14 秘密の相談
いつものように、学校帰りに石を拾う。
石の山を崩して掘り返すと、鈍く光る鉱石が現れた。
ざくろ石や水晶などもよく採れる。けれど――。
「空の魔石」
元は高純度な魔石だったのだろう。たくさんの空の魔石が捨てられていた。
「なぜ魔石が採れんのだ!」
報告書が机に叩きつけられ、はらはらと床に落ちた。
父はもうずっと異変続きで荒れている。
鉱山で魔石は出るけれど、魔力を宿していない。
不要な石を捨てるズリ山には、空の魔石が積み上がるばかりだ。
「このままでは、エルツベルク領が立ち行きません」
エーリヒお兄さまも、唇を震わせる。
父は苛立ちを隠そうともせず、部屋の中を歩き回るばかりだった。
本当に。
「誰が魔石を使ったの?」
以前は高値で売れる、魔力に満ちた魔石がたくさん採れていた。
鉱石の中から掘り出される、真新しい物まで光はない。
そのせいで、空っぽ魔石のコレクションが増えてしまった。
私は拾ってきた空の魔石を机に並べた。
色が抜け、すっかり曇ってしまっている。もう何の力も残っていない。
「本当に……私にできるの?」
窓際に椅子を置いて、日の当たる場所に座った。
形のいい、元は高純度だったと思われる石を手に取る。
柔らかな冬の日差しが暖かい。太陽の恵みを肌に受けて、じんわりと熱が広がっていく。
手の中にある冷たい石は、私の体温で温かくなる。
しばらく目を閉じて、陽だまりの心地よさに身を委ねる。
頬に当たる光は優しくて、呼吸がゆっくりと落ち着いていく。
不意に手の中に熱を感じた。
まるで孵る寸前の卵のように、中からわずかな振動が響いてくる。
手をゆっくりと開いた時に現れたのは――針の先ほどの小さな光を灯した魔石だった。
私の手の中で、小さな魔石の力が誕生した。
もうひとつ、細長く曇った石を手に取った。
先程と同じように、石に意識を集中して力を込める。
「こっちは光らない」
石の質にもよるのだろうか。二つ三つと試してみると、光の大きさがそれぞれ違った。
ノートを取り出して、石の大きさや透明度、光の強さなどの特徴を記録する。
それから数日、私は思いつく限りのことを試してみた。
温泉に入り、ぽかぽかと温まっている時に石に触れると力が込められる。
暖炉の前で、ウトウトしている時も、魔石は小さな赤い光を宿した。
「きゃっ!」
蛇口をひねりすぎて水を浴びてしまった時は、偶然持っていた水の魔石に魔力が満ちた。
ここにもいるよと言いたげに青く光る魔石に、ほんのりと温かな気持ちになった。
私は――自然の力を石に伝えることができるのだ。
初めて自覚した小さな力。
けれど肩にズシリと重みが加わる。嬉しさよりも不安が先に立つ。
これは――私ひとりで抱えられるものではないだろう。
この力は、魔石のあり方を変えてしまうかもしれない。
そう思った瞬間、思い浮かんだのは、蔵書の森の中で穏やかな笑みを浮かべて猫を抱くフランツ先生の姿だった。
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