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異能モノノケ録  作者: 長尾景虎
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第146話 大剣巨砲2

 


『おおおっ―――! これしき!』


 “時の神の発条(クロノメーター)”で心臓の異常を跳ね除け、神殿の巨躯が立ち上がる。

 そして左の手に刻まれた『大部屋』の術式を起動し、巨大ロボが持っても見劣りしない機械質な大剣を引っ張り出して構えた。


『それだけの強さを今まで隠していたとは……だがそれでも、“千影”はともかく貴方なら道連れくらいは出来るでしょう』


「試してみなよ。でも君じゃ、ハルちゃんに触れもしないだろうけどね」


 大剣を構えた巨大人型兵器と、可憐な女性にしか見えない男がバチバチと火花を散らす。恐ろしい事に、巨大人型兵器の方が僅かに腰が引けている。

 不死身の存在をたじろがせる程の本能的な脅威が、春陽の不敵な笑みとなって表れていた。


「せりゃあっす!」


『影軍』が噴水の如く噴き上がり、春陽を呑み込もうと押し寄せる。

 心臓を鷲掴みにされては梢でも苦しい。顕術を解かせるために素早く急襲した。


「あまり戦場を引っかき回さないでよね」


 影の津波は速度を落とし、緩やかに静止させられる。

 ただし完全に動きを止められていないのか、全体がブルブルと振動していた。”千影“という鬼の重さ(・・)が想定以上で少しだけ戸惑うが、それを一切表に出さずに言葉を紡ぐ。


「これは警告だよ」


「!」


 速いとも遅いとも取れる不思議な足さばきで、梢は至近距離への接近を許す。そして驚愕の余裕すらなく梢は腕を取られ、軽く足を払われたと気付いた直後には地面に叩きつけられていた。

 体術は紛れもなく達人の領域だ。


「お?」


 叩きつけた瞬間、梢の体が墨汁のように飛散する。

 影を使った身代わりといつの間に入れ替わり、さらには背後に回ったのか……今度は春陽が驚きに目を剥いた。


「まったく、少し落ち着けっす。こちとら敵じゃねーっす」


「ありゃ、心臓の方も振り解かれちゃったか。まぁ、殺せたらラッキーってくらいだったけどさ。それに敵かどうかは無力化してから考えるのがボク流なんだよね」


「なんすかそれ、こわ」


 しばしの睨み合い。

 お互いの力量は今のやり取りだけでも十分にわかる。

 敵対するだけ損だ。かと言って味方になれるほど信じてもいない。


(どっか行ってくれないかなー)

(どっか行ってくれないっすかねー)


 と、揃って考えるくらいには面倒な相手だった。

 その膠着状態を好機と捉えたイズルが、大剣をフルスイングする構えになる。


『2人まとめて――――』


 ビュウンッッッ!!


 “日出ル神殿”が横槍を入れようとしたその時、プライウェンをも切り裂く烈風が吹き抜けた。

 神殿はいとも容易くブロック状のガラクタへと変えられ、ガシャガシャと散らばる。


 だがしかし、これを行ったのは春陽でも梢でもない。

 木々の陰からユラリと姿を現した何者かへと、二人の凄絶な殺気が飛んだ。


「ひひひ、ダメだなぁイズルは。術中にハマってるのに気づかないなんてさ。一回リセットしないと、そこの妖精さんには手も足も出ないよ」


「いやぁ、妖精みたいに可愛いなんて照れるなー」


 全身を覆い隠す黒装束の奥から中性的な声音を発する人物。

 それが不快な存在感を垂れ流していると見るや、春陽はおどけた態度の裏で既に攻撃を行っていた。


「いぎ、ぎひ……ひひひ! 身体が、破裂しそうだ。これはアレだよね? 三王山家秘伝の顕術……ひひ、狂ってるよ、自分の魂の一部を相手に『憑依』させて操るなんてさ!」


 黒装束の手足が強張り、締め付けられ、捻じれ、全身を見えない力で弄ぶ凶悪な攻撃。


 三王山家の秘伝である『憑依』を応用した禁技、『幽化鳴動(ポルターガイスト)』。

 一歩間違えれば死か、廃人か。命知らずの狂気の技である。


「イズルくんを倒してから取っ捕まえる予定だったけど、自分から出てくるなんて殊勝なことだ。でもすごいねー、全然効いてない……さすが“死神(・・)”だね」


「ひひひ!! へえ、そこまで分かるんだ? 羽々矢もクルーオルも、すぐには気づかなかったのに」


 “死神”


 災害級、SSSランクと呼ばれる脅威が世界各地に存在する中で最も残虐にして気まぐれ、信念などは無く道理も通じない無法の権化。そしてその強さは、他の災害級と比べても数段上をいく。

 災害という呼び名を真の意味で体現している理不尽の代名詞だ。


『死神!? 道満っ、貴様!!』


 クロノメーターによって無傷の神殿が再び威容を見せる。

 イズルの怒声が響き、ビルに相当する大剣は春陽ではなく仲間であるはずの死神……道満と名乗る黒装束に向けられていた。


「ぎひ、ひひひ! そんなに恐がらないでよ。今まで仲良くやってきたじゃないか」


『仲良くだと!? 貴様ら“死神”は例外無く人類の敵だ。言葉を解す獣……情も理性も無く、ただただ世界から命を刈り取る殺戮装置に過ぎない。貴様がそうと知っていれば―――』


「どうしたって? 君に羽々矢を裏切る度胸がある? 第一、ここで俺と戦うなんて不毛じゃないか」


『いや、羽々矢もクルーオルもどうかしている。死神を御せると思うなど! 私はかつての“死神(グリムリーパー)”をこの目で見た……生かしておくだけでも災いになる。特に私にとっては』


 神殿が大剣を振りかぶる。

 人がゴキブリを潰そうとしている構図になり、道満も苦笑が漏れた。


『春陽さん、今だけで良い。ソイツをそのまま抑えていてください』


「うん、いいよ。でも多分………」


 殺せない。

 死神は退魔師協会や大聖堂の記録、あるいは人類の歴史において数体が存在を確認されている。だがそのいずれも、まともな方法では倒す事が叶わなかった。


 例外はごく僅か。

 狂気に浸り過ぎた末に自害した有史第一号、“死神(タナトス)”。

 神仏に類する超位存在が所有していた使い切りの聖遺物……“アーカーシャ”を用いた聖堂騎士が数百年前に滅ぼした“死神(ラ・モール)”。

 仁科黎明が死闘と封印を積み重ねて存在を削り尽くした“死神(グリムリーパー)”。

 そして記録外の出来事……姿無き襲撃者であった橘花院士緒が殺したと思われる“死神(ハロス)”や、人知れず闇に葬られた名も無い神も。


 しかし、それらを殺す明確な手段は確立されていない。

 黎明のように正面から力業で打倒する事は理論上可能ではあるが、難易度が異次元すぎて黎明以外に実行できた者はいなかった。少なくとも公式では。


「ふひひ、俺も不死身に関しては自信があるんだ。どっちかが飽きるか、お互いに嫌気が差すまで殺し合おうか!」


『貴様だけで死んでいろ、死神っ!』


 大剣の腹を光の(すじ)が凹凸を描いて走る。

 そこから更に細かいヒビが広がっていき、何もしていないのに剣身が砕けた。


『私とて、ただ死なないだけが取り柄ではない!』


 大剣がバラバラに散るかと思いきや、クロノメーターによる修復が起こり、空間がグワンと歪む。

 いつもならすぐに元通りになるはずが、大剣はヒビ割れたまま辛うじて繋がっている状態で、修復時に異物を巻き込んで消滅させる空間だけが纏わりついていた。


『死神だろうと、この消滅には耐えられまい』


「……ひひ」


 道満は『幽化鳴動』にぎりぎりと音を立てて抵抗し、ついには体内で通力を暴走させる。

 自らを水風船のように弾けさせて憑依を逃れ、爆風をまき散らされては流石の春陽も怯んだ。


 その僅かな隙に、肉片から復活を果たした道満が神殿に向けて手を翳す。


『消えろバケモノ』


「黙って羽々矢の役に立てば良いのにさ」


 道満の腕が数メートルの凶々(まがまが)しい刃へと変じ、それを縦に一振りした。


『――――っ!』


 神殿が大剣を引き、くしくも道満と同じく手を突き出す体勢となる。

 手の先に様々な図形が立体的に絡み合うオブジェらしき物が出現した。

 “クロノメーター”で作り出せる空間歪曲の縮小版を用いた盾だ。

 不死性こそが武器であるイズルは盾をあまり重要視しない。しかし今は、使わなければと直感が働いた。


 道満の凶刃から放たれた斬撃……否、それは切断の概念(・・・・・)そのもの。身に受ければ問答無用で真っ二つとなる。

 イズルの固有秘術なら復活は可能だが、通常の攻撃よりも遥かに治りは遅くなり、あとは煮るなり焼くなり良いようにされる時間だ。それだけは避けたい。


 故にイズルは道満の攻撃を盾で受け、その向きが真横に逸れて樹海をスパスパと切断していった。


「ふひひ、腐っても最強クラスの退魔師かぁ。“死神(グリムリーパー)”も面倒を起こしてくれたよね。古株の退魔師ほどアイツに酷い目に遭わされてるから、俺まで目の敵にされてさ。でなきゃ君もこんなウザい事しなかったでしょ?」


『御託はいい。あるいはお前達は、私や仁科黎明よりもこの世界に必要な存在なのかもしれない……しかし、そうだとしても、お前達は人の世において駆逐すべき災いだ。たとえその結果、世界に害が及ぼうとも』


 …………!!


 その言葉を聞いて驚いたのは梢や石刀など、真実を知る者達だ。

 世界に害が及ぶ……死神がどういう存在なのか正しく理解していないと出ない言葉だ。


「それが解ってて、どうして禁術なんかに手を染めるんすかねー」


「はんっ、そんな良い女だったのかねー、殿町クロエってのは」


『ヒトはそれを愛と呼ぶのですよ』


 巨大ロボが大剣を振り下ろした。

 触れれば消滅する大剣、それを………


「ひひっ」


 道満は躱し、大剣は地面を大きく抉り取った。

 歪曲空間は一度の使用毎に無くなり、無傷の大剣へと復元する。そのタイミングを逃さず道満が動いた。


 猫背とは違う盛り上がりが黒装束の背に浮かび、そこから幾本もの触手が飛び出す。


『ちっ、汚らわしいものをっ』


 神殿の手脚をぐるぐるに縛り、動きを封じる。体格差や質量的にはあり得ない事だが、道満はその場でピクリとも引っ張られることなく不気味に嗤っていた。


「石になっちゃえよ!」


 触手が触れた先から神殿が石化していく。

 すぐにクロノメーターが発動して石化は止まるが、空間歪曲に巻き込まれた物質の消失現象が起きない。道満の触手は健在のまま、神殿を拘束し続けていた。


『くっ、やはりクロノメーターでは裏側の存在と相性が悪いのか』


「ヒヒャヒャッ! そういうこと! 『裏側』を介して力を行使する俺ら死神は、君のクロノメーターに優位に働くんだ。なにせその固有秘術も裏側からエネルギーを得てるんだからね」


 道満の両腕がシュルシュルと伸び、先程よりも巨大な凶刃へと姿を変える。しかも柄のあたりから幾つにも枝分かれして、もはや刃物と呼べるかも怪しい歪なスライサーが出来上がっていた。

 それを神殿の頭上から叩きつける位置に構える。


「そぉーらっ、挽き肉になれ!!」


 石化と再生の繰り返しで棒立ち状態の神殿には為す術が無い。


『ッッ!』


 ハエ叩きのように地面に打ちつけ、大きな揺れを伴って放射状の破壊が久良名の街に齎される。

 プライウェンの樹海は広範囲が巻き込まれ、衝撃で盛り上がった地面と合わせてブロック状の小山と化した。


「おっと、またその盾か。面倒かけないでよ」


 神殿の正面に歪曲球体が出現し、道満の攻撃を真後ろへと流していた。

 現実への事象改変は相性に左右されない。イズルは内心で安堵し、道満も忌々しそうにボヤく。


「うおりゃ!」


 春陽が場にそぐわない掛け声で身の丈に倍する戦斧を取り出し、道満の脳天から地面まで振り抜いた。

 死神という恐るべきバケモノが、呆気なく左右に分かたれてどす黒い血溜まりを残す。


「はあ? 死神が死んだふりとか、クソつまんないんだけど」


「ひ、ひひ……よく言うよ、断面を『幽化鳴動』で覆って再生を阻害してるくせに。それにその武器、可愛くなくね?」


「なにおー!? この柄の部分とか先端とかに施されたデコレーションが目に入らぬか!」


『くっ、おおおお!!』


 神殿が触手を引き千切り、自由になった脚部に『赤雷の長靴』を纏わす。

 そして戦闘の余波で更地同然になった敷地の端まで全力で後退した。


『私が言えたことでもありませんが、気持ち悪いほど理不尽なヤツだ』


 常より時間が掛かるが、道満の体は外見だけは再生を終えている。体内で春陽の『幽化鳴動』が楔として残っているのは、死神にとって気持ちが悪い程度の異常だ。

 それでも動きが鈍っているのは間違いない。叩くなら今しかないと、神殿が大剣をヒビ割れさせ、再び消滅空間を発生させたその時――――


 ッッッドン!!!


 凄まじい衝撃で協会本部の敷地にまろび出て来たのは怪士(あやかし)の面を着けた男。そしてそれを追って転がり出たのは漆黒の球体……それも体育館ほどの大きさという馬鹿げたサイズだ。


『またか!?』


「ありゃりゃ。千客万来だね」


 巨大鉄球は鎖に紐づいており、まるでけん玉でも操るが如く持ち主……海藤小角の傍らまで戻った。

 鉄球と比べて米粒ほどに見える小角だが、その圧力は全く見劣りしない。それどころか噴火寸前の火山にも似た煮え滾る感情を瞳に宿し、周囲を威圧している。


「状況は分からんが……そこに居るのは“千影”だな。察するに最も中立に近そうな貴様が説明してくれ」


「え、ジブンっすか? あー、それじゃ、“不動の賢者”さんの信頼にお応えして簡潔に説明をば……海藤イズルが退魔師を裏切って羽々矢と結託、けれどそこの黒装束が死神と判明して仲間割れ中っす」


「………そうか。神殿の主砲が打ち上がったのを考えれば、信じざるを得ないな」


『小角、私は………』


「言わずとも良い、出流兄さん。あんたの協会への不信は分かっていたことだ、責める気は無い。いつかはこうなる覚悟もしていた」


『協会への不信か……その程度の認識であることには些かガッカリだが、済まない。動機はもっと個人的なものだよ』


「……殿町宗玄か」


『…………』


「うんうん、愛は偉大だよね! なにせイズルくんにとって兄弟の絆よりも大事なんだから」


 満面の笑みで話しているが、春陽はイズルに正当性など欠片も感じていない。同情はあるが、裏切りを罰することに何の躊躇もしないだろう。


 だからこそ、今この時にすら春陽はガチガチの戦闘モードだ。いつでもイズルや死神に牙を突き立てられる。


「ボクもさっさと終わらせたいからさ。全員まとめて相手してあげてもいいんだよ?」


『幽化鳴動』による不可視の干渉がその場の全員に纏わりつく。

 幽霊の気配を感じてゾッとするというのは、まさにこの事なのだろう。歴戦の退魔師、鬼の面々をしても未知の恐怖が全身を撫でた。


「っ……春陽、私まで脅すことはなかろう」


「そっちだって殺気飛ばしてきたじゃん。それにオズっちはイズルくんを慕ってるからさ。変な動きしたら殺せるように、ね」


「ええい分かった、好きにせい。お前という奴は昔からどっちか(・・・・)に振りきっとるからな………それで? 誰が最初にこの混沌(カオス)を破る」


 “真ノ悪”の鬼札、“千影”。

 力の底が見えない超級の実力者、三王山春陽。

 退魔師協会の重鎮にして最高戦力の一人、海藤小角。

 “真ノ悪”の一員であり正体不明の『色装』使い、怪士。

 巨大人型兵器を駆る裏切りの徒、海藤イズル。

 言わずと知れた死と破滅の代名詞、“死神”。


 誰が示し合わせたわけではなく、拓けた空間で自然と円形に距離を置くバケモノ集団。それらがお互いを睨み、牽制し、無意識に均衡を保とうとしている。

 ここで最初に動くという事は、狙い撃ちになるリスクが高い。


 そんな中で、最初に行動を起こしたのは――――


『それはクロエの術装か……!』


 怪士が腰に提げている黒い靄が掛かった拳銃らしき物。それを目にしたイズルがリスクを無視して突進した。


 怪士は迫る特大の掌を回避し、イズルが争いの中心に取り残された。


「ヒャッハーっす!!」


 怪獣じみたスケールで地から伸びたのは八岐大蛇(ヤマタノオロチ)。梢の影で形作られたそれらの大蛇が神殿の四肢に食らいつき、宙に縫い付ける。


「落とし前だ馬鹿兄!!」


 梢と連動して仕掛けた海藤小角が、巨大鉄球を天から落として神殿を背中から圧し折った。


『ぐっ……これほどの兵器を、どいつもこいつも簡単に壊してくれる!』


 空中で粉砕されるも即座に復活。着地で地震を起こしつつ、間髪入れず八岐大蛇へと掴み掛かる。

『蒼炎』と『赤雷』が影を焦がし、漆黒の鉄球が双方を纏めて薙ぎ倒し、『影軍』が大小様々な動物無機物の姿で小角を襲い、巨大ロボの踏みつけという単純な質量攻撃が梢に降りかかった。


 これらの交錯がほぼ一瞬うちに行われる異次元の戦いが勃発し、文字通りの意味で街を震撼させた。


「……動くな、死神」


「ヒヒヒッ! 怖い怖い怪士のご登場か。ひょっとして君、四宮――――」


「ぉおっと! 場を荒らしそうな死神くんはどっか行ってもらおうかな」


 怪獣大決戦が樹海やビルなどの建物を破壊していく傍で、高速の殺意が交差する。

『紅』を纏った怪士が弾丸と化して道満と格闘戦に入ったところへ、春陽が果敢に割り込んで豪快に戦斧を振るう。直撃した道満が肉塊となって飛び散った。


「………!」


 春陽は続けざまに怪士を捉え、戦斧を投げつける。

 怪士は体を反らして躱してみせるが、斧の影に隠れて接近した春陽が背後に回り、首に腕を回して組み付いた。


三王(さんおう)流柔術は初めてかな?」


「…………」


 引き剥がせない。

 小柄ながらに柔軟で、脚の絡め方も絶妙に体幹をずらそうと力を加えてくる。

 こうまで完璧に締められては、まともな方法で抜け出す事はできないだろう。


「君のことは前々から気になってたんだ。そして驚いたよ、ここまで完成された『色装』は見たことがない……洋一郎くんに並ぶ強固な結界と、より無駄を省いた素早い顕術の行使。この力、四宮でありながらどうやって隠していたのか不思議だなぁ」


「……それはお互い様だ。三王山の当主が、よもや武闘派の四宮家当主より強いとは知らなかった」


『色装の(とう)豪猪(ヤマアラシ)


 怪士の色装が薄いオレンジ色になり、無数の針の形状となって飛び出した。


「わはー! 柔術の辛いとこー!」


 並の反撃ならものともしないが、洋一郎クラスの『色装』だとしたら危うい。

 春陽は軽業師も顔負けの身のこなしで『色装の橙』を回避、くるくると楽しげに着地した。


「首もーらい」


 腕を大鋏に変じさせた道満が春陽の背後に回り、


「え……?」


 大鋏の付け根がパンッと弾け、肘から先が宙を泳ぐ。

 さらに春陽が指をヒョイヒョイっと動かし、『幽化鳴動』で大鋏を掌握。クルリと反転させて逆に道満の首をはねた。


「マジかよ……」


「君はしぶとそうだから、最後に相手してあげるよ」


 地面から土が噴き上がり、道満へと殺到する。

 瞬く間に立方体が完成し、通力で強化されたその箱に閉じ込めた。


「もーいっちょ」


 ズンッズンッという衝撃が立方体に加わっていき、やがて手のひらサイズまで圧縮した黒いキューブとなる。

 春陽はそれを握り、地面を殴りつけた。


 ドゴォッ!!


 手首まで埋まり、そのまま数秒の沈黙。

 このくらいか、と小さく呟いて春陽は手を引き抜いた。


「ふぅ……数百メートルは沈めといたから、暫くは顔を見なくて済むよ。探す時は梓ちゃんにお願いしよーっと」


「……恐ろしい男だ」


 怪士にとっても死神の排除は好都合だ。だから春陽を攻撃せずに見守っていたが、鼻歌交じりで調理でもするように道満を地中深くに埋めた人物と相対するのも、それはそれで恐ろしい。


 こんなのと一対一で交戦するくらいなら、少し離れた場所で暴れている怪獣どもを巻き込んだ乱戦の方が幾らかマシだろう。


(速さならこちらが上……動きで翻弄するよう立ち回るしかない。まったく、この私が格闘を避けるとは)


「そうだコレ、返してもらうけど良いよね?」


「!」


 黒い靄が覆い隠す隠蔽術式、『我汝不認(われなんじをみとめず)』が付与された何か(・・)

 怪士が腰に佩いていた術装がいつの間にか春陽の手にあった。


「糸浦の“社”から盗むなんてスゴイね。村正くん怖かったでしょー。コレ取り返してあげたら喜んでくれるかなぁ?」


(組み付かれたとき既に……流石だ。見た目からは想像も出来ないが、この人は百戦錬磨の退魔師。本気を出されたらどうなるか………)


「シャッハ―っす!」


 影が広がり、黒い池が春陽を取り囲む。直後、ザパァンと飛沫をあげて飛び出したのは鮫のシルエットだ。


「出たな“千影”!」


 喰いつこうとした鮫に腕を突っ込み、左右に引き裂いた。

 しかし一匹だけではなく、影の池を無数の背ビレが動き回っている。それらが四方八方から絶え間なく牙を剥いてきた。


「邪魔だ! ぬぅん!!」


 直上から飛来して影を切り裂いたのは、小角が投げた数枚のタワーシールドだ。黒曜石にも似た質感のそれに遅れて小角が降り立ち、春陽と背中を合わせる。


「ありがとオヅっち。紳士だね」


「……で? まだ私を疑っているのか?」


「うん、少しだけ。ボクはそんなに賢いわけじゃないからさ。特に貴方みたいな賢者さんと腹の探り合いなんかムリすじだし。こういう時は殴って黙らせる方が楽なんだ。でも間違ってたら謝るよ? あとで」


「亜笠もそうだったが、お前らの一族ときたら……まともなのは阿斗州だけか」


『世間話とは余裕ですね』


 赤雷を纏った神殿がすれ違いざまに大剣で薙ぐ。

 消滅空間によって音もなく地面がくり抜かれ、影の池とタワーシールドは消え去った。


「巨大ロボが人間を襲うなんて邪道だぞー!」


「大艦巨砲主義もな!」


『人間離れした連中には言われたくありませんね!』


 春陽と小角は大剣を躱し、神殿の周囲を疾走して攻撃の機会を探す。それに対して神殿は大剣を地面に刺し、ちょこまかと足元を駆け回るネズミに両手の指先を向けた。


「まさか」

「弾幕ゲーだね」


 ガシャンと先端が開き、通力のレーザーを一斉射した。

 縦横無尽に動くレーザーが小さな標的を捉えようと見境なく周囲を焼いていく。


『実弾もオマケです』


 両手足の側面が開き、そこから幾つもの機関銃がせり上がる。人間同士の戦争が可愛く思えるほどの銃声と殺意の雨が一帯に撒き散らされた。


「お祭りっすねー!」


「あっはは! 踊るぜい!」


「ぬおぉ……! そっちは楽しそうだの!」


「…………」


 ひらひらとテンション高めで避ける者と、黒曜色の盾に身を隠す者……そして防御力にものを言わせて突進する紅の弾丸。


 怪士は被弾などお構い無しに、ただし通力砲だけは避けながら神殿に肉薄した。


『四宮の色装など――――』


「……四宮流」



 極式・不動金縛り



 怪士が神殿に触れた瞬間、その巨体がピタリと動きを止めた。

 表面を見ると薄ぼんやりと光の膜が張られている。

 微動だにしない……もっと言うなら時が止まったかのよう。その不可思議な光景に、騒がしかった戦場も途端に静まり返った。


「ありえん、これが『不動金縛り』だと……? 汎式の顕術とは規模も強度も桁違いだ。四宮流の極式顕術がこれ程とは」


「オヅっちでも見たこと無いの? ボクは洋一郎くんが使ったのを一度だけ。ツグミちゃんがいつか使えるかもとは思ってたけど……ほんと、何者なんだろうね」


 色装の外向き結界を内側に反転させ、相手の表面に展開。全ての動作や通力を反射させ、精神活動すら閉じ込める。

 言うなれば疑似的な時間停止状態だ。

 黎明の封印ほど長期に維持は出来ないが、外から強い衝撃を与えなければ数時間か、最長で2日は止めていられるだろう。

 これは退魔師の奥義や秘伝に類する技……並外れた才能と修練を積んだ者にしか許されない。


 そもそも『色装』や四宮流顕術は一族の血統のみが使える技だ。

 しかも極式と付く技は濃い血を受け継いでなければ使えない。

 怪士は間違いなく本家筋……洋一郎や鶫の兄弟か、少なくとも従兄弟に当たる血縁ということになる。


 そしてこれほどの強さを有した者……それは当主の器に他ならない。


「触られたらアウトってかぁ……じゃあ絶対にハルちゃんに近づかないでよね! 触ろうとしたら引っ叩くよ!」


「お前は大物だのぉ」


(……先ほど後ろから組み付かれたのだが)


 死神は地の底に沈み、巨大人型兵器も暫く動かない。

 そして戦場には………


「イケオジと美少女が残ったね!」


「一人は面を被っとるがな」


「御自分はどっちに分類したっすか?」


「…………」


 勢力的には2対2の構図。

 実際はそれぞれに爆弾を抱えたコンビであり、協調は難しい。

 まさか背中から刺されたりはしない……と言いきれないのが小角と怪士の2人だ。どちらの相方も行動が読めない。


「この際だ。この面子だけ休戦といかないか?」


「どうしよっかな〜……やっぱり全員ブチのめした方が安心なんだよね」


「と言うか、ジブンは端から争うつもりなんて無かったっすもん。むしろ裏切り者の海藤イズルから協会本部を守ってやったくらいっす。感謝しろっす!」


「へー、守ったんだ、ふーん……」


「なんすか、感じ悪いっすね」


「あれ見て」


 春陽が指差す先には退魔師協会本部ビル……の残骸が山と積まれていた。

 梢がぷるぷると震え始める。


「あ、あわわ……これ、若に怒られるやつ」


「君ってば強いのに注意力が散漫だね。神殿がジ◯ングみたいにビーム撃ち始めればこうなるよそりゃ」


「ぬぐぐ、ジ◯ングを例に出すおっさんに常識人ぶられたっす……」


「うん? 喧嘩かな? 喧嘩を売ってるのかな?」


「どどど、どうしよう……すぐに中の人間を助けないと、若が疲労と心労で倒れちゃうかも」


 ・ ・ ・ ・ ・


「看病イベント……アリ寄りのアリっすね」


「カカッ! 良い報せで悪いが、中の連中はとっくに地下シェルターにぶち込んであるぜ」


 今まで何処に行っていたのか、石刀がふてぶてしい態度で現れる。モルドレッドも肩からヒョコッと顔を出し、春陽を見て怯えた様子で石刀の背中に隠れた。


「あ、石刀くーん! やっはろー!」


「……どもっす」


 石刀は傍若無人で喧嘩っ早くて誰に対しても攻撃的だ。

 だがしかし、それでも苦手なタイプというものは存在するのだ………


「ゴホンッ! んで、おたくら怪獣軍団が暴れたら一溜まりもないのは分かってたからな。最低限の措置はしておいた」


「おお、良くやったぞ石刀。やはりお前は面倒見が良い」


「はん! 人がケツ捲って裏方仕事に逃げている間に、あんたらはじゃれ合って遊んでたのかよ」


 辺り一帯、台風で根こそぎ持っていかれたかのような破壊が広がっている。

 建物などは殆どが倒壊、高層ビルは3階よりも上が残っている物は無く、冗談としか思えない大樹海も大量に薙ぎ倒されていた。


「見たところ、敵と呼べるヤツらは居ないか動けなくなっているようだ。頼むからこれ以上暴れるとか言い出さないでくれよ。特に春陽の旦那」


「んー………」


 まだ戦闘の中断に不服そうな春陽。

 何らかの謀略、策略を警戒し、自らが頭脳戦に不向きなのを自覚しているからこそ渋る。自分以外に主導権を握らせても良いものか、と。

 街のきな臭さを考えれば、考え方はあながち間違ってもいない。それどころか誰よりも正しい判断をくだしているのだ。


 この時までは。



「俺も石刀に同意するぞ春陽。駄々をこねるなら、望み通り全員を敵に回すことになる」



 オーダーメイドの高級スーツ、ループタイ、ガッシリした体格。

 泣く子も黙るとはよく言ったもの。春陽ですら黙らざるを得ない退魔師がいるとすれば、黎明を含めて数人もいない。


 そのうちの一人が稲生(いのう)(たいら)

 関東全域の“社”を統括し、海藤小角と双璧を成す協会の最高戦力。

 その強さは鬼王をも凌ぐとさえ言われている。

 流石の春陽も、多対一に稲生平まで加わってしまえば勝ち目は無い。ワガママを言っていられる状況ではなくなったのだ。


「平くんまで登場するなんて……うわぁ、頭こんがらがって来た〜」


「いや待て平、貴様……今まで何処におった?」


「本部の中だ」


「「「…………」」」


「見応えあったぞ。特に◯ンダムもどきが出たあたりからな」


石「おちょくってんのかコラ」

小「この歳になって胃痛と頭痛は堪える……」

春「ハルちゃんも高みの見物すれば良かったかなぁ。でも屋上には押しかけられないし……あ! 平くん、アトスくんたちは無事?」


 屋上では息子とその婚約者がイチャつきながら全域を狙撃していた。

 それをこっそり確認してから春陽は戦場に躍り出たのだが、その瞬間を目撃した阿斗州が手元を狂わせ、弾丸があらぬ方向に飛んだという………


「阿斗州と天ノ川鳳子なら避難させた。驚いたことに、今回の騒動で呪術師のキル数を最も稼いだのはアイツらだろうな」


「………それで? あんたの事だから理由も無しに見物してたわけじゃねーだろ」


「ああ。小角あたりは事情を聞いたと思うが、協会の裏切り者を炙り出すため怪士に一働きしてもらった。結果は見ての通り、イズルと判明。他にも居るかと警戒していたが、クルーオルか羽々矢の手先なら殿町の術装に少しも興味を示さないとは考えにくい。この中の誰も、“雲斬天俯瞰(くもをきりてんをふかんす)”にチラリとも視線を寄越さなかったのでな。それと隼人だが……まぁ少なくとも裏切ってはいないだろう。何処に消えたのか知らんが、アレに隠れられたら探すのは難しいし、放置しかない」


「なるほど、そうであったか。一定の説得力は認めよう。分からんのは殿町の術装が狙われる理由だが、そのあたりの説明は?」


「どこかでゆっくり話したいところだが、本部はこの有り様だしな……よし、場所を移すぞ。丁度いい拠点がある」


「俺はここに残ってイズルと死神の様子を見張っといてやる。あんたも残るだろ? 怪士さんよ」


「…………」


「へっ、だとよ。行くならあんたら初老組だけだ。ああ、モルドレッドも置いてってくれ」


春「初老? ハルちゃん分かんなーい。永遠の21さーい」

梢「右に同じっす」

小「がはは! 初老とは控え目に見られたものだ」(←60代)

平「俺の実年齢を知りたいか?」(←数百歳)


「……言葉のチョイスを間違えたか」


 本部の地下には避難場所へと通じる道もあるため、そこも封鎖して番をしなければならない。

 怪士とモルドレッドが残るなら、少なくともこの場の見張りは問題ないだろう。

 イズルが暴れても抑えるだけなら可能で、死神が這い出して来ても時間は稼げる戦力だ。


「して、平よ。我らはどこに向かう。今回の騒動を収束させるまで活動できるような拠点なのか?」


「短期にしろ長期にしろ、問題はないだろう。既にあらゆる準備が整っているはずだしな。場所は久良名学園だ」


 久良名学園。

 誰かの意図があってか、それとも偶然そうなっているのか。学園は本当の意味で台風の目となりつつあった。












平「あ、そうそう。部下に確認させたが、一宮のやつも一応無事だ。とっ捕まっちゃいるが、とりあえずの危険は無い」


小「む、そうか。敵意が薄い相手だったんで任せたが、少しばかり手に余るのではと気掛かりでな……しかし、とっ捕まったのか」


平「ああ。ま、相手が“真ノ悪”でも幹部クラスじゃ分が悪かったんだろ」


小「無事なのだな?」


平「無事、と言っていいのかどうか。確かに五体満足ではあるが、何らかの心のキズが無いかは心配だ」


小「拷問されているのか!?」


平「いや、触手にまさぐられてる」


小「お、おう、それは……判断に困るのぉ。やはり助け出しに行くか」


春「え、なになに? 一宮くんがトラウマもんの凌辱を受けてるって!? どこどこ、慰めてあげようよ!」


小「やめい! 凌辱とか飛躍しすぎだろう! 不謹慎だと思わんのか」


平(あながち間違ってもいないが………)


梢「少年と触手……ちょっとドキドキっす」


小「ええい、何でも良い! 助けに行くぞ」


そうして、ヌルヌルの粘液を分泌する植物性テンタクルから助け出された叶多は、


「コロス……絶対コロス……“真ノ悪”、ユルサナイ」


毛布を被りながら数日間、呪いの言葉を吐き続けたという。









〜〜 弾丸の行方 〜〜



久良名市、浜辺にて。

無人島が爆発で消滅した後、辛うじて難を逃れて海面を走り抜けて来た四宮鶫、三王山亜笠、仁科黎明の3名が肩で息をしながらどうにか戻って来たところだった。


亜「ぜぇ、ぜぇ……それで、誰に八つ当たりすればいいんだ?」


ツ「そのへんで適当に調達しましょう。敵なんて、探せばいくらでもいます」


黎「……お前ら(すさ)んでるな。まぁ、無理もないが」


学園長室で話しているといきなり無人島に閉じ込められ、脱出で精神的に疲労させられ、いざ脱出という段階で謎の機械人形が自爆のためだけに目の前に現れ、爆発をなんとか耐えてからはここまで走りっぱなしだったのだ。

おまけに、


亜「おいっ、こっち見んなジジイ!!」

ツ「眼球を引っこ抜きますよ?」


島が消滅する威力の爆発と海水による濡れネズミで、3人の服はズタボロの一部スケ状態である。

黎明は手負いのゴリラと手負いのヒロインに威嚇されまくっていた。


黎「一人は娘みたいな存在で、もう一人はひ孫ほども歳の離れた学生だぞ? 素っ裸見たって何も思わないっての」


ツ「知ったこっちゃないです。見たら殺します。先輩にもまだ数回しか見せれてないんですから」


黎「え、なに、拒否られてんの? カレシに肌見せるってそんなに大変なの?」


亜「ちょっと待て! アタシが娘で四宮がひ孫って、それじゃアタシが婆さんみたいじゃないか」


黎「細かいところに引っかかるヤツだな………あ」


亜笠の中くらいの胸―――ゴスッ


亜「見るなっつってんだろ?」


ゲホッゲホッ………腹に刺さるパンチだぜ。


だがそれでも、亜笠の胸元の紋様は黎明の目を引いてしまう。

それは久良名学園の学園長として土地の封印に結び付けるもの。学園地下の封印を解くためのピースだ。

それと同時に土地から力を引き出して強化も出来る。が、それは学園から離れては発揮できない。


(いや、そんな事はどうでもいいな。悪いと思ってるさ、こんなものを押し付けて、面倒な責任を背負わせちまった。本当なら関わらせるべきじゃなかったん――――)


ゴスッ


亜「なんど言や分かる? ジロジロ見んなスケベジジイ!」


黎「ご、こめんなさい……」


その時だ。

蹲まった体勢から脚ガクガクで立ち上がろうとしていた黎明の後頭部に、一発の弾丸が撃ち込まれた。


キイン――――


およそ生物が発する類の音ではないが、黎明の後頭部は見事に弾丸を弾いた。

しかし、ガクガクの膝も相まって黎明は前のめりに倒れこんでしまう。その先には鶫が――――


ツ「―――っと」


黎明の顔が近づいた瞬間、鶫はヒョイっと避けた。

そして、


黎「もにゅっ……!」


亜「―――――」


◯ャンプ漫画のラブコメで時折見かける光景。

亜笠はビックリと困惑のちょうど中間くらいの表情で、自分の胸元に顔を埋める黎明を見下ろした。


黎「すまん、バランスを崩しぶぅるあーー!!」


殴られて海面を切り裂きながら吹っ飛ぶ光景もラブコメ漫画のようであった。


ツ「スミマセン。私、カレシがいるのでラブコメの餌食になるのはちょっと……」


亜「アタシだって―――! くそぉお!! カレシなんかいねーよ!! どうせヒロインじゃないからエロいことされても仕方ないんだ!!」


まさか弾丸の行き着いた先で妹が真っ赤な顔で半泣きとしているとは夢にも思わないアトスであった。



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