↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/57

04 魔力無し判定

 どうして……


 なぜこんな事になったのか。考えても頭が回らない。

 まるで霧の中で目隠しされたまま歩いているような、そんな迷路に入り込む。


 ジークとは仲が良かった。彼と会うのはとても楽しかったし、将来のこともたくさん話していた。

 いつかグレイ子爵家に入って、父の仕事を手伝う彼を支え、家を守りながら暮らしていく。

 そうして可愛い子どもにも恵まれて、笑いながら生きていくのだと信じていた。

 その未来が砂のように、手の中からこぼれ落ちていく。


 いつの間にか頬に熱いものが伝っている。

 それが涙なのだと今の私にはわからない。


 胸の上で私を見上げている祖母のペンダントに、涙がポトリと落ちる。

 それに反応するように、キラリと光った。

「おばあさま……私を慰めてくださるの?」

 握りしめると温かい。まるで抱きしめられているようだ。

 

 その時、枕元にある魔石切れで動かないはずのランプが、一瞬光った。

「え……?」

 何が起こったのかはわからない。

 ペンダントを手にしたまま、私はベッドに深く沈んでいった。



 14歳だったあの時に、私の未来は変わってしまった。

 それは貴族なら誰でも受ける、魔力判定の日のことだ。


「私にはどんな魔力があるのかな。おじいさまと同じ土魔法? それなら大好きな魔石のそばで、鉱山のお手伝いができる」

「長男のエーリヒは氷、次男のルーカスは水の魔力。きっとあなたにも家の役に立つ素晴らしい力が宿っていますよ」

 母は優しく私の頭を撫でてくれた。

 私は服の下に隠された御守り――おばあさまの魔石を組み込んだペンダントを握りしめる。

 そして両親と二番目の兄と共に、同じ年の子女が集まる教会へと足を運んだのだった。


 皆興奮しながら順番を待っていた。

 一人ひとり、教会が用意した水晶に手を当てて、その魔力を確かめる。

 ある少年が手をかざすと、水晶の中にポツンと赤い火が灯った。

「やった! 火の魔力だ。騎士になって強くなるぞ」

 彼はきっと、その力で国を守ってくれるだろう。


「私は光の魔法だわ! 困っている人たちを助けたい」

 珍しい癒しの魔力を持った少女が現れた。

 集まっていた人たちからどよめきが起こる。

 皆喜びを噛み締め合い、家族と将来について語りながら、教会を後にしていた。


「さ、リディア。あなたの番ですよ」

「はいっ!」

 私は母に背中を押され、丸く透明な水晶に手をかざす。


 ……え?


 脇に控えていた神官たちに、動揺が走った。

「あ、あの、何も映らないんですけど」

 私は焦って、助けを求めるように彼らに視線を向ける。

 

「これは……」

 白い服の神官たちは、互いに顔を見合わせた。

 そして、私にはわからない言葉で何かヒソヒソ話している。


 一番位の高そうな、袖に金の刺繍が入った神官が私に向き合う。

「残念ですが、リディア・フォン・エルツベルクさま。あなたに魔力はありません」

 無情な言葉が私の上を通り過ぎた。

 氷の刃で貫かれたような衝撃が、胸に走る。


 そんな、嘘!


 もう一度手をかざしてみたけれど、結果は同じだ。

 今度は反対側の手を水晶に当ててみたけれど、何も映らない!

「光って!」

 そう叫ぶのに、水晶はただ静かに佇んでいた。

 

 父が呆然とする私の肩をそっと抱いて、隅に連れて行く。

 次に水晶の前に立った子には、水色の光――風の魔力が宿っていた。


「我がエルツベルク家の娘に魔力がないだなんて、おかしい。他の教会でもう一度見てもらいましょう、父上」

 まだ魔力判定の子たちの列は続いている。

 ルーカスお兄さまの言葉が、高い天井に吸い込まれていく。


 けれど、私の魔力が水晶に映ることは、なかったのだ。

 父は体の影に私を隠すようにして、私たち一家はその場から立ち去った。



 喜びであふれる教会の隅で、一人の神官が壁を見上げ、疑問を口にする。

「妙だな。切れていた魔石ランプが光っている」

 その声も、人々のざわめきの中に消えていった。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


よろしければ、続きを読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。