35 魔獣の出現
学院の研究室で、集めた魔石を分析していた。
属性や魔力の質を系統立てて、仕分けている。
ただ使うだけではわからない、様々なことが見えてくる。
「あっ。ダメよネイオウ!」
膝の上でくつろいでいたネイオウが、尻尾でピンピンッと端に置いてあった魔石を弾いた。
二つの魔石が床に転がり落ちる。
私はネイオウを抱いたまま立ち上がり、魔石を拾った。
「もうっ。イタズラ好きなんだから」
文句を言いながら、手の中に目を落とす。
すると、二つの魔石の光り方が妙に似ているのに気がついた。
「これ……レオンさまが持ち込んだ火ネズミの魔石。それに、冒険者ギルドで買った岩モグラの魔石」
他と違い、まるで生きているかのように鮮やかな輝きだ。
ネイオウはもうおとなしくなり、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
白黒の毛並みを撫でながら、どうして違うのかと考えた。
この二つはエルツベルク領の鉱山で獲れた魔石だ。
しかも、あの魔石が採れなくなった坑道の魔獣から出たものだった。
偶然だろうか。けれど、妙に引っかかる。
私は観察器に置いて詳しく見てみる。
「えっ……光り方が同じ?」
火と土の魔石だ。本来、性質はかなり違う。
翼トカゲや霜氷蛇など、同じくらいの大きさの魔獣の魔石と数値自体は同程度、なのに密度だけが異常に高い。
魔力がギュッと固まっているようだ。
「なぜ……?」
疑問が頭の中で渦巻いていた。
もう一度測定し直そうと覗き直したときだった。
「急ぎなので失礼する、リディアさん!」
突然ノックもなしにドアが開けられた。
驚いて顔を上げると、レオンさまが駆け込んでくる。
「ど、どうされたのですか」
彼は額に汗を浮かべ、息を切らせている。
「魔獣が現れた。エルツベルク領にだ」
近年、騎士や冒険者たちの活躍により、魔獣の出現頻度は減っていた。
人の多い町や村なら、年に数件の報告しかない。
それも先日の、氷結蛙などの小さなものだ。
「どんな魔獣なんですか」
「氷狼と火熊だ。どちらも凶暴で、一般人が襲われたらひとたまりもない」
私は凍りついた。
俊敏で凶暴と言われる、魔獣の中でも厄介な類だ。
単体で討伐依頼が出るほどで、並の冒険者では手に負えないかもしれない。
「領都に現れたので、騎士団でも警戒している。恐らく、第三騎士団が動くだろう」
ルーカスお兄さまがいる部隊だ。
領地に詳しい兄がいるから、第三騎士団が担当になるのだろう。
「君も気をつけ給え。――ゴーレムに襲われた時のように、通学路に出ないとも限らない」
私はネイオウを抱いたまま、身を震わせていた。
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