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ねずみ講式経験値収集魔法陣で下剋上 ~君の経験値は僕のモノ。史上最悪のピラミッド型搾取システムで復讐を誓う~  作者: 団田図


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第2話 改変

 古代の邪悪な皇帝が作り上げた国家級の暗黒儀式「万魔帰一の陣」。数秘術と魔法幾何学の視点から見れば、その魔力変換効率そのものは悪くない。だが、システム全体を俯瞰した時の「ビジネスモデル」としては致命的な欠陥を抱えていた。


 かつて僕の完璧な防衛陣を売り飛ばした一人の賢人や、僕を奴隷に落としたこの帝国の連中と同じだ。目先の利益しか見えず、奪い尽くすことしか知らない。


「なら、僕が教えてやる。本当に恐ろしい『搾取』の形を」


 僕は足元に転がっていた鋭利な石の破片を拾い上げ、躊躇なく自分の掌を切り裂いた。


 ぼたぼたと滴る自らの血をインク代わりに、床に刻まれた古代の陣のベクトルを書き換え始める。


 僕が再構築するシステムの基本理念はシンプルだ。「生贄を殺すな」。


 生かさず殺さず、搾取の割合を『九割』に固定するマージン制へと変更する。この世界では、誰もが『ステータス画面』で数値化された己の能力を確認できる。稼いだ経験値の一割だけは本人に残すことで、彼らは生かされ、ステータス上のささやかな成長を実感し、さらに狂ったように下位者を見つけ、勧誘して働き続けるだろう。


 坑道の外から、今日も奴隷たちの怨嗟の声が響いてくる。


『あいつより上の立場になりたい』

『楽して稼ぎたい』

『誰か俺の代わりにツルハシを振ってくれ』


 それだ。それこそが最高の動力源だ。


 僕は陣の媒介を、強制から人間のリアルな『強欲』へと繋ぎ変えた。他者を蹴落としてでも自分が上に立ちたいという、決して枯渇することのない人間の本性。


「生贄である下位者が、自らの意思で次の生贄を勧誘し、ピラミッドを拡大していく。しかも、彼らは搾取されていることに気づかず、自ら進んでシステムに依存する」


 複雑な数式が僕の頭脳の中で完璧に組み上がり、血で描かれた新たな幾何学模様と完全にリンクする。

 かつての国家級暗黒儀式は、人類の歴史上最も悪魔的な『自動増殖型・持続可能生贄システム』へとリバース・エンジニアリングさせた。


 その瞬間、暗い空洞の中で、僕の血を吸った魔法陣が妖しい紫色の光を放ち、脈打つように起動した。


+++


「名付けて、『星盾の互助陣アイギス・ネットワーク』」


 僕は陣の光を背に受けながら、満足げに微笑んだ。一歩も動かずに圧倒的な魔力障壁を展開できる余裕のオーラを纏い、僕の体から奴隷特有の惨めさや疲労感は完全に消え失せていた。


 僕は足取りも軽く、奴隷たちが蠢く坑道へと戻った。


 そこでは相変わらず、泥水にまみれた奴隷たちが死んだ魚のような目でツルハシを振るっている。看守の鞭の音が響く中、僕は仲間たちの中心へと歩み寄った。


 ルカ、ザック、ガンツ、ジェスター、カルメン、そして故郷からの友人であるテオ。彼らもまた、絶望の中で息も絶え絶えになっていた。


「皆、手を止めて聞いてくれないか」


 僕の静かだが通る声に、奴隷仲間たちが訝しげな視線を向けてくる。


「アレン……? お前、何言って……さぼったら、看守にどやされるぞ」


 怯えるテオを制し、僕は淀みなく、しかしひどく甘く魅力的なトーンで語りかけた。相手のリアルな不満を察知し、つけ込むのは僕の得意分野だ。


「ここで死ぬまで石を掘り続ける毎日に、うんざりしていないか? 皆で脱獄しようじゃないか」


 ざわめきが起こる。狂ったのか、と嘲笑う者もいれば、一縷の希望にすがるような目を向ける者もいる。


「ただ逃げるだけじゃない。僕たちは、この帝国そのものを食い尽くす。そのための『最強の互助組織』をたった今、僕が立ち上げた」


 僕は掌の傷跡を見せながら、奴隷たちのリアルな欲望を的確にえぐっていく。


「一人では勝てない看守も、みんなの力を合わせれば勝てる。これは富と経験値を分かち合う、次世代のネットワークだ。契約金はタダ。君たちはただ、僕の作った魔法陣を体に書き込むだけでいい」


「本当にそれだけで、助かるのか……?」


「ああ。そしてここを出たら、周りの仲間にそれを繰り返していくんだ。未契約の誰かを探して子会員にすれば、その子が稼いだ経験値の数パーセントが君のボーナスになる。君たちも早く勧誘する側に回れば、寝ていてもレベルが上がるぞ!」


 嘘ではない。だが、極めて悪意に満ちた建前だ。


 彼らがどれだけ稼ごうが、末端が稼いだ経験値の九十パーセントは自動的に親、さらにその親へと続き、最終的には僕のもとへ送られるという絶対的な非対称性には触れない。


 だが、過酷な労働で理性を失いかけていた彼らにとって、「楽して稼げる」「あいつより上の立場になれる」という言葉は、どんな魔法よりも強力な麻薬だった。


「……やる。俺はやるぞ、アレン!」

「俺もだ! こんな所で死んでたまるか!」


 奴隷たちの目に、かつてないほどのギラギラとした「強欲」の炎が宿る。彼らは自らの意思で、僕の差し出した見えない鎖に首を突っ込もうとしていた。


 僕の口角が、自然と吊り上がる。


「おめでとう。今日から君たちは、星盾の互助陣の大切な『家族』だ」


 僕は今ここから始まる、人間の強欲を動力にして帝国を蹂躙するための、人類史上最悪のピラミッド型搾取システムの稼働スイッチに手をかけた。

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