第十三話 繋がる街とダンジョン
まず必要なのはドアだ。外枠付きのドアをアイテム生成で作り出す。
それと念には念を入れて、付与魔術のレベルも上げておく。今がレベル八だから切りよく十にしよう。これもアイテム生成で作っておいた。
材料はこんなもんでいいか。
「まずはっと」
スキルスクロールを使って付与魔術を『付与魔術Lv10』にする。
これで準備はオッケー。あとはぶっつけでやってみるだけ。
イメージするのは、どんな場所にでもつなげることが出来るドアだ。
一瞬、これを使えば地球に帰れるんじゃ?と考えたけど、止めておいた。それをやると失敗するのが感覚的に分かったから。少なくとも今の私がやると、間違いなく大惨事になりそうだった。
だから今回は、あくまでこの世界の中でだけ使えるようにする。
……行ったこと無い場所は、さすがに無理か。
元々がその世界のマップありきの道具だったから、いくら魔法で色々出来ても難しいらしい。
じゃあさらに効果を自分が行ったことがある場所に限定して……ギリギリなんとかなりそう、かも。
もし付与魔術のレベルを上げてなかったら間違いなく失敗してたなこりゃ。さっきの私ナイス判断っ。
イメージは固まった。
あとはこれをドアに付与するだけだ。
茶色の木製ドアに手をかざしながら、さっきのイメージを使って付与魔術を発動する。
そういえば木製のドアで思い出したけど、どこ◯もドアって映画によってツッコミどころ満載なんだよねえ。
例えば捨て犬の王子を拾って魔境を探検する映画。
あの映画の中で例のドアがワニに食われて破壊されるってシーンがあった。ちなみにリメイクの方だとここの展開が変わっていて。空き地に置き忘れた例のドアを、隣に住んでる盆栽をよく壊されるおじいちゃんがノコギリで解体するのだ。
さてここで疑問が一つ。
あのドアって、未来のすごーい科学技術で作ってるんだから木製なはずがない。
にも拘らず食べたれたシーンやノコギリで解体されたシーンで、ドアの断面が木製になっていたのだ。ワニならともかく、金属のドアをノコギリで切れるはずないから間違いない。
もしかすると、過去の人間に秘密がバレないように木製の偽装とかがかけられてたのかもだけど、にしてもである。
結局あのドアって何なんだろうな~、とよく疑問に思ったものだ。
――っと、付与の方に集中しないと。
ちなみに私の場合は付与魔術を使うだけだから、金属製だろうが木製だろうが関係無いけどね。使う時に利便さを考えて木製を選んだに過ぎない。
身体の中から大量の魔力が消費される感覚を味わいながら、魔法が途切れないように注ぎ続けていく。
さすがにワープみたいな効果を持った付与だから、使われる魔力がこれまでの比じゃないぐらい多い。反重力のケルコプターを作った時の方がはるかにマシだった。
でもやり直しはしたくないから、ここできっちり完成させる……!
「――……っ!」
暫くして、ついにその瞬間がやってきた。
茶色のドアが薄っすらと光を放って、すぐにそれが収まる。
手応えはしっかりあった。多分、成功してるはず。
「私のテントの前――」
ドアノブを握りながら行きたい場所をイメージして、それからドアを開ける。
すると、ドアを開けた先に広がっていたのは……今朝も見た私の拠点だった。一歩踏み出すと、とくに何も感じることなくダンジョンの芝生を踏める。
そのまま全身潜っても、これといった違和感は無かった。
念の為ドアの後ろをチェックしてみると、そっちからただのドア枠があるようにしか見えない。
「めぇ~~(あれ~? いつの間に戻ったの~?)」
「ああえっと、今さっき。でもまた出るから」
「めぇぇ~(そうなんだ~)」
こっちも間違いなくうちの羊だ。
「よしっっ!!」
秘密魔道具第三号、無事に完成っっ!!
「ね、姉ちゃん。これ何なんだ……?」
「そうだった。クレア、ちょっとこっち来てくれる? 今から私がいない間の仕事を説明するから」
「わ、分かった……!」
意を決した様子でこっちに入って来るのを微笑ましく見守ってから、私は作りかけの畑にクレアを案内した。
「実はここに畑を作ろうと思ったんだけど、ちょっと時間がなくて手がついてないんだよ。土地だけは用意したんだけどね。それでお仕事っていうのは、この畑を耕して欲しいってこと。出来そう?」
「やるっ! やってみせるっ!」
「そう。じゃあお願いするよ――といっても知識ゼロじゃキツイだろうから、ちゃんとサポート役は付ける。そこは安心して」
「サポート役って?」
さっきモンスターを検索した時にちらっと、とある特性を持つモンスターがいたのが見えた。今度はそれを対象にして再度検索をかけると、あっさり見つかる。
「――モンスター生成『アルラウネ』」
すると現れたのは、ほとんど人間みたいな身体の女の子。
だけど身体全体が植物で覆われていたり、よく見ると足が植物の根っこみたいになってるからモンスターに間違いない。
「はいはーい。あなたがわたしのマスターね! なんて名前なの?」
「清水有紗だから、アリサでいいよ。あなたことアルラウネでいいんだよね?」
「種族はそうだけどぉ、でもちゃんと個体名が欲しい! マスター、わたしに名前を付けて! 希望としては可愛い名前がいい!」
「い、いきなりだな。別にいいけど……可愛い。可愛いねぇ……じゃあ百に華って書いて『百華』でどう? これから野菜作りを手伝ってもらうから縁起も良いと思うし」
「おぉ! それがいい! わたしは百華、よろしくね!」
という訳でアルラウネこと、百華に畑作りを手伝ってもらうことにした。
このアルラウネというモンスター。植物の特徴を持ってるだけあり、栽培はお手の物。さらにアルラウネが作る特殊な木の実には、怪我や病気を治癒する効果があるんだとか。
さっきは治癒の力よりも、病状を見てくれる人材が欲しかったから選ばなかった。だけど、畑の世話になれば話は違う。似た系統でもアルラウネの方が、セージマンドレイクより植物の生育には強い。
「――だからこの畑未満の場所を、クレアと協力して耕して欲しいの。お願いできる?」
「まっかせて! 百華にかかればマスターも明日から大農園の大地主だよ!」
「よく分からんけどそんな称号はいらない。取り合えず色々準備しなくちゃいけないこともあるから明日からになるけど。二人とも、よろしくね」
「「分かった!(よー!)」」
二人の顔合わせも済んだところで、百華はダンジョンに残し私とクレアだけガレンシアの街に帰って来た。
明日からはクレアがドアを使うことになるから、しっかり使い方を説明しておく。危険なことは無いと思うけど、扱いは慎重にするよう言い含めておいた。
壊れるだけならまだしも、クレアが摩訶不思議空間に閉じ込められるとか、そういうのだけは勘弁だからね。
本当だったら今起こったあれこれを詰められるところだけど、そこはクレアが子どもだったことが幸いした。
私が凄い魔法使いなんだ~ってことで納得したらしい。
扱いやすい子でよかった……なんか今の悪役みたいな思考だった? うん。クレアが素直な子で良かったにしとこう。
説明が終わり、私は一旦クレアの家を離れた。
セージマンドレイクは置いてきたけど、まあ母親が起きたらクレアが何とか説明してくれるだろう。セージマンドレイクも頭が良いし、まあうまくやってくれるはずだ。
そうして街の外までやって来た私は、外に散らせていたウィンドホークたちを呼び集めた。
『遅かったわね。用事は済んだの?』
「う~ん、済んだっていうか別の用事が出来たというか。取り合えずここがどこかとかは分かった。なんだけど、色々成り行きで近くにあるダンジョンに挑むことになっちゃった」
『どうしてそうなるの?』
『ダンジョンー! マスターが作ったのとは別のダンジョンってこと!? うわー楽しみだなー! 早く行こうよ!』
「いやというかさ。私もダンジョンがどういう場所か分かってないけど、おそらくうちと似たようなもんでしょ? だったら環境的に君等には不利じゃない?」
ダンジョンに行くにあたり、懸念していたのがそこだ。
ダンジョンがとこも変わらず地下、つまり室内みたいな場所なら鳥であるウィンドホークには不利なんじゃないか、と。
いやまあ一匹ぐらいは偵察としてありだと思う。
だけどウィンドホークだけというのは、さすがに極振りし過ぎでしょ。せめて地上戦力とかもいないと。主に私の護衛として。
『広さにもよるでしょうが、確かに狭い空間では我々の動きが制限されます。ですがそれでも並の相手に負ける気はしませんが』
「意気込みは買うよ。だけどやっぱり航空戦力だけってのはいただけないよ。という訳だからこれから一旦ダンジョンに帰って、明日からのダンジョン探索の準備をしようと思います。と、その前に――」
私はイースを含めた四匹のウィンドホークを伴ってまた街に戻った。
目的は残りの子たちの従魔登録をすること。
門のところに行くと、また門番さんが驚いた顔をする。それで今度は案内は付けずに「どうぞお通りください」と、すんなり通してもらった。
それから冒険者ギルドでもまた驚かれつつも、三匹の従魔登録を済ませた。さすがに四匹も集まると迫力があるからか、それまでよりも視線が増えが気がする。
私は視線から逃げるようにクレアの家に戻って、それからドアを潜って自分のダンジョンに戻った。
もちろん、ちゃんとクレアには今日連れ回した分のお駄賃は渡した。
結局どれぐらいが妥当なのか分からなくて、五千トリンを渡しておいた。日給を一万トリンとして、今日はその半分って感じ。クレアには多いっ!?て顔されたけど、私が好きで渡すんだから貰っておけと言っておいた。
ちなみにこれで正規の給金より安かったら笑える。子どもを騙すとんだブラック雇い主だよ……後でしっかり調べよう。ギルドとかに行けばいいでしょ。
そうだ。何時までもクレアの家から帰る訳にもいかない。後でもう一台、ドアを作っておかなきゃ。
自分用に持ち運びできるのがアレの利点なんだから。
さっきは茶色で作ったけど、今度はいよいよピンクにでもしてみようかしら? それはさすがに狙い過ぎか? ちょっと悩みどころである。
そんなことを思いつつダンジョンに戻り、入り口にあった土壁をどかして羊どもを放牧した。
だけど外に行ったのは数匹で、ほとんどは空けてもダンジョンから出なかった。別段、外に出たいとかの願望は今のところ無かったらしい。
「よーし。こっちもそろそろ始めますかー!」
やることは勿論、明日のダンジョン探索に備えた戦力作りだ。
「鉄板どころのパーティーと言えば、戦士と魔法使い、あと斥候に回復役ってところかな? 回復役は必須だな、うん。あと斥候はウィンドホークの誰かに任せるからいいとして、あとは前衛と後衛か。全部揃えるとなると、保有魔力量との相談になるな~――」
三匹の従魔登録のときにギルドで聞いた話によると。
あの街にあるダンジョンは、難易度的にはさほど高くないらしい。ダンジョンの難易度はレベルによって定められていて、全部で一~十の十段階。
その内、あのダンジョンはレベル三に相当する。高くもなく低くもなく。どっちかといえば低い側。そんな感じらしい。
「てことは強力過ぎるモンスターは作っても持て余すだけか。魔力の節約って意味でも、過剰戦力には気を付けないと」
この依頼が終わったら、今度こそ他所のダンジョンには関わらないつもりだし。
ここはその場しのぎ的な戦力でも問題あるまい。
「――よしっ。それじゃあこいつ等に決めた!」
条件に合いそうなモンスターを見つけて、私は早速作ってみることにした。
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