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魔法がある異世界を魔力無しで生きるには  作者: リケル
第一章 冒険者になる勇者
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三十八話:探索開始

 


 依頼難度(クエストランク):Dランク

 内容:トーワの町近郊の森でローラン・ハープの探索、保護。

 報酬:探索で500チップ、保護時は2000チップ上乗せ。

 依頼人:ヒューズ・ハープ

 その他 

   ・依頼失敗時:ペナルティ無し

   ・個人指名:テッシン・ニジ及びテリア隊の計五人




 これが一応今回の依頼の内容だ。

 他にも色々と依頼書には書き込めるスペースが有ったりするが、急いでいた事もあり必要最低限の部分しか書かれていなかった。

 現在、自分とテリア隊…昨日食堂で出会ったEランクパーティーは依頼人のヒューズさんの馬車で森まで移動中だ。

 本来、人探しの依頼なんかは基本徒歩らしいが、今回は既にいる場所に目星がついているからか依頼人の厚意という形で送って貰っている。

 ついでにその移動中の馬車の中では時間を有効に使うべく作戦会議中だ。

 依頼人の意向もあり、森に着いたらそのまますぐに探索活動を活動したいというのもあるし、何より自分はテリア隊の役割分担を知らないし、向こうも同じだ。

 というわけでお互いの情報交換をし合うわけなのだが、流石に直接ステータスを見せるわけにもいかないので口頭でどういうことが得意、不得意かを説明し合う。

 んで、結局話し合った結果…


「とりあえず戦闘は普段のヴァニラが索敵、ケントが前衛でレイモンが中衛のアタッカー、(レナ)が後方から魔法って所にテッシンの前衛がもう一枚加わる形でいいかしら?」

「そうなるだろうな。」

「は~い!了解です!」

「あぁ…」

「俺も前衛の方が戦いやすいから助かるよ。」


 自分の立ち位置は前衛に決まった。

 先に向こうから得手不得手を説明された上に、ケント自身があの性格なので周りを見ずに攻めるだけしか能がないとの事なので(レナ、レイモン談)、状況をみてレイモンとフォローに回ったり魔法が完成するまで時間稼ぎが出来る前衛が欲しかったとの事だったので、それに乗っかった形だ。

 自分の武器は剣だし、何より相手の魔法をどうこう出来る妨害魔法が一番活躍出来るポジションだしな。

 俺を入れた戦闘陣形は俺とケントが前でその中間のやや後ろにレイモンとヴァニラが、最後にレナと並ぶ感じで、上から見ると状況に応じてVの字になったりYの字になったりする。

 ちなみにテリア隊の普段の役割分担は…


・ケント:いわゆるアタッカー、犬人特有らしいSTR(筋力)AGI(敏捷)肉体活性(ブースト)で活かしつつ、切り札の武器強化(エンチャント)を加えることで高い瞬間火力が出せる。でも周りが見えなくなる時がある。武器は木製で、俺のより幅広の剣。


・レイモン:遊撃担当、でも実質ケントのフォロー担当。肉体活性(ブースト)を使い槍で戦いながらある程度牽制くらいの威力で魔法を使ったりとか出来る上に地味に器用らしい。武器は木槍と僅かにだが火魔法との事。


・ヴァニラ:兎人で耳が良いから索敵担当との事、主に後方でレナの援護を担当、持ち前の素早さと魔法から撹乱をメインに立ち回って隠密からの一撃(ハイドアタック)することもあるらしいが臆病風に吹かれてよく失敗するらしい…。武器は先端がT字型の棍と各種属性の幻影魔法を少し。


・レナ:魔法担当、後ろからポンポンと強い魔法を撃ちまくる砲台。また魔法を紐や鞭みたいに扱う事が出来るらしい。武器は勿論各種魔法、近接時は短剣で応戦するらしい。


 大体こんな感じとの事。

 聞いた感じパーティーとしていい感じに役割分担が成り立ってはいる。

 ぶっちゃけ自分が居なくてもこのパーティーでやっていけない事はないと思うが、自分が加わることでレイモンの自由度が増して戦術の幅が広がるとか何とか。

 ちなみに言っておくが、この世界の住人は生活に不可欠な最低レベルの魔法は使える。

 具体的には刃物の切れ味をちょっと上げたり火種を起こしたりかすり傷を治したりなどだな。

 ここでいう武器はあくまで、実戦では時間が掛かり過ぎたり威力が出ないから使えないって物を除いたものだ。

 この中で本当に魔法が使えないのは俺だけだったりするし、魔力感知や妨害魔法なんて使えるのも俺だけだ。

 ちなみにこの二つは正規の魔法だと異常に難易度が高く、実戦で使える人間なんてそうは居ないらしく相当驚かれたので適当に誤魔化しておいた。

 後は…何故、こうして一緒に戦う事を想定して考えているのかなのだが…


「バラバラに動くわけにはいかないのか?」


「当たり前じゃない。私達一人一人じゃオーク一体がせいぜい限界だもの。」


 探索効率を重視した質問に、こんな返答がレナから自嘲げに笑いつつ帰ってきた。

 他のメンバーも同じ反論せず、若干俯きがちに黙り込む。

 ケントは何か言いたげにしていたが、やはり口は挟まなかった。

 それにしてもこれがEランク冒険者の実力なのか…

 魔物のランクが一つ違うだけで最低でも必要な能力が大幅に違うのは知っていたが、冒険者のランクも大きな隔たりがあるみたいだ。

 前にCランク魔物は一般冒険者10人で余裕、Bランクで最低10人は必要なんて事を言ったと思うけど、本当のCランクの最低ラインは一般冒険者一人で、確率的には半々ってレベルだ。

 それからついでに言うと、Dランク魔物は一般冒険者であれば余裕を持って倒せるって強さである。

 いや逆か、一般冒険者のラインがDランク魔物に苦戦せずに倒せる強さなはずだ。 

 ついでにその程度の強さになれば文句なく冒険者Dランクである。

 しっかし…Dランクのオーク相手にそんな状況なら彼らの戦闘力はアンナより大幅に低いと見ていいだろうなぁ。


「やっぱそうだよな…」


 自分ならいけるかもしれないと思うが、ここは彼らに合わせておく。

 …幸先が悪いというか、いきなり不安である。

 しかも作戦会議だけでいつの間にか森が見える距離まで来ているし…


「さて、送れるのはここまでだ。」


 そう言って森のすぐ近くに馬車を停める。

 だが森から魔物が出て来て馬車が襲われると危険なので、出発した後この馬車はすぐに森から離れる。

 そして俺たちが合図をしたら戻ってきたら急いで駆けつけて回収するって寸法だ。


「よし、降りよう!」


 そしてテリア隊が馬車から降り、自分も続こうとしたところで…


「テッシン。」


 唐突にヒューズさんに呼び止められる。

 手には先ほどギルドで奪うように取っていったからずっと持っていた白尖の短剣を相変わらず握っているのだが…それを差し出すようにこちらに向けてくる。


「これを持っていけ、一応これは…拾ったお前の物だ。」


 これを渡そうとするヒューズさんの顔は、本当にいいんですか?などとは聞けそうにない程、何か複雑な表情をしている。

 これは恐らく依頼対象(ローラン)の持ち物だろうに、何でわざわざ手放す様な真似をするのか…

 これに見合う報酬でも渡せばいいだろうにと思うのだが、まあ…決意が鈍るとかそんな感じだろうか?

 何はともあれもらえるものは貰う、大事に使わせてもらおう。


「…分かりました。」


 そのまま差し出された短剣を受け取り、鞘代わりの革袋に仕舞う。

 少々仕舞うのにもたついていたら、痺れを切らせたのか馬車の外からケントの声が響く。


「遅いぞテッシン!早く来いよ!」


「今行くよ!…では。」


 ヒューズさんに一礼してから俺も急いで馬車から降りる。

 そして俺が降りるのを確認したら、すぐに馬車は反転して引き返していった。

 他のメンバーは、ヴァニラが森のすぐ傍で耳を動かして周囲の音を拾っているのを邪魔しないように静かに周囲を確認していた。


「ヴァニラ、どうだ?」


「近くで物音はしないです!」


 レイモンの確認にヴァニラがピコピコと動かして耳をピンと張って答える。

 どうやら周囲には特に魔物も動物も居ないみたいだな。

 しかしこういう探索で耳が良いって結構頼りになるよな、森の中となると視界は悪いだろうし…


「じゃあ皆、打ち合わせ通り行きましょ。」


 レナの言葉に皆が頷き、俺達は依頼対象(ローランさん)を探すべく薄暗い森に入っていった。



なんか中途半端に区切ってしまった気がする…

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