↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
41/57

41 魔食いの狙い

「リディアさん? どうされたんですの、リディアさん!」

 石のように固まっていた私を、アデレイドさまが呼び戻す。


 まだ先ほどの恐怖が頭から離れない。

 氷狼が騎士を襲った理由が、形になりかけている。

 肌は粟立ち、毛が逆立っていた。


「あ……だ、大丈夫ですアデレイドさま」

 まだ焦点が合わない。目が霞む。

 私はハッとした。

「あ、アデレイドさま、騎士の皆さんが危ないかもしれません」


 私は椅子に腰を下ろし、さきほどの考えを口にした。

「鉱山の魔石の魔力を吸い取っていた小さな魔獣が、一回り大きな魔獣に食べられ、更に強い魔獣に食べられます」

「その頂点がさきほどの氷狼などの魔獣なのですね」

 はいと私は頷いた。


「それらは魔食いと呼ばれ、魔力を持つ生き物を餌とします。やがて物足りなくなり、より強力な魔力を持つものを食べようとする」

「小さな獲物より、より大きなものを狙うようになりますわよね」

 一度で満腹になりますし、とアデレイドさまは付け加える。


「その、より強力な魔力を持つ存在と言えば――」

「氷狼よりもですの? 火熊、あるいはひとつ目の巨人などですの?」

 アデレイドさまは、伝説の魔物の名前を口にする。


「いえ、もっと身近です」

「ゴーレムかしら。それともグリフィンですの?」

 極稀に、目撃情報のある魔物たちだ。


「魔力――持ち?」

 氷狼は、弱い庶民の案内人ではなく、魔力を持つ騎士を狙った。


 アデレイドさまはハッと目を見開き、自分の両手をじっと見つめる。

「魔力を持っている……って、まさか、もしかして、……私たちのことですの?」

 その手が震えていた。


 ゴクリと唾を飲み込む音がする。

 アデレイドさまは唇を噛み締め、拳をグッと握りしめた。


「大丈夫ですわリディアさん。きっといい方法がありますわ」

 そう言いながら、ソファから立ち上がる。


「まだ騎士たちも守って下さっています。必要ならば父に話して、他の騎士団にも働きかけてもらいます。皆で対処に当たれば、できないことなどありませんわ。私たちも出来ることを致しましょう」

 こちらを振り返り、大輪の薔薇のような笑顔を向けた。


「私、……私にできること」

 魔力ゼロと判定され、無能と言われた私に、何ができるのだろう。

 遠い昔――魔力判定の水晶が光らなかった、あの日の視線の痛みがぶり返す。

 胸がギュッと縮こまり、押し潰されそうな痛みが走る。


 私にはアデレイドさまのように、氷結蛙に立ち向かう力もない。

 フランツ先生のような知恵も、レオンさまのような魔法陣の知識もなかった。


「あなたには、素晴らしい力があるではありませんか」

 アデレイドさまは私の手を取り、ニッコリと笑う。


「自然の力を取り込んで、魔石に魔力を注ぎ込む。――それが」

「ええ、何だってできますわよ。騎士団の荷物を運ぶ魔道車を動かすことも」

 動力を使ってポンプで水を汲み出す。

 魔法杖の魔石に魔力を込めることだって。


 その言葉が胸に響く。エネルギーに詳しい彼女は様々なことを教えてくれた。

 私にも出来ることはたくさんある。

 騎士さまたちに、魔力を込めた魔石を使ってもらうことだって。


 その時初めて自分の価値に気がついた。


「魔石の研究をして、よりたくさんの魔石に魔力を込める」

 私はお腹に力を入れた。

「やります。私は私にできることを!」


 部屋の中でリンと鈴の音のような音がする。

 それは共鳴となり、広がっていく。

 待っていたよと魔石たちが喜んでいる――気がした。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

リディアが、空っぽの魔石からどんな未来を切り開いていくのか。

引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。

面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!

どうぞよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。