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異世界ひみつ道具工房~ドラ◯もん好きの女子高生がもらった権能と愛と知識で世界を救う~  作者: ミジンコ
1-2章 冒険者の街

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第十六話 初ダンジョンを終えて

 ガレンシアのダンジョン地下四階。

 案外とスムーズにここまで来ることができた。浄化石の問題は解決したし、あとはポイズンバタフライの素材を持って帰ればいいだけ。

 さてどんな魔獣が出てくるのか、とそれらしき影を探していると、偵察に出ていたサスケから報告が入る。


『主殿ぉ! それらしき魔獣を発見したでござる!』

「ほんとっ! 案内お願い!」

『承知でござる!』


 サスケに先導されて行った先にいたのは――


「で、でかキモ……」


 デカい蛾みたいな姿の魔獣だった。蛾と蝶の違いとかあんまり分かんないから見た目の決めつけだけど。

 羽は紫色で見るからに毒々しい雰囲気を出している。名前にポイズンって入ってるだけはある見た目だ。


 というか虫って巨大化するだけで、なんであんなに気持ち悪く感じるんだろうっ。背筋がぞわぞわってなる。

 もしかしてだけど、この世界ってこのレベルが普通だったりする?……虫よけスプレーとか常備しとこっかな。あと殺虫剤とか。せめてうちのダンジョンには入り込ませないようにしたい。


『毒がありそうだ――私が行こう』

「たしかに近づくと危ないかも。よろしく源内」

『任された』


 毒を吸い込んでも面倒なので、ここは遠距離から攻撃できる源内にやってもらう。通路の角から覗き込んでいる形だから、まだ向こうには気付かれてる様子は無い。


 源内は火の玉を準備すると、ばっと角から飛び出してポイズンバタフライ目掛けでそれを放った。

 狙いバッチリだったそれは、ポイズンバタフライを焼き、少しすると地面に落ちて動かなくなる。しっかりと灰になるのを待ってから近づくと、魔石の他にもう一つ。ポイズンバタフライの羽がばっちり残っていた。


「これで一つ目ッと。これであと四つだよ」


 それからも地下四階をポイズンバタフライを求めてあちこち徘徊する。

 途中で地下五階に繋がると思わしき場所も発見した。

 ただこれまでと違ったのは、階段があるはずの場所に扉があって、そこに人だかりが出来てたこと。


「うをぉ!? 驚いたなあ。嬢ちゃんもしかしてテイマーか?」

「驚かせてすみません。そうです。この子たちは私の従魔です。攻撃はしないでくださいね?」

「安心しな。従魔と分かってわざわざ攻撃する間抜けはいねえさ。にしてもそれだけの数を従えてんのか。相当腕利きのテイマーなんだな! その若さでスゲエじゃねえか!」


 テイマーじゃないけど、説明が面倒だから今後は職業テイマーと名乗ることにした。

 そしてやっぱり扉の前に屯っていたおじさんも、私の従魔の数を見て驚いた様子を見せる。


「あはは……ところでおじさん。これって何の集まりですか?」

「ん? 何ってそりゃあ、ボス戦待ちだよ。ボス戦。嬢ちゃんも並ぶんなら最後尾はあっちだぜ」

「あ、いや違うから大丈夫です。でもボス戦って、じゃあこの先にこのダンジョンのボスがいるってことですか?」

「何だ知らなかったのか。ガレンシアのダンジョンは全部で五階層しかねえんだ。つまりこの下が最終階層ってことだな。そんでダンジョンの最終階層には、必ず強力なボスが待ち構えている。それを倒すと晴れてダンジョン攻略完了ってな」

「へぇ~知らなかったあ……」

「おいおい。ダンジョンに潜る冒険者ならこれぐらいは常識だぞ? 未知に挑むのもいいが、しっかり情報は仕入れておかねえと命がいくらあってもたりねえからな」


 呆れた様子のおじさんに怒られてしまった。


「次からは気を付けます……」

「おう、そうした方がいい――ちと説教臭くなったな。まあ新人のうちはよくあることだっ。頑張れよ!」

「ありがとうございますっ」


 気のいい、というより世話焼きなおじさんだった。

 確かに今回は必要な浄化石と魔獣の情報以外はほとんど調べてこなかった。いくらレベル三の難易度低めとはいえ、危険だったかもしれない。

 せっかくの先輩の言葉だ。しっかりと胸に留めておこう。


 そんな出来事もありつつ、ようやくポイズンバタフライの素材を五つ集め終えた。


「これで終わりっと。やることはやったしそろそろ――」


 帰ろうか、と口にしようとした時だった。


 通路の曲がり角から何かの影が現れた。

 遠目にはポイズンバタフライっぽく見えた。だけど何となく違和感がある。あの毒々しい羽の色が、もっと濃い紫色になってるような。あとついでにこれまでの個体よりもデカいような……?


 そんな疑問は、向こうが近づいてきたことでハッキリとした。


「やっぱり大きい。それに羽の色も紫を通り越して黒に近いかも……」


 大きさはこれまで見たやつより二回り以上。人間が両手を広げても全然足りないぐらい。それにやっぱり羽の色も違っている。

 一体何なのか?と思ったところで、ふと一郎たちゴブリンに目が留まる。


「そうか上位種っ」


 一郎たちがただのゴブリンではなくその上位種であるように、ポイズンバタフライにだって上位種がいてもおかしくない。

 しかも最悪なことに、その上位種が現れたのは私達が来た方向。つまり上へと通じる出口のある方向だった。


「みんな聞いて。多分だけどあればポイズンバタフライの上位種だと思う。源内。ここからでも火の玉って届かせられる?」

『問題無い』

「あとウエス。源内の火の玉が当たったら、あいつに風を送って。それでもっと勢いよく燃やしてやろう。あんな近づいたら絶対ヤバそうな相手、遠距離で封殺するに限るよ」

『了解よマスター。源内、初手を外すんじゃないわよ』

『任せてくれ』


 見た目からして毒の性能とかヤバそうだし。一応プリーストのジンが毒の浄化とか出来るけど、それに厄介にならないのが一番いい。もしジンでも浄化できない毒だったら最悪だ。


『いくぞっ』

『それっ』


 源内は念を入れてか、複数の火の玉を同時に放つ。それは正解だった。

 向こうの動きは思ったよりも俊敏で、ほとんどの火の玉は避けられる。だけど一つだけ胴体部分にヒットした。

 燃え上がる上位種のところへ、間髪入れずにウエスが風を送り込む。

 するとただでさえ強かった炎が一気に燃え上がり、まるでキャンプファイヤーのようになってしまった。


「……!」

「っ! 源内! ウエス!」

『承知っ』『オッケー!』


 そのまま燃え尽きるかと思われた上位種は、しかし燃えた身体のままこちらに自爆特攻をしかけてくる。

 慌てて指示を出し源内は火の玉で、ウエスは風の刃で相手を地面に落とした。


 やはり上位種だけあってしぶとく数分間粘った末に、ようやく灰になってその身体は消え去った。


「うわっ。アイツの素材も出てるじゃん。持って帰る……?」


 灰の中にはこれまでより少し大きめの魔石の他に、あのほぼ黒に近かった羽が一枚落ちていた。

 少し迷った末、それも持って帰ることにした。


 指定されたのはポイズンバタフライだけど、上位種ならあっても問題ないか? むしろ報酬を弾んでくれたりするかも……?

 なんて皮算用してみたけど、別に受け取ってくれなかったら普通に冒険者ギルドで売ればいいんだから。どっちにしろ損にはならないだろう。


 そうしてちょっとしたトラブル?がありつつ、私達は無事に地上に戻って来ることが出来た。


 その足で向かったのはクレアの家。

 ルンデルさんのお店に向かう前に浄化石の準備をしないといけないからね。


「こんにちはー。クレアは――向こうの畑かな?」

「お帰りなさいませ、マスター。初のダンジョン探索はいかがでしたかな?」

「ただいま、せんせい。ていうのもおかしいか。ここ私の家って訳じゃ無いし。まあまあ楽しかったよ。だけどああいう荒事は私には向かないや。ちょっと疲れちゃった。ところでクレアのお母さんはどう?」

「はい順調に回復しておりますよ。つい先ほどまで起きておられたのですが、また眠ってしまいました。マスターにきちんとご挨拶がしたいと、申しておりましたぞ」

「無理しないでって伝えておいて。それじゃあ私ちょっとやることがあるから」


 ダンジョンに繋がるドアを通って向こうに戻る。

 ゴブリン達には探索で疲れただろうから休んでおくように言ったんだけど、みんなして「そんなこと無いから仕事が欲しい!」なんて言い返してきた。


 何なのこの子たち。なんでこんなに勤労意欲に満ちているんだよ。


 しょうがないから、クレアの畑の方を手伝うように言っておいた。


 ウエスは解散って言ったらすぐに「ちょっと外を飛んでくるわ」って行っちゃうぐらいには自由にしてるのに。もしかしてゴブリンは種族的に真面目だったりするのか?

 いやでもダンジョンで見たのはそんな感じしなかったけど。

 てことはウチのゴブリンが特別働きたがりってこと?……それはそれで何とも言えんな。


 そっちは後で考えるとして、私もさくっとやることを済ませる。


 アイテム生成から浄化石を選んで、ぱぱっと作る。その時に追加魔力が微妙に増えてることに気が付いた。

 何でだろうと考えて、そういえば今はクレアがダンジョンにいるからかと納得。羊に比べると本当に微々たる量だったけど、持ってる魔力の量がクレアの方が少ないということなんだろうか?


 ともかく浄化石を五つ準備し終わり、まだ夕方前だったから今日中に届けてしまうとしよう。

 そう考えてクレアの家に戻る。


「せんせい! 私ちょっと出かけてくるけど、すぐ戻るから。クレアにはそう伝えておいて」

「承知しました。おや、誰も連れて行かなくていいのですか?」

「うん。ちょっとそこまで行くだけだから」


 クレアの家は西側の端っこ。魔道具店があるのは南側。まあ依頼の品を届けるだけだから日が落ちる前には帰ってこれるはず。


 そうして街を歩くと、やっぱりどんどん南側に行くにつれて活気で賑わい始める。前に来たときよりも人が多い感じがするかも。買い物の時間帯ってことなんだろう。

 

 暫く歩いて無事にランデル魔道具店に到着した。


「ラン――じゃなくてルンデルさんー。いますかー?」

「はいはい少々お待ちを――おや、先日のお客さんじゃないですか。何かありましたか?」

「いえ。約束の素材が集まったので届けにきました」

「もうですか!? ず、随分と早いですね。これは驚きました」


 ルンデルさんは私の言葉を聞いて、目を丸くして驚いている。


 私もこんなに早く集まるとは思ってなかった。特に浄化石ね。私みたいなズルが使えなかったら、予定通り一週間ぐらいはかかってたかも。ひょっとするとそれ以上かかってたんじゃ?

 あのダンジョンに潜るのは私だけじゃないし。他の冒険者が浄化石を狙わない保証はない。そう考えると早めに気付いて本当に良かったな。


「では拝見いたします――」


 バックパックから出したポイズンバタフライの羽と浄化石をカウンターに並べる。

 ルンデルさんは引き出しからモノクルを出すと、それを使って素材の見分を始めた。なんというか、すごい鑑定してる感がある。

 

 少ししてから顔を上げると驚き半分、満足半分みたいな笑顔になった。


「本当に驚きました。まさかこの短時間で全て集めてしまうとは。たしかに依頼の品としては十分です」

「ちなみにこれっていります? 多分ポイズンバタフライの上位種だと思うんですけど、ダンジョンで偶然見つけたんです」

「――こ、これはっ!?」


 ルンデルさんは私からそれをひったくるようにさっきみたいに鑑定を始める。

 何やら信じられない物を見るように端から端までそれを眺める。

 それから顔を上げると、一つ深呼吸をしてから口を開いた。


「……間違いありません。これは確かにポイズンバタフライの上位種『デスポイズンバタフライ』の羽です。あのダンジョンでの目撃例は非常に少なく、一年に一度現れればいいぐらい貴重なものなのですが」

「そんなにですかっ!?」

「はい。その上こいつの持つ毒は厄介で、身体に回るとほぼ即死。解毒する間もないほどに即効性の強い毒なのです。だから仮に遭遇したとしても倒すのにも一苦労なんですよ」

「ひぇ~……」


 や、やっぱり近づかなくて正解だった。

 というかやっぱり事前情報って大切だわ。もし知らずに戦って、しかも遠距離じゃない方法を選択してたらヤバかった……


「お客さん。ぜひ、この素材を私に売ってくれませんか? こちらの通常種の羽と浄化石に加えてこの上位種の羽。報酬は弾みますのでっ」

「え、と。というか上位種だから使えるかな~って持ってきたので。ぜひ貰ってください」

「ありがとうございます! この素材なら領主様に頼まれた魔道具も、想定より一段階性能を上げられそうです!」

「りょ、領主様?」

「いえいえ気にしないでください。それよりもこれほどの素材となれば、魔道具作りの教本と魔道具いくつかぐらいでは足りませんね……そうだ! あれもおつけしましょう! ちょっと待っていてください!」


 そう言うとルンデルさんは店の奥に引っ込んで行った。


 領主ってあのお城みたいなところに住んでる人、だよね?

 そんな凄い人から魔道具作りを依頼されるって。もしかしてルンデルさんってかなり凄い人なんじゃないの?

いかがでしたでしょうか?

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