表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された地味令嬢ですが、実は王宮一の補佐でした ~捨てたのは第一王子? いいえ、私は第二王子と国を立て直します~  作者: 紅茶うさぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/42

第22話 守られる覚悟

 合同会議の余波は、すぐに王宮全体へ広がった。


 第一王子側の提出経路に不自然な点があった――その事実は、明確な断罪こそ避けられたものの、確実に記録として残った。


 廊下を歩く視線が、変わる。


 もはやエリシアは「元婚約者」ではない。

 「対立の中心にいる補佐官」だ。


 その日の午後、再び合同の場が設けられた。


 議題は、修正版の最終承認。


 第一王子アルベルトは、露骨に不機嫌だった。


「これ以上の遅延は許されない」


 低く告げる。


「修正は済んだ。形式上の不備もない」


 視線が、第二王子へ向けられる。


「まだ異議があるのか」


 静かな圧力。


 エリシアは、資料を握りしめた。


 ここでさらに指摘すれば、明確な敵対宣言になる。

 だが、沈黙すれば、これまでの判断が曖昧になる。


 ――どうする。


 その瞬間だった。


「異議はありません」


 レオンハルトが、先に口を開いた。


 室内が、わずかにざわつく。


「本案は、現段階で妥当です」


 第一王子が、わずかに目を細める。


「ならば」


「ただし」


 続く一言で、空気が止まる。


「本件に関する一連の検証過程は、全て議事録に残します」


 淡々とした宣言。


「今後、同様の手続き上の混乱が生じた場合、責任の所在を明確にするためです」


 それは、遠回しではあるが、明確な牽制だった。


 第一王子の視線が鋭くなる。


「疑っているのか」


「いいえ」


 レオンハルトは、穏やかに返す。


「透明性を確保するだけです」


 沈黙。


 オズワルドが、静かに口を挟む。


「その必要はありません。今回は単なる手続き上の行き違い――」


「ならば、記録に残しても問題はないはずです」


 遮る声は、静かだった。


 だが、決定的だった。


 会議室の空気が、明確に二分する。


 エリシアは、そのやり取りを見つめながら、胸の奥が強く脈打つのを感じていた。


 これは、自分のための発言だ。


 名指しではない。

 だが、誰を守っているのかは明白。


 第一王子が、ゆっくりと立ち上がる。


「好きにしろ」


 短く言い、席を離れる。


 扉が閉まった瞬間、会議は終わった。


 廊下へ出たところで、エリシアは足を止めた。


「……殿下」


 声が、わずかに震える。


「必要なことです」


 レオンハルトは、振り返らずに言う。


「あなたが前に出た以上、私は立場を示さなければならない」


 淡々としている。

 だが、その言葉の裏にあるものは重い。


「今回の発言で、私は明確に対立側へ立ちました」


 それは、政治的な宣言だ。


「後戻りはできません」


 エリシアは、胸が締めつけられるのを感じた。


「……私のために、ですか」


 問いは、無意識だった。


 レオンハルトは、ほんの一瞬だけ目を細める。


「あなたの判断は、正しかった」


 それが答えだった。


 個人ではなく、判断。


 だが、その中には、揺るがない信頼がある。


「守られる覚悟はありますか」


 静かな問い。


 エリシアは、目を閉じる。


 守られるということは、背後に立つということ。

 自分一人の戦いではなくなるということ。


「……はい」


 ゆっくりと答える。


「逃げません」


 その言葉に、レオンハルトは小さく頷いた。


「では、最後まで」


 並んで歩く足音が、静かな回廊に響く。


 王宮の灯りは、どこか冷たい。


 だが、その中で。


 エリシアは、初めて思った。


 自分は、選ばれているのではない。

 並んでいるのだと。


 それが、どれほどの重みを持つのかを、まだ完全には理解していなかったとしても。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ