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07 魔石の再生

 離れはしんと静まり返っている。

 メイドも下男も寄り付かない。石造りの部屋は芯まで冷え切っていた。

 私は真っ直ぐに進み、寝室の隣にある小部屋を開ける。

 隅に置かれた木箱の前にしゃがみ込み、蓋を開けた。


 そこには子どもの頃から集めた石が入っていた。

 ごつごつとして鈍い色のサファイアの原石、キラキラと光を屈折させる透き通った水晶、そして――先日手にした火の魔石。


 形が気に入って、拾っておいたものもたくさんあった。

 凝ったカッティングを施されたもの、高純度の魔石として高値で取引されていたもの。

 使い捨てで、空になった魔石など、ゴミと同じだ。せいぜい庭の砂利石としてしか役に立たない。

 そんな石たちを見捨てることなどできなくて、手元に置いていた。

 家族に冷遇されている今の私と、よく似ている。


 昨夜光ったタイ留めが、どうしても頭から離れなかった。

 もしかして、他の石でも同じように光るのか。


 箱の底に転がっていた、輝きを失った魔石を二、三個手に取り、宙に翳して透かしてみる。

 少し、濁っている。僅かな光も宿していない。

 私は立ち上がり部屋に戻ると、椅子に深く腰掛けて、ひとつの石を強く握った。

 

 大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出して呼吸を整える。

 窓からは夕方の光が差し込んでいた。

 オレンジ色の光はほんのりと温かい。その温もりが体を巡り、手の中の石と混ざり合う。


 目を瞑ると、私の中をピリピリとしたものが流れているのがわかった。それは迷いなく手の中の石へと向かっている。

 石が、かすかに震えている。まるで初めて触れる熱に反応するかのように。

 私はなだめるようにそれを撫で、手の中に意識を集中させた。


 ほっとしたのか、石の中からじわりと熱を帯びる。

 まるで孵る直前の卵のように。


 ゆっくりと目を開けた時に飛び込んできたものは――。

 ほんのりと中心部に光を灯した魔石だった。

 使い切った魔石は、二度と元には戻らない、はずだった。


「まさか、本当に?」

 先程までは何の力もない石だった。


 それなのに――。


 失われた魔力を取り戻し、美しく蘇った。

 手の中で、喜んでいるかのようにキラリと光る。


 これは、偶然じゃない。

 ――確かめないと。


 もうひとつ空の魔石を掴み、外へ出た。

 ポンプ式の井戸を動かし、流れる水に片手で触れる。

 私は目を瞑り、手の中のものに意識を集中させた。


 現れたのは――青く輝く水の魔石だ。

 

「私にも、できることがあったんだ」

 手の中で淡く輝く魔石。

 その中には、私の未来と――知られてはいけない危険が、確かに宿っていた。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


よろしければ、続きを読んでいただけると嬉しいです。

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