↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
40/57

40 魔食い魔獣の魔石

「あの、この魔石、いただけませんか」

 私はこの現場を束ねている騎士に尋ねてみた。

 ダメで元々、上手く手に入れられれば、研究の大きなヒントになるかもしれないと思ったからだ。


「いや、領地のお嬢さんの頼みでも、重要な魔獣の手がかりを渡すわけにはいきません」

 あっさりと断られてしまった。

 それはそうだろう。騎士団にしても重要な証拠だ。

 この氷狼は弱い案内人ではなく、屈強な騎士を襲ったと言っていた。

 小娘に頼まれたからと言って、そんな凶暴な魔獣の魔石をおいそれと渡すわけにはいかないのだろう。

 

「いや、待って下さい隊長」

 内臓を選り分けていた騎士が、隊長を見上げる。


「魔石はひとつではありません。あと2つ、小さなものが見つかりました」

 大きな魔石と同じ色をした小さな魔石が、彼の手のひらに乗っている。

 形からして戦闘の衝撃で割れたのかもしれない。

 やはり滲み出る冷気でできた白いモヤのようなものが纏わりついていた。


「俺からもお願いします」

 後ろに控えていたルーカスお兄さまが頭を下げる。

「妹の研究は、この事態を動かすかもしれません」


「ふむ……いいだろう」

 隊長は少し考えて、そう言った。

「核となっていた魔石は手に入ったのだから、騎士団での分析はそちらで出来る」

 手のひらに魔石を乗せていた騎士をチラリと見て、顎をシャクった。


「では、洗浄しておきます」

 魔石は水で血を洗い流した後、私に渡された。



「まぁリディアさん。なんて物を手に入れてきたんですの!」

 学院へ戻ってから先生に報告に行くと、研究室に来ていたアデレイドさまが呆れた顔をする。

「ゆっくり休むために家に戻ったのに、騎士を襲った魔獣の魔石を手に入れて来るなんて!」

 耳が痛い。でもこれで、研究も進むだろう。


「観察器に掛ける時は、私も呼んで下さいまし」

 いたずらっぽい光を瞳に宿し、そっと私に耳打ちをした。


「魔食いの魔石……しかも小さな火ネズミではなく凶暴な氷狼。これは非常に重要な発見ですぞ。魔石が枯れる原因が突き止められれば、国を救うことになるかもしれません」

 机の上に置かれた氷狼の魔石を眺めながら、先生がつぶやく。


 そして

「リディアさん、いいお顔になられましたな」

 と、私を見つめて微笑んだ。


「今のあなたは立派な研究者だ。立ち止まらず、思った道を進むんですぞ」

 そう言って、いたわるように私の頭を撫でてくれた。



 冒険者ギルドで購入した霜氷蛇の魔石、そして今回手に入れた氷狼のもの。

 同じ属性の2つを並べ、観察器に掛けてみる。

「やっぱり……この魔石、数値が大きすぎる」

 すると、霜氷蛇が3だったのに対し、658という数値を叩き出した。

 霜氷蛇の魔石だって、冒険者が倒した魔獣の中から見つかった数少ない貴重なものだ。

 ギルド職員も、最近はなかなか見つからないと言っていた。


「んまっ。こんなに小さな欠片なのに、なんですの、この数値。我が家の氷室をひと夏維持できるほどですわ」

 侯爵家の氷室――それは相当に巨大なものだろう。

 何十人もの使用人を抱える家だ。食料品は莫大な量のはずだった。


「大きさに対しても魔力量が多過ぎますね」

 私はレオンさまが持って来た、火ネズミの魔石に目をやった。

「これも魔食いの魔石」

 食物連鎖で魔力が積み重なり、強い魔獣ほど膨大な量になっていく。


「そして、騎士を襲った……魔力を持つ強い騎士を」


 魔力?


 まさか……まさか!


 私は恐ろしいことに思い当たり、身震いをした。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


よろしければ、続きを読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。