すよりも先に、自分が抱えていたローランさんを渡す。

 意識は無かったのでとても鬼気迫る表情だったが、命に別状がなくただ気絶しているだけって事が分かると安心したのかちょっと泣きそうな顔をしつつ、ローランさんを馬車まで運んでいった。

 馬車の中からしばらく鼻を啜るような音とか『良かった…』なんて小さい声で聞こえた気がするが、気にしないでおこう。

 しかし残された俺たちはどうしたらいいのかちょっと困る訳だが…

 結局一分くらい経った後、何事も無かったかのようにひょっこりおっさんが馬車から顔を出した。


「どうした?早く乗れ、急いで戻るぞ。」


「「…了解(です)!」」


 ぶっきらぼうな感じで、もののついでだと言わんばかりの態度だが、置いていかない辺りは感謝されているんだろうか?

 ちゃっかり自分が泣いてた事は無かった事にしたけど…

 全員、反応に困った感じで返事をして各々馬車に乗り込んでいく。


「これで何とかこの依頼も終わりかぁ…」


 そんな事を呟きながらこの依頼を無事に終えられたとホッと息を付きながら乗り込む。

 そして、全員が乗ったことを確認すると馬車は町に向けて進んでいった。




ご視聴ありがとうございます。

感想などお待ちしてます。

ブクマ、評価などもしていただけたら幸いです。



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