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婚約破棄された地味令嬢ですが、実は王宮一の補佐でした ~捨てたのは第一王子? いいえ、私は第二王子と国を立て直します~  作者: 紅茶うさぎ


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第105話 火をつけた者

 「第五都市――爆発!」


 その報告が、すべてを塗り替えた。対話は止まる。空気が変わる。ガルドの目が細くなる。


「……やられたな」


 低い声だった。怒りではない。理解だ。仕掛けた側の狙いまで、この男には見えている。レオンハルトは言う。


「誰だ」


 短い。だが核心だった。誰が、を先に潰さなければ手が打てない。ルークが即座に答える。


「不明です」


「ですが」


 一瞬、言葉を切る。分からないと言い切ったうえで、次を続けた。


「目的は明確です」


 エリシアが続ける。目的なら、結果のほうから逆に読める。


「均衡の崩壊」


 沈黙が落ちた。崩壊、と言い切るだけの材料が、もう揃っている。第一王子が笑う。


「分かりやすい」


「混ぜて、壊すか」


 ガルドが言う。混ぜて壊す、という言い方を、彼は正確に受けた。


「俺たちと、お前らをな」


 視線がぶつかる。今は敵ではない。だが味方でもない。その中間で、同じ絵を見ている。


 レオンハルトは言う。怒りの前に、事実を並べる順序を選んだ。


「爆発の詳細は」


「まだ入っていません」


 ルークが答える。入っていない、という報告を、彼は隠さない。


「ですが規模から見て」


「偶発ではない」


 つまり、意図的。計画的。日付も場所も選ばれている。そして。


「連盟ではない」


 ルークが断言する。連盟の手口なら、痕跡がここまで残らない。


「やり方が粗すぎる」


 エリシアも頷く。構造を欲しがる者は、構造を壊さない。


「理念派でもありません」


「彼らは構造を壊しません」


 第一王子が言う。消していけば、残るのは一つしかない。


「じゃあ誰だ」


 その問いに。ガルドが答える。


「外だ」


 全員が見る。外、という一語だけで、視線が集まった。


「どういう意味だ」


「簡単だ」


 ガルドは言う。難しい話にせずに、いちばん短い形で置いた。


「ここが安定すると困る奴がいる」


 沈黙が落ちた。東方。誰も口にしない語が、部屋の真ん中に浮いている。ルークが言う。


「……可能性は高い」


「ですが確証がない」


 ガルドは笑う。


「確証なんていらねえ」


「やる奴は決まってる」


 第一王子が言う。


「侵略前の混乱誘発か」


「王道だな」


 レオンハルトは静かに言う。


「時間を稼いでいる」


「何のために」


 エリシアが答える。


「侵攻準備」


 短い。重い。侵攻の二文字が、初めてこの場に置かれた。ガルドが言う。


「つまり」


「お前らも俺たちも」


 一歩踏み出す。


「同時に潰される」


 沈黙。完全な。対立の構図が変わる。王 対 民ではない。外圧が加わった。三つ巴の盤面だった。潰される順番だけが、まだ決まっていない。


 その時。さらに報告。


「第五都市、状況詳細!」


 兵が叫ぶ。


「爆発後、武装集団侵入!」


「内部から扇動!」


 ルークの目が鋭くなる。


「……内部協力者がいる」


 エリシアが言う。


「暴動と連動しています」


 第一王子が舌打ちする。


「完全に仕込まれてるな」


 ガルドは笑う。


「見事だ」


 皮肉だった。だが認めてもいる。仕込みの丁寧さを、この男は見抜いている。レオンハルトは言う。


「止める」


 短い。だが。ガルドが遮る。


「どうやってだ」


 鋭い。


「お前はもう選んだ」


「全部は救えない」


 その通りだった。覆せない事実だ。沈黙。責める形ではなく、確かめる形で突きつけてくる。だが。レオンハルトは言う。


「だから繋ぐ」


 一歩前へ。


「お前の区域と」


「こちらの支援を」


「そして」


 一瞬の間。


「情報を共有する」


 ガルドの目が動く。


「共闘か」


「一時的に」


 即答だった。一時的に、と期限を切ったのが交渉になった。第一王子が笑う。


「面白くなってきたな」


 ルークは静かに言う。


「合理的です」


「分断されるより、繋がった方が強い」


 エリシアも頷く。


「はい」


 ガルドは考える。短い。だが深い。条件を通せるかどうかで、この先の立場が決まる。


「……条件は変わらねえ」


「主導は俺たちだ」


「認める」


 即答。


「裏切るな」


「裏切らない」


 沈黙。そして。ガルドが言う。


「……いい」


 決まる。一時的な同盟だった。敵同士だった者が、手を組む。信頼ではなく、条件で結ばれた形だった。


 だが。その瞬間。遠くで再び爆発が起きる。今度は近い。空気が震える。兵が叫ぶ。


「第二区域!」


「内部侵入!」


 ガルドの顔が変わる。


「……来たか」


 レオンハルトも言う。


「始まる」


 これはもう、暴動ではない。


 走り出す直前、レオンハルトが振り返って、下がれ、と言いかけた。言いかけて、やめた。


 エリシアは下がらなかった。やめてくれたことへの礼は、あとで言えばいいと思っていた。

敵同士が手を組みます。


条件は変えさせませんでした。主導は自分たちだ、裏切るな。信頼ではなく取引として始まる同盟のほうが、この二人には合っていると思っています。


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